第300話 必ず守ってみせる
「ブレイクスルーッ」
「なぬっ? それは……その光は――――」
「いくぜ、大魔グースステップ!」
「……ぬっ、速いッ!」
パワー、スピード、スキル、タクティクス。
全てを駆使して挑戦する。
出し惜しみは無用。
「大将軍! おのれ、まずは我らが――――」
「全員下がっておるのじゃ!」
走り出した俺の前に、立ちはだかろうとしたアマゾネスたち。
しかし、動き出す前にノジャがそれを制した。
「……おぬしたちでは束になっても敵わぬだろう……」
「え?」
「……やれやれ……ラルめ、一体どんな奴を連れてきたのじゃ? 大魔王様と『色』は違うが……あれはまさか……」
横槍を入れさせない。
俺に対してノジャは、自ら迎え撃つ気だ。
「うおおおお、大魔ソニックフリッカーッ!」
「おほ♡」
「うらあああああああ!」
連打! 連打連打連打!
だが、さすがはノジャ。フサフサのデカい尻尾を自在に操り、俺の放った衝撃波を全て撃ち落としてやがる。
見切ってやがる。
『フリッカーとはいえ、所詮はただの左ジャブだ。それよりもあまり見せすぎるな。まずは、牽制だけで十分だ』
『押忍』
『ノジャの九つの尾は、鞭にもなり、突風にもなり、鋭い刃にもなり、巨大な鈍器にもなり、竜巻にもなり、そして鉄壁の盾にもなる。まずは、あの尾の動き、表面積や質量に慣れろ』
もちろん、フリッカーだけでダメージ与えられるだなんて思っちゃいねえ。
あくまで仕込み。相手は六覇なんだからよ。
全ては俺の最大最強の一撃を打ち込むためのな。
「ちょこざい、そしてうざったいのじゃ!」
そして、ノジャからの反撃。
俺のフリッカーを防ぐだけでは面倒だと感じたのか、尾の一本を俺に向かって振り下ろしてくる。
先端を刃のように鋭く変えて突き刺す気だろうが……
「当たるかよ」
こんな大振りに当たらねえ。バックステップして……
「にはははは、終わりなのじゃ♪」
そして、俺がバックステップした直後に、もう一本の尾が俺の背後に回り込んで包み込もうとして来る。
もちろん分かってる。
「大魔クロスステップ」
「お?」
俺を背後から捕える寸前で左にステップで回避。
そして、二本の尾を攻撃に使用したことで、僅かに防御が薄くなったのを見計らって、ノジャの顔面目掛けて……
「大魔ソニックスマッシュッ!!」
アッパー気味の衝撃波を斜め下からぶっ放してやる。
ま、当たらねえだろうけどな。
「……ほう」
案の定、三本目の尾がノジャの眼前で俺の衝撃波の盾となって防ぎやがった。
なるほどな。
これをあと六本分掻い潜って初めて当てられるわけか。
骨が折れる作業だ。
一方で……
「なるほど……いるものなのじゃ……このハンター小僧とはまた別に……魔王軍も把握していない強者というものが……これでは、ラルたちが相手にならぬのは無理ないのじゃ」
向こうも俺の様子を見て、ある程度俺の力量を把握しやがったようだ。
「な、なんだ、あの仮面は……いや、中身は小生が連れてきた男なのだろうが……し、しかし……」
「すげぇ……た、大将と正面からやり合える人間が……七勇者たち以外にも……」
「な、な~に、大将はまだまだ全然本気じゃないさ」
「ああ。せーぜい、大将軍に犯されればいいさ」
アマゾネスたちも少しは俺のことは驚いてくれたようだな。
そして巻き添えを食らわないようにと、少し離れている。
だが、この程度で自分たちのボスがどうなるとまでは思ってないようだな。
当然、ノジャの力はまだまだこんなもんじゃねーんだろうしな。
「さて……そして、どうしてその光る力を使えるのか……さらに興味が湧いたのじゃ。裸にひん剥いて……色々と暴いてやるのじゃぁ!!」
来る! 今度は……一気に五本!
一本の尾でスレイヤを拘束し、三本の尾で防御し、残る五本で俺に攻撃してくる。
四方八方埋め尽くして逃げ場を無くすように……
『活路はある。見にくく、困難なルートではあるが……童、今の貴様ならば!』
そうだ、俺がこの時代に来てから磨き続けたあの技術。
「マジカルレーダー!」
森の中で、コジロウとの戦いで、そして船の上で……俺に向かって迫る脅威、そしてその脅威の中に見える僅かな隙間を、今の俺は見逃さねえ!
「ここだっ!!」
「な……にぃ!?」
迫る脅威の中から見える、光り輝く道。
そのルートを辿って、俺は同時に攻めてくる五本の尾を、前進しながら回避した。
ノジャとの間合いを一気に詰めることが出来た。
でかい図体の、その足元に。
「いくぜ、大魔――――」
「させぬっ!」
俺に懐に入られたことで、残る三本の尾が自然とノジャの顔面やその他の急所を守るように塞いでいる。
だが、俺の狙いはまだそこじゃねえ。
まずは……
「大魔右ストレートッ!」
「……あ……」
スレイヤを拘束している尾の中腹にぶち込んでやった。
それだけはノジャも予想外だったのか、守りが手薄で、その衝撃でポロッとスレイヤを零した。
「とうっ!」
「あっ……」
そして俺は落ちてきたスレイヤをキャッチして、一度詰めたノジャとの間合いから一気に外へと距離を取る。
まずはスレイヤを安全地帯に退避させる。
そうじゃなきゃ、これからの戦いでチラチラと気になって仕方なくなるからだ。
「怪我はないかい? 少年よ」
「え、あ……は、はい……」
「そうか。私が来たからもう大丈夫だ」
抱きかかえたスレイヤを離れた場所まで運んで地面に降ろす。
「あ、あの、あなたは……」
「ここから先は私に任せてくれたまえ。この私の誇りにかけて、君を必ず守ってみせる。ここで見ていてくれたまえ! では!」
『いや、貴様……やりすぎだ……』
どこかボーっとした様子のスレイヤだが、怪我は特に無さそうで安心した。まぁ、もうちょっとで穢されるところだったけどな。
「なんて……かっこいいんだ……ら、ラガーンマン……いったい、貴方は何者なんだ!?」
『えええ!? こやつ正体に気づいていな……い、意外とアホだな、こやつ……』
擦れたガキだと思ってたけど、やっぱ意外と純粋でいいやつだな、スレイヤは。
そして、トレイナは相変わらずセンスがズレているのが悩みどころだが、ここから先は俺と互いにズレなく戦わなくちゃいけねーから、争うことはしねえ。
「にははは……やってくれるのじゃ……よい……久々によいのじゃ! おぬし! 久々に戦いで濡れてきたのじゃぁ! 飼う! 飼ってやるのじゃ! おぬしを狩って飼ってやるのじゃぁぁ♡」
そして、この状況に対してノジャは、怒るでもなく、驚くでもなく、ただ嬉しそうに笑ってやがる。
それは、スレイヤに悪戯しようとしていた時以上に鋭く邪悪な笑みだ。
『ふぅ、まぁセンスがどうとかは別にして……ここからだ、童よ。いよいよあやつが力を振るう……奴の戦闘スタイル……それは――――』
「見せてやるのじゃ! 光栄に思うがよい! わらわが戦う気になった相手にのみ見せる戦闘スタイル―――――」
これまで尻尾だけを動かしていただけだったが、ノジャの両足、さらには全身の筋肉に力が入って、まさに野生の獣が狩りをするかのような威圧感が漂ってくる。
バサラ、ヤミディレ、パリピあたりと出会ってなければ、腰抜かしていたかもしれねぇほどの威圧感。
『「風林火山!!」』
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