第8話 レベリング

「いたぞ、ハウンド・ドッグだ。取りあえず俺が足に一撃与えて、転ばせてすぐ離脱するから、そのあとにサクっとやっちゃってくれ。」


今は親父と、俺たちブラック企業戦士組で別れて、それぞれレベリングしている。親父は技術的に俺より強いので一人でも大丈夫と判断した結果だ。ちなみに、会社に行くより、レベリングを優先したのは、現在確認されている人物の安全を優先すべきだと考えたからだ。


「了解、悪いな俺のレベル上げ優先になってしまって。」


「いや、この状況だとおまえは生命線になる。レベリングは必須だろう。ちなみに、次SPが溜まったら、[鍛冶]を習得してくれると助かる。」


「分かってるよ。生産は任せろ。ただ料理、てめぇはだめだ。」


「ははっ、料理は俺とお袋ができるから大丈夫。お前は武器とか、防具とか、そういうのに集中してくれ。じゃあ行くぞ。」


今は、ハウンド・ドッグの後ろが取れているので、スキルを使って一気に近づき、取りあえず足にダメージを与える。

ハウンド・ドッグから強奪した[速度上昇]は、瞬間的な速さを引き上げるスキルで、スタートダッシュに使うと効果的だった。一瞬で10mぐらいを詰め、軽く足に攻撃する。勢いがあったため、スパッとは真剣の刃がハウンド・ドッグの後ろ脚を切断した。

鑑定でステータスを見ると、HPはあと二割なかった。これなら、白崎も竹刀でたたくだけで倒せると思う。竹刀はレベリングのために俺が使っていたものを貸した奴だ。


「でやっ。はぁ、久々に竹刀なんて触った気がする。高校以来か?」


「大抵はそうだろうな。俺は実家が剣道道場だからってのが大きい。」


「だよなぁー。てか、うちの会社ブラックだったせいで、体動かすの久々すぎる。明日は確実に筋肉痛だわ。」


「俺は寝る前に多少トレーニングはしてたからな。お前よりはマシだろ。」


「俺も筋トレしておくべきだったなぁ。」


「まぁ、誰もこんなことになるとは思わねぇし、仕方ねぇよ。」


そんな風に二人で駄弁りながら少しずつレベルを上げていく。



そんなこんなで狩りを初めて1時間ほどたった。途中からは、ナビゲーターに勧められた、マップスキルと敵感知スキルを活用して、一気にモンスターを狩っていった。

マップスキルは、AR表示的な感じで、視界の端に地図を表示してくれる。ゲームようなの自動マッピング機能のついてるやつ。レベルが上がると、より詳しく表示されるらしい。

敵感知スキルは、其の名の通り、敵を感知するスキル。マップスキルと組み合わせることで、正確な位置を知ることができる。


「今レベルいくつになった?」


「10だな、SPも45たまったぞ。」


「じゃあ、そろそろ切り上げるか。親父探さなくちゃな。」


そんな感じに今回のレベリングは終わった。はずだったのだが。



♢♢♢

「おい、親父!いったい何をやらかした!」


俺たち三人は走っていた。


…親父がトレインしてきたモンスターどもから逃げるために。


「知らん!モンスターを狩りまくってたら、集まってた!」


「ちょ、もう疲れた、黒野もそのお父さんも速いぃ。」


「しゃあねぇ、もうちょっと行ったところに広めの交差点がある。親父、そこで片すぞ。」


「分かった、足引っ張るなよ!」


「そっちこそ!」


「何であんたらそんな余裕そうなのぉ⁉」


後ろで白崎がなんか言ってるが気にしない。


「あと50m、戦闘準備!白崎はそのまますこし奥まで走ってけ!」


見た感じ、車も走っていないし大丈夫だと判断し、戦闘態勢に入る。


追いかけているのは、オーク、ゴブリン、ハウンド・ドッグ、あとは、初めて見るが、スライムだろうか。


〈そうですね、スライムです。しかし、相性が悪いですねぇ。物理攻撃はほぼ通りませんよ。〉


まじか、どうする?


〈そこで、魔法スキルの取得をお勧めします。〉


ほう、その心は?


〈スライムは物理に対して無類の強さがある代わりに、魔法に対してはとんでもなく弱いです。特に火属性ですね。よく見るとわかると思いますが、スライムは石油製品を溶かして食べます。今はアスファルトを溶かしながらやってきていますね。そのため、燃えやすいです。〉


じゃあアスファルト食ってろ!追いかけてくんな!


〈しょうがないですよ。あなたの魔力につられてきてるんですから。〉


はぁ⁉逃げるんじゃなくてついてくるの⁉


〈ええ、スライムは魔法には弱いですが、魔力を主食としますからね。それに、逃げられるのはオーラのせいです。〉


どゆこと?


〈魔力はオーラとノットイコールです。オーラはレベルが上がればだれでも出ますが、魔力は個人差があります。あなたは、普通ぐらいですがレベルが高めなので多少多いですね。〉


ふむ、なるほど分からん。


〈まぁいいです。とりあえず火魔法を習得することをお勧めしますよ。〉


火魔法でいいんだな。了解。


『スキル[火魔法]を獲得しました。』


「親父、オーク以外は任せろ。」


「了解、頑張れよ。」


交差点についたので、戦闘開始。親父はオークが四体。俺はスライム二体、ゴブリン三体、ハウンド・ドッグが二体だ。多数を一気に相手取るのは初めてだ。


取りあえず、魔法でスライムを倒す。


〈スライムに手を向けて、【フレイム】と唱えてください。〉


「了解!【フレイム】!」


手のひらから火の玉が出て、飛んで行った。サイズは、ハンドボールぐらいのサイズだろうか。目標のスライムに着弾し、一気に燃え上がる。しかも近くにいた、ゴブリンとハウンド・ドッグまで巻き込んで燃えている。


まだスライムはいるので、もう一発。


「【フレイム】!」


またまたしっかりスライムに着弾。今度はゴブリンを二体巻き込んだ。あとは、ハウンド・ドッグ二体、カウンターを狙いサクっと片付ける。


『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上がりました。』

『レベルが上が…


『レベルが上がりました。』

『スキル[物理軽減]を強奪しました。』

『スキル[体幹強化]を強奪しました。』

『この世界において、初のレベル30突破を確認。称号[高速]を獲得しました。』


レベルが合計24あがった。称号もスキルももらえたのでありがたい。


そんなことを言っていると、親父も終わったようだ。


「武、魔法使ってたじゃん、いいなぁ。」


戻ってきてからの父の第一声はそれだった。







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