第5話 ただ実行するだけの話

 放課後。

 椅子に座って先生が来るのを待つ。

 ん?今どこにいるかって?

 俺がいるのは部室棟二階の元青春を謳歌する部の部室。

 先生に放課後ここに来いって言われたから来たんだけど…。

 三十分経ってもまだ来ないんだよね…先生。

 特に何もすることがないから外を見ているとどこからか吹奏楽部の楽器の音が聞こえてくる。

 ……この曲なんか聞いたことあるんだよなぁ…。

 少し悩む。


 あ、紅〇華か!

 曲名を思い出したらこの部室で先輩たちが鬼滅〇刃ごっこしてたのを思い出した。

『水〇呼吸! 壱〇型! 水面斬〇ッ!!』

 そのアニメの主人公のコスプレをした葉山先輩がちゃんと刀を持ってそんなこと言ってた。

 衣装は三浦先輩が部費で買ったらしい。

 そういうことするから廃部になったんですよ三浦先輩!


 


「遅れて悪い……えっと、川崎」

 鎌倉先生は部室の扉を開け、入る。

「先生絶対俺の名前忘れてましたよね?」

「ほらこれ申請書」

「あ、あざす」

 差し出されたそれを受け取る。

 同好会を作るための申請書だ。

 紙には部員の名前を書く欄と顧問の名前を書く欄と部活動場所を書く欄が書いてあった。

「これってどこに提出すればいいんですか?」

「え……生徒会じゃね?知らないけど」

 先生が目を逸らした。

「先生なら知っといてくださいよ!」

「イイコトって何ですか?そういえば」

「イイコト?あーそんなものねーよ」

「え、僕らをだましたんですか!?」


「そういえば先生なんで来るの遅かったんすか?めっちゃ待ったんですけどー」

「何そのめんどくさい彼女みたいな台詞」

「あ、俺ら付き合います?」

「断る」

 即答された。

「えー俺のどこがダメなんですかー?」

 一応聞いてみる。

「………生徒と教師がそんな関係になるとか、ダメに決まってるだろ」

「なぜ?………あっ!先生も少女漫画みたいな展開になるの嫌ですもんね!なるほどなるほど」

「お前は一回少女漫画に謝ってこい」

 #少女漫画に謝るとは

「で、なんで遅れたんですかー?」

「言う必要あるか?」

「ありますねぇ」

「生徒の相談聞いてた」

「……先生って先生らしいことするんですね」

「お前私の事今まで何だと思ってたんだ?」

 先生は右手でこぶしを作る。

 なんか謎のオーラ放ってるんですけど…。

「酒飲む人」

「はぁ……(*´Д`)」 

「なぜ顔文字」

 先生が椅子に座りため息を吐いた。

「ずいぶんとお疲れのようですね」

「………」

 お前のせいだよって言いたそうな顔でこっちを見ないでください。



「で、川崎はなんの部活を作るんだ?」

 俺のほうに顔を向けて聞く。

「青春を謳歌する部です」

「活動内容は?」

「遊ぶ」

「無理だな」

「なぜです?」

 素朴な疑問。

「だって考えてみろよ。最近廃部になったやべー部活をまた作ろうとしてるんだぞ?生徒会と先生が絶対許可しないに決まってるじゃん」

 そりゃそうか。

 どうしようか。

「まぁ名前を変えれば大丈夫……?だろうけど。うん、やっぱだめだな諦めろ」

「えぇ…」

 おいおい青春を謳歌する部再建プロジェクト失敗だぞ。

 ヤバい…このままじゃこの小説のストーリーが……。

 なにか、何かないか?

「あ」

 思いついた。

「どうした?」

 こいつ何を言う気だ、みたいな顔で俺を見る先生。

「一応、名前を変えて用紙を生徒会に提出します」

「ぜったい許可しないだろ」

「許可されなかったら…」

「許可されなかったら?」

 にいっ、と笑って見せる。

「力でねじ伏せます!」

 俺陰キャでできるかわからないけど…何とかなるさ。

 あ、先輩達にも手伝ってもらおうかな!

「………お前、葉山達に似てきたな」

 呆れた顔で言う先生。

「俺らのオアシスのためですよ、先生」

「一応言っておく、私は止めたからな」

「俺らの勇士見ててください!そんで俺に惚れちゃってください!」

「お前には惚れねえよバカ」

「先生、俺ツンデレ苦手なんですけど…」

「………」

 無言でにらみつけるのやめてください。


 先生が窓際でタバコを吸っている時、俺は申請書に必要事項を記入する。

 活動場所はここで、部長は俺。

 部員は葉山先輩と三浦先輩と…凛には一応確認しとくか…。

 制服のポケットからスマホを取り出し凛に電話をかける、前に時刻を確認する。

 4時43分。

 ……あいつ絶対寝てるわ。

 家帰ったら電話するか。


 じゃあ最後は……。

「先生」

 外を見ながらタバコを吸う先生を呼ぶ。

「あ?どうした?」

「うちの部活の顧問になりませんか?」

「何そのプロポーズみたいなの」

「そのほうがいいかなって思って」

「意味が分からない」

「それじゃあ…」

 俺は立ち上がって先生のほうに近づく。

 先生の顎を指でクイッと持ち上げ、

「お前、うちの顧問になれっっっってえええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

 先生が俺の体を突き放し、間髪入れず俺の腹に一発蹴りを入れる。

「生意気」

「生意気って…蹴らなくてもいいでしょ!!!」

「川崎がこんなことやったから顧問になるのやめようかなー(ちらっ)」

「あ、了解っす。ではさようならっ!(キラリーン)」

 俺は爽やかスマイルで答えた。

 三浦先輩ほど爽やかではないけれど。

「え、ちょっと待って、そこは『お願いです先生!』って懇願するところでしょ?」

「先生、もっと真面目になりません?」

「お前に言われたくないわっ!」

「あーもう。なるんですか、ならないんですか!」

「べ、別に顧問になりたいとかそんなこと思って無いんだからね!」

 腕を組んでそう言う。

「だから俺ツンデレは苦手なんですって!」



 鎌倉先生が顧問になった。

 

 


 

 午後六時過ぎ。

 夕焼けを見ながら凛と通話をする。

「んー?どしたの佑くん」

 この声の感じ、

 絶対今起きたやつだ。

「ちょっと話があってな」

「何の話?」

「俺、部活作ることにした。」

「おーすごいすごい(棒読み)」

「だから、俺と契約して、副部長になってよ!」

 このネタが通じるか…。

「どんな部活なの?」

 うん、通じてないな。

「どんな部活……青春する部活だな!ラブコメがしたい!」

「青春を謳歌する部の二代目みたいなやつか」

「そうだよ、で俺と契約しt」

「よし、入ろう!」


 凛が仲間になった。

 即決だなぁ。

 まぁ、凛らしいけど。

 

「そういえばさ」

「どうした?」

 なに聞かれるんだろ。ドキドキ!

「部活の名前、何にするの?」

 部活名か……。

 部室で先生と喋ってるときに考えてたんだけどいいのが思い浮かばないんだよな。

 もう開き直ってS〇S団とか隣〇部とかごらく〇とか極東魔術昼寝結社〇夏とか囲碁サッカ〇部とか自演乙〇会とかにしようかな。

「うーん……あ」

「ん?」

「いいの思いついた」

「え、なになに?」

「それは……」

 






 








 

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