第6話 消滅

 新学期が始まり。三日目のことである。朝、登校すると、さおりんの席が空いていた。


 携帯でメッセージを送ると『ゴメン』とだけ返ってきた。


 さおりんの居ない生活は厳しいものであった。それは学校の窓ガラスを割って歩きたい気分である。深く自制して授業を終えて家に帰るのであった。家に着くとさおりんの携帯に電話をかける。


『電波の届かない場所か……』


 お決まりのメッセージが流れる。それはさおりんの消滅であった。そう言えばさおりんの細かい家の場所を知らない。


 わたしは気休めに携帯ゲームをする。本当に気休めで終わった。もう一度、携帯に電話をかけてみる事にした。


『……電源が入っていません』


 結局、最後までメッセージを聞いて電話を切る。わたしは図書館に向かいさおりんの手がかりを探す事にした。さおりんがいつも座っている席はおっさんが本を読んでいる。


 コンビニのカウンターか?そのまま、コンビニに向かう。臨時休業!田舎のコンビニなので時々あるが今日は臨時休業らしい。わたしは自動ドアの奥にあるカウンターをみるが誰もいない。


 トボトボと肩を落として帰路に着く。自室に着くと一枚だけ撮ったさおりんの画像をみる。横から振り返るアングルだ。


『また、失うよ』


 さおりんの画像を見ていると。そんな言葉がよぎる。わたしは住所だけ知っている、さおりんのもとに手紙を書くことにした。内容は残暑見舞いであった。生きていることさえ確認できれば問題ない。


 祈る気持ちでハガキをポストに入れるのであった。


 さおりんが消えて一週間が経った。担任に聞いても首を傾げるだけであった。もはや、窓ガラスを割る気力もない。だいたい、今時に窓ガラスを割るなんて馬鹿馬鹿しい。昼休みに、わたしは屋上でクリームパンを食べるか味がしない。


 ただ、食べ物を詰め込んで生きているだけの気分だ。そう言えば、最後の返事はメッセージアプリの『ゴメン』だった。一度に大量のメッセージを送っては迷惑かと思い一日一回程度でメッセージを送ってみる。


———……。


 返事は来ない……。残暑見舞いの返事も無い。さおりんの家は住宅が複雑に建っている場所なので、案内無しでたどり着くのは不可能である。


 わたしはこの世界が終わってさおりんのいる世界が始まらないか考えていた。SFならここで時間の巻き戻しも考えられる。


 しかし、この世界はニュートン力学で支配された世界である。簡単に言えばSF的な事柄は起きないのである。


 さおりんに会いたい……。


 転校してきてどれだけの時間が流れたのであろう。それは大した時間ではない。

でも、さおりんとの思い出はかけがえのないモノであった。わたしは昼休みが終わる前にもう一つパンを食べる。えらく、塩辛い焼きそばパンだ。塩味は認知できるらしい。


 今日は南風か……この地方では南風の方が西風より涼しいのであった。蝉の声も聞こえなくなった。秋が近いのを感じられた。わたしは焼きそばパンを詰め込むと高いフェイスのある屋上を去るのであった。


 わたしは学校から帰ると、フラフラしながら、自室にこもる。さおりんが居なくなって10日……。わたしの疲労はピークになっていた。少し仮眠を取ると高校を留年する夢をみた。しかし、このままではそうなるのであろう。


 うん?携帯が鳴っている。さおりんである。わたしは飛びつき、さおりんと話す。


『あー今、東京』

『何故、連絡をくれなかった?』

『あん?携帯の繋がらない、小笠原諸島に居た』


 さおりんの話だと、船で小笠原から今東京に着いたとのことである。わたしは小笠原などに行ったのか聞いてみる事にした。


『ネットの抽選で当たった』


 そうではない。何故、黙って行ったのかである。


『お前に関係あるのか?』


 それを言われるとキツイな……。


『わたしはさおりんの事を式神だと思っている』


 わたしはこの期に及んで素直になれないでいた。何が式神だ、素直に好きと言えば良いのに。


『なんだ、そんなにわたしの事が好きなのか?』


 あれ?通じた……。ここで深く考えたら負けである。さおりんとコミュニケーションを取るとはそういうことである。


『そうだ、わたしはさおりんの事が好きだぞ』

『なに!冗談のつもりだったのに……』


し、しまった。しかし、後の祭りである。


『そうか、好きだったのか』

『あぁ、わたしはさおりんのことが好きだ』


 さおりんと話せたとは言え、極度の体調不良の為に、それからは、何を話したか記憶が曖昧であった。



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