第55話「火ネズミの巣」

 ジーナと二人で第一階層を歩き回り、火ネズミの巣を探す。

 火ネズミは穴を掘って巣を作るタイプで、鋭い歯で石でも岩でも削ることができる。


 だから探すのは下だ。


 そして火ネズミは巣を出入りするところをあまり見られたくない生き物らしいので、おそらくはブラインドになる壁の近くにあるだろう。


 二人で壁付近の地面をじっくり観察するので、歩くスピードはそんなに出ない。


 それでもモンスターとは遭遇しないのは、やはり火ネズミは悲鳴で仲間を呼んでるのだなと実感する。


「あるじ様、見つけました」


 とジーナが報告したのは一階層奥の通路の隅だった。

 たしかに床に穴が開いていて、わずかにだが火の気配がただよっている。


 単なる感覚だったら俺にわかった自信はない。

 だが、気配は原作通り小さな火のエフェクトがあった。


「ここが巣とみて間違いないだろうな」


 火のほこらの一階層で穴を掘るタイプのモンスターは、火ネズミ以外には存在していないからわかりやすい。

 

「どうしますか? おびき寄せますか?」


 ジーナに首を横に振ってみせる。

 それも一つの手だが、巣の付近に火ネズミがいないならやりようはあった。


「いや、こういう方法があるさ」


 と言って俺はアクアショットを巣の入り口に放つ。

 巣の入り口を破壊するんじゃなくて、水の弾が巣の中に入り込んだ。


 簡単に言うと水攻めだ。

 巣の入り口が大きくなかったらきれいに水が入り込まなかっただろう。


 水に弱い火ネズミは当然泳ぐことができない。


 本来ならあわてて巣の外に飛び出してところだろうが、水のせいでそれも不可能なのだ。


 火ネズミの巣を楽に壊滅させるならこうやって水攻めにするのが一番である。

 このやり方でも経験値は入ってくるからな。


 問題は巣の中に手をつっこまないとドロップアイテムを回収できないことか。

 

「そろそろかな」


 水が入って一分もすれば火ネズミは全滅しているだろう。

 

「下の階層に行こう」


「はい」


 ジーナはうなずいて前に立ち、下の階層に続く階段を目指す。

 もともとダンジョンの奥に来ていたおかげで、階段はすぐに見つかった。


「今日のメイン目的はファイアエレメント狩りだ」


 と彼女に告げる。

 ファイアエレメントは使い道が多い「火の精霊石」を落とす。

 

 これを使うことでジーナの武器に魔法属性を宿すことができる。

 俺の杖にも使えるし、防具やアクセサリーにも使う。

 

「踏破よりも先ということですか?」


 とジーナが確認してくる。


「ああ。踏破は明日でいいだろう」


 低レベル踏破ボーナスを受け取れるレベルは25まで。

 ジーナはもう無理だが、俺が受け取れるまでは余裕がある。


 ジーナも狙える段階ならまずは踏破を目指したんだけどな。

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