第8話  黒歴史が襲い掛かる

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「あぁー」


 ベッドの上でのたうち回りながら、未夜は叫んでいた。


「うぅー」


 子供クソガキ時代の有月との思い出は、懐かしく輝かしいものであると同時に、未夜の心をえぐる凶器でもあった。


 生意気な態度やおてんばな行動、それらを大人になってから思い返してみると、顔から火が出そうになる。



 今の未夜は活発な方ではない。むしろ人見知りで、学校ではおとなしい真面目ちゃんとして通っているし、それが素の性格だと自認している。



 だからこそ、昔のことを客観的に見ることができる年齢となった今では……






「うわぁーーーっ!」





 真っ赤に燃え上がった顔を枕にうずめる。



 足をばたばたさせ、未夜はこれでもかというほど羞恥心を味わっていた。

 じっくりみっちり、過去の黒歴史に悶絶したところで、我に返る。


「うぅ」


 有月が帰ってきたこと自体は喜ばしいことなのだ。十年間一度も帰ってこなかったことにが湧かなかったといえば嘘になるが、今さらそんなことを言っても何もならない。素直に喜ぶとしよう。



「十年ぶりの、勇にぃ」



 駅で有月とぶつかった時は、本当にびっくりした。

 十年前、彼の上京を見送った時とほとんど変わりない姿に、一瞬で胸が高鳴った。しかし、向こうはこちらに気づかなかったようだ。


 財布を落としていたので、届けたけれどその時も気づいてもらえなかった。


 そもそも、彼は私のことを憶えているのだろうか。


 小学生から高校生に成長したのだから、気づかないのは百億歩譲ってありえるとしても、忘れているなんてことはないだろう。


 引っ越しをしてお隣さんではなくなったが、〈ムーンナイトテラス〉には今でもちょくちょく顔を出している。


 明日〈ムーンナイトテラス〉に行って、



『勇にぃ、帰ってきたんですね。久しぶり!』


 そう伝えればすべては一気に解決するのだが……



「むりむりむりむりむりです」



 えげつない黒歴史と、内向的な性格が邪魔をする。



 つまるところ、勇気が出ないし恥ずかしい……


(自分から言うなんて、絶対むり)



 でも、なんとか接点は持ちたいし……



「向こうから、気づいてくれないかなぁ」





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