第54話「火のほこら2」

「値段が少し高いように思われます」


 とジーナは言って俺の表情をうかがう。

 まあ城でなら俺の使いならタダでやってもらえただろうな。


「いいんじゃないか。民に還元するのも俺の役目だ」


 うっかり皇族と言いかけて冷や汗をかく。

 あぶないあぶない。


 貴族の子弟は何となく思われてるだろうからありとして、皇族は言ってはいけない言葉だ。


「御意」


 ジーナはうっすらあった不満を消す。

 俺が納得しているならと飲み込んでしまったのだろう。

 

「装備はどうしますか?」


 とジーナは火ネズミの帷子と火ネズミのローブを差し出して聞いてくる。


「今日はもういい。明日ダンジョンに行く前に着替えよう」


 そう答えた。

 あとは帰るだけから、今着てもどうせすぐに脱ぐことになる。


 もちろんそれが分からないジーナじゃない。

 今すぐ試着をしてみたいかどうかを確認したかったのだろう。

「さて今日は少し遅くなったな」


 と言ってもまだ日は沈んでいない。

 このまま帰っても誰も怪しまないだろう。


「戻ろう」


「はい」


「城へ」


 ペンダントに手を触れる形で効果を発動させ、城を指定して帰還する。

 

 

 次の日、ご飯を食べたところでローブをまとう。

 正直装備しただけだと劇的に変わった感はないな。


 この世界に来たなら何か違いを感じ取れるようになるのかと思ったが、別にそんなことはないらしい。


「ジーナは?」


「すでに装備しています」


 帷子は鎧とはちょっと違い、服の下に着こむタイプだから見ただけじゃわからなかったんだよな。


「よし、じゃあ今日は火ネズミの巣を早めに破壊して、ファイアエレメント狩りをするのを目標にしよう」


 と指示を出す。

 火ネズミは欲しい素材がそろったから先に進んだほうがいい。


 素材集めと経験値稼ぎは低レベル踏破ボーナスをもらったあとで充分だ。


「かしこまりました」


 ジーナはうなずき、いつものように城の外に馬を連れて出る。

 面倒ではあるが、疑われないための工作を惜しまないほうがよい。


「火のほこら」


 と指定して人目がないことを確認して火のほこらに再びやってくる。

 前回感じた熱気を感じないように思うが、おそらく気のせいだろう。


 火ネズミのローブにそんな効果はないはずだし……いや、一応ルールが原作と変わっている可能性も捨てるには少し早いか?

 

 検証はあとでもできるから、ダンジョン踏破を優先させよう。

 今日もぐったらさっそく火ネズミが一匹出てくる。


「ジーナ、殺さずに気絶させることはできるか?」


 殺すとわらわらと群れが出てくるからな。

 素材と経験値を狙わないなら、殺さないほうがいいくらいだ。


「はい。お任せを」


 ジーナはとびかかってきた火ネズミの側面を殴って昏倒させてしまう。


「よし、今のうちに巣を探そう」


 巣を破壊してしまえば物量を相手にしなくて済むからだ。

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