義足のボーイ・ミーツ・ガール

霜花 桔梗

第1話 挫折からのスタート


 例えば挫折と言う言葉がある。わたしの人生は挫折の中にある。中三の夏に事故で左足首から先を失った。しかし、本当に大切なのは高校受験であった。


 高校受験はリハビリでとんざして、入れたのは偏差値の低い公立であった。T大を目指していたわたしは挫折という感情に支配されていた。


 朝、起きると無意味な毎日の始まりである。田舎の公立なので大学受験のカリキュラムは無い。だからと言って塾で巻き返す気力は無くなっていた。そんな毎日だ、眠れない日に限って、朝早く起きるのであった。


 ダルイ体に水分を補給してスマホに目を通す。曜日を確認して朝の支度を始める。


 今日は体育があるな……。


 わたしは大きく息を吐き憂鬱になる。そうだった、アサガオに水をあげないと。庭に向かうと、薄ピンク色のアサガオが咲いていた。適当に水を与えて部屋に戻る。今年の夏は何を勘違いしたのか、アサガオを育てている。それは純粋な気まぐれであった。


 そうそう、つまらない日常の続きである。鞄の中に真っ白い体育館シューズを入れる。わたしは事情により体育の授業に出た事はない。普段は義足で生活しているので激しい運動は出来ないのである。メガネをかけるように義足を付けて部屋を出る。


「健治、ご飯だよ」


 母親の言葉に椅子に座り朝食を食べる。イカン、まったりし過ぎた。わたしは急いで家を出る。


 向かう先は『清水館高校』である。この町は田舎なので水田の中に校舎が建っている。そう言えばこの田舎町に先週から転校生が来ていたな。いつの間にか、このクラスに入ったので存在感ゼロであった。教室内でも席が遠く、このまま話す事も無く終わりそうだ。


 しかし、それは昨日までの事であった。体育の授業が始まり。何時もの様に見学する。


「隣、大丈夫かな?」


 おやおや、噂の転校生だ。


「あ、はい」


 わたしは場所を譲り少し離れる。転校生の女子は、もじもじと何故か距離が近づいてくる。


「わたしの名前は神崎沙織、さおりんと呼んで」


 そのさおりんがわたしに何用だ。


「健治くんだったよね、学校の成績が良いみたいだから、わたしに勉強を教えて」


 この腐った人生だ、この片方無い足首が疼かない程度に教えてあげるか……。


 快諾してさおりんに勉強を教える事になった。

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