第6話 ただ先輩達を笑顔にするだけの話。

 『@三浦@葉山、SHR後、青春を謳歌する部の部室に来てください。』

 帰りのSHRが終わったと同時に青謳部せいおうぶのライングルにこんなメッセージが届いた。

「おい三浦」

 前の席に座っている同じ部活に所属していた親友に声をかける。

「ん?何?」

 だるそうな顔でこちらに振り向く。

 クラスメイト達はだるい土曜授業から解放され午後の予定を話したり、素早く荷物をまとめて帰ろうとしている人がいた。

「川崎からライン」

 そのメッセージを三浦に見せる。

「ふむふむ……俺ら何かやらかしたっけ?」

 ちょっと考えた後言った。

「なんでそんな風に受け取れるんだよ」

「え?普通じゃない?」

「普通なのか?………まぁ確かに俺らが迷惑なことしちゃったからな」

 こんなふざけた部活に入ってくれた二人には悪いことしちゃったな。

 せっかく入ってくれたのにすぐに廃部になるとか…後で謝っとこ。

 ってか次の部活何にしよう…。

「そういえばさ葉山、次入る部活何にするか決めた?」

 どうやら三浦は俺と同じことを考えてたらしい。

「どうしようかねー………あ、早く怒られに行くぞ」

「りょーかい」

 机の横に掛けてあるバックを取り、教室の後ろのドアを開ける。

 廊下の窓を見たら雨が降っていた。

「雨降ってる」

 遅れて出てきた三浦がそう呟く。

「見りゃわかるだろ」


 歩き馴れた部室までの道をお互い黙って歩く。

 文芸部の前を通り過ぎて、

「懐かしいな……」

 腕を組んで遠い目で青謳部の部室のドアを見る。

「まだ廃部して六日くらいしか経ってないけどね」

 あれ、六日だっけ…。

「おいそこは、そうだな…懐かしいな…、みたいな感じで言うところだろ!」

「早く入るぞ」

「行くぞ!わが下僕!」

「誰がお前の下僕だ!」

 扉を開く。

 そして目の前には、

「お兄の変態!えっち!歩く18禁!」

「あっ、いたっ…痛い!…やめて、もうやめてぇ!!」

 すげー可愛い女の子に蹴られまくって泣きそうな川崎がいた。

 その近くに顧問の鎌倉先生がいて、状況を呑み込めていないのかぼーっとそれを見ている。

 あと少し距離を取って横浜が気持ちよさそうに寝ていた。

「えっと…葉山」

「うん、三浦…」

「「帰ろう」」

 開けた扉を静かに閉じて回れ右。

 部室に呼ばれたことは忘れてたってことにしよう!

 

「おおおい!お前ら!見なかったことにするんじゃねえ!」

 ボロボロの川崎が勢いよく扉を開けそう言った。

「べ、べべべ別に見なかった事にはしてないよ?」

「めっちゃ動揺してるじゃないっすか三浦先輩!」

「ってか俺ら呼び出してどうかしたのか?」

 一応聞いとく。

「はっ!そうだった!二人とも早く部室入ってください!」

 どうぞどうぞ!と言いながら川崎は、笑顔で俺らの腕をつかみ引きずり込む。

 部室に入り荷物を足元に置いてテキトーな席に座る。

「で、話とは?」

 向かいの窓際の席に座っている川崎に問う。

 川崎を蹴っていた女子は川崎から見て右に座っていた。

 相変わらず横浜は寝ている。

 ここまでくると睡眠のプロだな。

「ちょっと待て葉山」

「何だよ」

 同じくテキトーな席に座った葉山が言う。

「まずはさっきの事を聞こうじゃないか」

 なんか楽しそうだな三浦。

「さっきの事って…あー妹が俺のこと蹴ってた事っすか?」

 妹さんは俯いていた。

 初めてくる場所で緊張してるんだろ。

「うむ」

 なんでお前はそんなに偉そうなんだよ。

「えっと実は……」



「ふむふむ……いいなー」

「三浦先輩、話ちゃんと聞いてました?「うん」聞いてるんならなぜいいなって思う!」

 話によると。

 俺らが部室に入る前、先生が躓いて転んだ拍子に川崎を押し倒してしまったらしい。

 その時傘を届けにやって来た妹さんがそれを見て部室でエッチなことしてるって勘違いして、このあと滅茶苦茶蹴られたんだってさ。

「だってこんな可愛い妹いるの最高じゃん。「べ、別に可愛くなんて」ラブコメの主人公かよ」

「ジャンルは違いますけど一応主人公です!」

 川崎ってたまに変なこと言うんだよな。

「で、俺らを呼び出したわけを聞こうじゃないか!」

 俺が言う。

 さぁ、叱責でも何でも来い!

 今の俺は何を聞いても驚かないぜ!

「まず最初に、」

 

 川崎は立ち上がり俺らのほうに手を伸ばす。

「ようこそ!青春ラブコメ部へ!」

 笑顔でそう言った。


「「は?」」

 俺と三浦の声が重なる。

 驚いちゃったわ。


「だからー俺新しい部活作ったんですよ!………先輩たちのために」

 俺らのために?

 なんで?

「なんで俺らのために?」

 三浦が言う。

「だって、廃部になったとき先輩達すげー悲しそうだったじゃないですか!ってか俺も結構悲しかったんですから」

 確かに泣きたくなった。

 やっと部に昇格したのにすぐに廃部にされたんだもん。

 まぁ俺らのせいだけど。

「そんな先輩の顔なんて見たくないっすよ。…俺が見たいのは先輩たちの笑ってるとこだけっすから」

 その言葉を聞いた瞬間、体が勝手に動き川崎を抱きしめた。

 川崎は一瞬驚いていたがすぐに優しく抱きしめ返してくれる。

「ありがとな」

「別にこのくらい簡単ですよ」

「えーお兄作るの超めんどくさがってたじゃん!」

「う、うるせえなー!」


「そういえばさ川崎」

「なんすか三浦先輩」

「部の名前なんで青春ラブコメ部なん?」

「なんか生徒会長が青春を謳歌する部の事を青春ラブコメ部って言ってたの思い出して。これでいいかなーみたいな、ってか先輩たちが笑いながら泣いてるー」

「「べ、別に泣いてなんかないし!」」

 席に戻る。

「これで話し終わりかな?」

「え?まだ返事聞いてないんですけど」

 何の?

「え、だからうちの部活に入ってくれますか?ってことですよ」

「それはもちろん、なぁ葉山」

 笑顔でこちらを向く三浦。

「おう」

「「入るに決まってるでしょ」」

 そう言うと川崎がはぁー、と息を漏らす。

「よかったぁ入ってくれて」

「どういうことだ?」

「そのー…この部活作るとき勝手に先輩たちの名前使っちゃって」

 あーなるほど。

「入ってくれてよかったです!これからもよろしくお願いします!」

「こっちもよろしくな(きらりーん)」

「あぁよろしく!」

 川崎が伸ばした手を握りそう言った。

 雨はすっかり止んで空には綺麗な虹がかかっていた。

 近くで「何このシーン」って寝起きの声が聞こえた気がする。

「あ、降霊する儀式やろうぜ!」

 三浦が言う。

「降霊の儀式?ってゆーか、またって…あの時の先輩達だったんですか!?」


「そういえばさ「なんすか?」ここまだ部じゃないからな?青春ラブコメ同好会だからな」

「あ……じゃあ青春ラブコメ部(仮)ですね!」

 川崎はあふれんばかりの笑みでそう言った。

 



「改めて。ようこそ!青春ラブコメ部(仮)へ!」



 



 

 




 

 

 


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