第65話「セイレーンとの戦闘」
第四区画に入ったところで初めてセイレーンに遭遇した。
セイレーンは水色の髪と青い肌と赤い瞳の美女で、いわゆる貝殻水着の上半身に魚の下半身を持つ。
上位種族になれば鳥の翼と楽器を持っていて、広範囲の魅了攻撃と魔法攻撃をくり出してくる。
スワープオルグなどとは違って群れずに単独行動する習性があり、繁殖のために人間系のオスを誘惑するのだ。
群れないのはオスが少ないと獲物の取り合いで殺し合いに発展してしまうからだとか。
彼女からすれば俺は飛んで火にいる夏の虫みたいなもので、ジーナが邪魔ものにしか見えないだろう。
俺を瞳に映すとにやりと笑う。
美女の微笑みだが、どう見ても獲物を前にした空腹の猛獣にしか見えなかった。
「サンダー」
下位種族のこいつらの魅了よりもサンダーのほうが射程距離が長いので、射程外から魔法を放つ。
実のところサンダーを覚えておいたのが、最大のセイレーン対策だと言ってもいいだろう。
俺が先制攻撃を当ててひるんだところに、ジーナが一気に距離を詰める。
セイレーンは遠距離特化型で接近戦が苦手だし、女性のジーナは魅了されることもない。
セイレーンが男の天敵だとすると、ジーナがセイレーンの天敵だと言えた。
俺が魅了の射程距離内に入らないように気をつければ、後は彼女がセイレーンを倒してくれるのを待つだけでいい。
もっともそれだけじゃ経験値を稼げないので、魔法で援護をするが。
「ウアア」
サンダーの二発目を浴びて喉を短刀でかき切られたセイレーンの断末魔は、怪物じみていた。
人間らしさは見た目、それも上半身だけでしかないということだろう。
「あるじ様」
ドロップを回収したジーナが青く澄んだ魚の鱗のようなアイテムを、俺に差し出しながら言った。
「セイレーンの鱗のようです」
「一応とっておくか」
セイレーンの鱗は水属性の防具、あるいは魅了防止のアイテムを作る時に使う。
どちらもこれがないと作れないわけじゃないんだが、他の素材がスムーズに入手できるとはかぎらない。
ドロップなんてどこまでも運がつきまとうものだ。
アテにはするけど、手に入らないことを想定しておくくらいでちょうどいいと思う。
「このまま最深部に行こう」
「はい」
今のところ問題なく計画は推移している。
それに満足してセイレーンの沼の最深部にたどり着く。
そして白い光を放つ魔法陣に乗ってダンジョンの外に飛ばされるいつものパターンだ。
たしかめてみると「水流の祝福」と「水属性ダメージアップ」を獲得している。
これで帝国内の低レベル踏破ボーナスはコンプリートだ。
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