第48話 欲望 side 二階堂 明日香

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「ああっ……伯爵さまぁ……そこぉ……ダッ、ダメ……ですぅ…ぁぁん! もっと!! 」


 薄暗い部屋で重なり合う影。


 上の覆い被さる影が一心不乱に前後運動を繰り返し、合わさるように荒い息遣いと肉を打つ音に僅かに水音が重なる。


 上から責め立てるのは男の盛りはとうに折り返したと思わしき初老の男性。すでに齢50を越え、普段はキッチリ撫で付けている豊かな白髪も今は乱れ、多くの貴族が震え上がる眼光も今は快楽に濁り一心不乱に腰を打ち付ける。


 下で喘ぐ女は若く、女というより“少女”と表現すべきかもしれない。その瑞々しい白い肌が今は朱に染まり、男の動きに合わせて激しく上下に揺れる張りのある形の良い双丘は、骨ばった掌に荒々しく揉みしだかれ指の隙間から肉を溢れさせている。


 愛らしい顔は今や雌のそれへと変わり、更なる快楽を得ようと男の腰に両足を絡め、高みへと登っていく。


 親子、いや、この世界では祖父と孫ほど歳の離れた少女を男はその獣欲のままに蹂躙し、トドメとばかりに打ち付けた腰に娘が一際甲高い声を上げると男も「うっ……」と呻き、腰を震わせ背を仰け反らせた。


 全ての獣欲を解き放った男は少女の上に力なく倒れ込み、自分と男の胸板に挟まれた双丘が押し潰される。


 男はしばらくそうして荒い呼吸を整えると、ゆっくりと体を起こし少女から身体を離し横へと位置を変えた。


 横に寝転がる男の胸に少女は甘えるように頭を載せ擦り付けた。そんな少女の頭を撫でながら、男は心地よい疲労とともに意識を沈めていった。


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(チッ、やっと寝たか……)


 男が眠ったのを確認した少女『二階堂 明日香』は先ほどまでの子猫のような甘えた表情から一転、不快げに顔を歪めた。


(ヘタクソの上に体力もないとかどんだけだよ! 演技する身にもなれよッ! )


 心の中で悪態をつく。力任せに揉みしだかれた胸が痛い。


(明日はてめぇより偉い侯爵の日なんだよ! 跡が付いたらどうしてくれんだッ!! )


 気休めかもしれないが痛む胸を擦る。


(しっかしあっち元の世界だろうがこっち異世界だろうが男の考えることなんて変わんねぇなぁ。ちょっとおだてりゃ猿みたいに腰振って貢いでくれるんだから。しかも、こっちなら魅了も媚薬も使い放題ときた。マジ楽過ぎだろ! )


 バカにしたように男を見やる。


(これで昼間は「伯爵様」とか言われて偉そうにしてるんだから腰振ってるときの間抜け面とのギャップが笑える)


 本当にくだらない。


(はあ、さっさとイケメン侍らせてあたしのハーレム作りてぇ~)


 少しだけ未来の自分を想像して彼女は表情を蕩けさせた。



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 二階堂 明日香(18)

 ふわふわした明るい茶髪に上品に整えられた眉、どんぐりの様なくりくりとした大きな瞳に小さな鼻、ぷっくりとした薄桃色の唇、幼く見られる日本人の中でも更に童顔で見た目はどこかの貴族令嬢と言っても通用するような少女だ。


 普段は心の声からは想像出来ないおっとりした口調で話し、穢れを知らない少女の様でありながら時折「意味が分からず言ってしまった」という雰囲気で卑猥な言葉を口にしては頬まで染めるという徹底ぶり。


 身長は153cmと見た目は中学生かと見紛うばかりだが、胸部はその外見には不釣り合いなほど発育しており見た目に反した妖艶さとコケティッシュな魅力を放っている。


 そんな彼女の裏の顔は娼婦も裸足で逃げ出すほどに奔放なものだった。


 多くのパパを抱え、その顔触れも企業の重役に始まり、芸能関係者や政治家や官僚、果ては裏社会の顔役まで実に幅広く高級コールガールも真っ青な顔ぶれである。


 パパからのお小遣いはそこそこの高級マンションに部屋を2、3部屋は余裕で借りられ、ホストクラブを数日貸切にして遊べるほどであった。


 そんな彼女の生活は『デスゲームへの参加』という形で突然の終わりを迎える。


 しかし、彼女は諦めない。


魔女ウィッチ】というジョブを活かし、魅了チャームの魔法に媚薬を合わせて、入り込んだ東ウィント王国の王侯貴族たちを骨抜きにし、気に入った男は貴族だろうと平民だろうと片っ端から貢がせた屋敷に放り込む。


 今や東ウィント王国を『王国に色男無し』と言われるほどに食い散らかし、婚約者が居ようが彼女が居ようが妻が居ようが寝とる。寧ろ燃える!


 王国で彼女の被害者の会を作ればダース単位で手が上がるだろう。


 そこまでしてまだ満足出来ない彼女の願いはそのままズバリ『イケメンハーレム』!


(そのためにもせっせとおっさん達の相手しないとなぁ。しかし、酷い加齢臭だなぁ)


 少女は鼻を摘みながら体にシーツを巻き付けてベッドから降りると、備え付けのバスルームへと移動するのだった。

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