第71話「今後のプラン4」
ジーナを部屋に呼び、お茶を淹れてもらって今後についてすり合わせをしたい。
俺たちが今から行ける王都近郊のダンジョンについて知識はあるが、素直に行ってもジーナに不審がられるだけだ。
とその前に。
「近くには誰もいないか?」
「ええ。二人は下から動いていません」
小声で問いかけると、ジーナは小声で応じる。
あの兄妹はレベルが低いので、彼女の知覚をごまかせないだろう。
声量を多少アップさせることを意識して発言する。
「まずは情報が欲しい」
「ダンジョンのでしょうか、それともあるじ様が三日後から通われる学園に関するものでしょうか?」
ジーナは聞き返してくる。
うん、今の言い方だとそう疑問に思うよな。
「どっちも欲しいんだが、今はダンジョンかな。俺たちでも入れるようなダンジョンが、はたしてこの近くにあるんだろうか?」
「申し訳ありません。調べてみないとわかりません。数日いただきたいところですが、私がおそばを離れる許可をいただけますか?」
俺からすれば何気ない会話でも、従者にとっては無茶振りになってしまう。
恐縮した顔で確認してくる彼女に向かって、首を横に振った。
「いや、異郷の地で一人になるリスクは避けたい。確率は低いだろうが、誘拐や暗殺のリスクはあるかもしれない」
と言うとジーナの表情が引き締まる。
彼女だって想定していなかったわけじゃないんだろうが、俺が口にしたことでよりリアルに感じたのだろう。
「そこまで考えが及ばず、まことに申し訳ございません」
恐縮して平謝りする彼女を笑って許す。
「気にするな。何もかもお前に頼りっきりなんだから、無理が出るのは必然だ。お前のせいじゃないよ」
もう一人、信頼できる側近がいればまた話は違ってくる。
帝国内じゃ難しいのでホムンクルスでも造ろうかと思った矢先に、王国に放り出されて計算がくるってしまった。
じゃあ王国ならできるのかと言うと、帝国よりさらに難しい。
帝国は何だかんだで皇族が強い国なので、評価をあげていけば一人くらい信頼できる人材は見つかっただろう。
だが、ここは別の国、しかも水面下ではお互い仮想敵国とみなしあっている王国である。
帝国皇子の俺が人材調達するには最も不向きな国だろう。
留学中の皇子の身に何かあれば国の威信に関わるし、友好国の信頼も失ってしまうので、積極的に危害を加えられる心配がいらないのがメリットか。
あと、主人公勢と予定よりも早い段階で接触するチャンスが生まれたのも、場合によってはメリットだと言える。
この年代ならお互いが「まだ何者でもない」という状況だからな。
立場も打算もない友人関係になれる……かもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます