第5話 高校二年生の夏

 登校日にさおりんに改めて会うのであった。それは夏休みに図書館で勉強を教えている時と微妙に違う。どうやら、進路について聞かれたらしい。


① 看護師

② 保育士

③ 店員


 その三つを書いたそうな。高校二年生の学年単位での登校日だ。授業以外の重要なことが有ってもおかしくはない。さおりんは目が泳いでいる。最初に提出した進路表は。


① 高校三年生

② 大学二年生

③ 中学一年生


 だったらしい。中学一年生は過去のことである。


 勿論、大分、怒られたらしい。


 わたしは教師一本で行くともりだ。担任にも評価もされているので簡単に終わった。


 さおりんに近づくと頭をナデナデしてみた。怒ると思いきやゴロゴロと目を細める。前世は猫かと思わせる行動である。気がつくといつものさおりんになっていた。


「おし!コンビニのカウンターでまったりだ」


 それはアイスコーヒーの美味しい季節であった。


 わたしは数学の教師になる為に、数学科のある大学の過去問をこなしていた。

手ごたえは上々であった。少し休むか……。冷蔵庫の中にある麦茶を飲む。携帯をチェックすると。さおりんから呪いのメッセージが届いていた。


 チェーンメールかと思いきや。愛情表現だと言い張る。しかし、内容は呪いのメッセージである。どうやら、図書館で勉強している合間に怪しい本を見つけたらしい。


『三ヶ月後に死ね』


 まだ、送るのか……さおりんは!いったい、どんな本か訪ねてみる。


『気になるあの人に送ろう』


 添付画像に本の表紙が映し出される。怪しさは百万馬力である。


「占いコーナーで見つけた。信じれば叶うと書いてあるぞ」


 わたしは厳しく叱るのであった。ご機嫌が斜めになったさおりんは会いたいと駄々をこねる。渋々、コンビニのカウンターで待ち合わせをする。出かける準備をしてコンビニに向かう。さおりんは何故かナタデココを食べていた。わたしはアイスコーヒーを飲み、さおりんに例のブツを見せてもらう。


『気になるあの人に送ろう』である。


 パラパラとめくって中身を確認するが、何処から見ても呪いの本である。


『恋は相手の心を奪い取る』


 さおりんはこの一文を示し、再びナタデココを食べ始める。とにかく、この本は図書館に返す事にした。考えてみれば間違っていたとはいえ、そこまで恋の成就を願っていたのか。さおりんは涼しい顔をしてナタデココを食べていた。女心と秋の空か……。わたしはアイスコーヒーをおかわりしてさおりんの隣で色々と妄想するのであった。


 わたしは強い日差しの中でアサガオに水に水をあげる。ふ~う。自然を楽しむのも良いな。しかし、アサガオは儚い花だな。一日経てば枯れてしまう。自室に戻ると、夏祭りのチラシが目に入る。夏祭りも終わり、秋を感じるのを待つばかりである。わたしはさおりんにメッセージを送ると勉強を始める。送ったメッセージはアサガオの花である。


 うん?


『もう、食べられないよ』


 お決まりの寝言メッセージである。どうせ、寝ぼけていたのだろう。


『アサガオを食べるのか?』

『美味しよ』


 これは寝言メッセージではない。本気だ。


 さて、勉強に戻るか。たいしたオチも無く、さおりんとのメッセージ交換を止める。


 そもそも、アサガオを美味しいとの会話から何処へ発展するのだ。わたしは勉強の合間にオープンキャンパスの情報を携帯で探す。来年には受験だ。少しの時間が過ぎるとさおりんから電話がかかってくる。


『来ちゃった』


 はぁ!玄関前に居るだと!急いで玄関を開けると……。誰もいない。


 詳しく状況を整理すると、図書館で勉強を教えて欲しいとのこと。アサガオを美味しいと言うさおりんの事だから本気にしたのである。


 わたしは渋々、図書館に向かう。改めて思うと、さおりんの突然の訪問も良いなと思うのであった。

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