第50話 人形使い side 遠藤 陽菜
私、遠藤 陽菜は男運がない。24年の人生で1人もまともな人がいなかった。
浮気なんか当たり前。付き合ってるつもりがただのセフレ扱いだったり、ATM扱いされたり、DVだったり、複数人とさせられたり……
友達曰く、「あんたは男を見る目がない」ということだそうだ。さすがに最近は自分でも自覚してる。
とにかく最低の男たちと付き合ってきた結果、気付けば借金まみれになり、昼の仕事とは別に夜はそういうお店で働いていた。そこでの経験が更に私に男を幻滅させた。
そんなとき、神様が私に復讐のチャンスをくれたのだ!
私が男共に復讐するためには神様のお願い、“勇者の欠片”を13個集めて生まれてくる魔王を倒さないといけない。
(戦うとか私にできるかなぁ……? )
自慢じゃないが腕力になんて自信がないし、喧嘩すらしたことがない。
そんな私に与えられた
神様から言われて3つの扉のうちの一つを抜けてやってきたのは海岸だった。近くの人に話を聞いたら、ここは『フリードアン共和国』って国だそうだ。運がいいって言ってもいいのか分からないけど女王様が治める国なんだって!
うーん、最初はちょっと期待したんだけど女王様が国家元首だからと言っても基本的には中世のような文明レベルの世界、女性の権利が保証されたりはしていないみたい。
女性は基本的に10代半ばで適齢期、私くらいの歳で未婚は立派な行き遅れ扱いだ。ムキーッ!
とにかく他の勇者候補って人達が見つかるまでの生活を何とかしないといけないし戦い方を考えなきゃいけない。神様がくれたとりあえずの費用じゃ数日宿に泊まるだけで底をつく。
手っ取り早いのは冒険者、でもそれは、ちょっと私には無理そう……体力には自信がないしこの国の環境が私の能力には向かないのだ。
フリードアン共和国はその始まりが港町の海洋国家。お隣にあるポセニア海洋連邦ってところが同じような海洋国家が4つ集まっている国だけどそれには加わらずに独立独歩でやっている。
そんなこの国はフェルガント大陸ってところの西の海側にあって大河の森っていうクリーチャーって化け物が多い場所から離れている。
普通なら「安全なところに来られてラッキー♪ 」と思うところだけど冒険者って仕事をしようと思うとマイナスだ。何せそのクリーチャーって化け物から採れる素材を集めるのが冒険者の仕事のメインだったりするのだ。
もちろん他にも依頼はある。
フリードアン共和国の前身は港町、交易と海運で大きくなった国で商売が盛んなので、この国の冒険者は主に商隊の護衛任務をしてる。
あとは海にも水棲のクリーチャーがいるのでそれを狩ったり少ないながらも平原に出没するものを狩ったりしている。
じゃあなんで私がこの国の冒険者をするのが難しいかと言えば理由は主に2つあった。
1つは冒険者が男社会なこと。商隊の護衛ってなると当然1人では出来ないので複数人と行動することになるけど冒険者は圧倒的に男が多い。もちろん女性だけのパーティーっていうのもあるけどそういうパーティーに入れてもらえるか分からないし、入れてもらえても商隊護衛は複数パーティーで対応することが多いので絶対に男の比率が多くなるのだ!
今は男に関わるのは遠慮したいし私の男運の悪さを考えると絶対に何かトラブルになる。(訳:ワイルドでちょっと危険な匂いがする男っていいよね! )
次に問題なのが私のジョブ【
その上、ゴーレムは重くて動きが遅い。水辺なんて相性最悪で、沈むしただでさえ遅い動きがもっと遅くなってとても動けない。
でも、他に私が出来ることなんて言えば娼婦くらいなもの、当然やりたくはないがそれ以前にこの世界での私は行き遅れの年増扱いで雇うとしたら場末の下級娼館くらいしかない。
そこで私が目を付けたのが港でのゴーレムを使った単純作業の請負だった。
港も男が多くて本当は嫌なんだけど背に腹は変えられない。(訳:日に焼けた海の男たちの逞しい二の腕がっ! )
最初のうちは私の魔力で作ったゴーレムを使ったので私も港でゴーレムに指示をしてた。数日すると多少お金に余裕が出来たので屑魔石を買ってきてそれを核にして作ったゴーレムに作業の指示だけをして、私は偶に魔力供給する以外はゴーレムの研究や勇者候補を探すことに時間を使った。
研究の結果、マスター以外が命令出来る管理者権限の追加をプログラム出来るようになるといくつかの商会と水夫派遣のような契約をするようになった。
何せゴーレムは定期的に魔力さえ供給すれば休憩不要で働き続けることの出来る労働力なのだ。おかげでかなり稼げるようになって対勇者候補用のゴーレムの研究や素材も手に入るようになった。
その頃、隣のポセニア海洋連邦とその隣、大陸南のガルド帝国が戦争を始めるという噂が流れて実際にガルド帝国に南の海域が封鎖されるようになると港に船が入ってこなくなった。
(うーん、物が入らなくなってきて物価が上がってきたなぁ。そろそろここも潮時かな。蓄えは出来たしいい魔石を手に入れるためにも大河の森近くの街に移動しよう)
問題はどこに行くかだ。大陸の西側なら大河の森に接しているのはガルド帝国かウィルゲイド王国だけど、このまま西側で戦争が拡がるようなら東側に行くのもありかも。
今の私ならゴーレムで軍隊も作れるし移動も荷物持ちも野宿したときの見張りも全部ゴーレムがしてくれるので1人での旅だって余裕だ。
(ちょっと情報収集もしたいし確かウィルゲイドとガルドの国境に大きな街があったから一度そこに寄ってヤバそうなら東側に行こうっと)
そうと決まればこの国とはさっさとおさらば、これ以上物価が上がる前に旅の支度をした私は朝早くに街を出た。
目指すはウィルゲイド王国の国境の街ウィーレスト! 素敵なところだといいなぁ♪ (訳:いい男がいるといいなぁ♪ )
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます