第2話 ただ高校生活初めての部活動をするだけの話


 HRが終わり放課後。

 隣の席にいる可愛い幼馴染、横浜凛よこはまりんは椅子から立ち上がり、机の横にかけてある鞄を持って俺のほうへと向く。

ゆうくん、行こ?」

「あぁ、そうだな。入部届出しに行くか…」

 俺は伸びをしてから立ち上がる。

 そんで二人そろって教室を出る。

 そして、目指すは青春を謳歌する部の部室がある部室棟。

 この学校は俺たち生徒の教室があるHR棟、部室がある部室棟、実験室とか美術室などがある特別棟、職員室とか事務室、校長室などがある事務棟に分かれている。

 ほかにも体育館とか武道場とか学校説明会が開かれるセミナー棟とか図書室とかある。

 この学校無駄に広いんだよなぁ。

 昨日道に迷ったし。

 部室棟の階段を上って二階へ到着。

 右へ曲がってその突き当りの教室が青春を謳歌する部の部室だ。

「よっしゃ到着」

「僕もう寝たいんだけど」

「さっきの時間寝てたのにまた寝たいのかよ」


 見た感じ普通の教室。

「……じゃあ入るぞ…」

 なんか緊張する。

 一回深呼吸をしt

「入部希望でーす」

 凛が先にドアを開け入ってった。

 おい、置いてくなぁ!

「ふぅ…お邪魔しまーす」

「やぁ…二人とも…」

 教室に入ると目の前にうちの制服(紺色の学ラン)の上に黒いマントを羽織った、見るからにヤバそうな人とエンカウントした。

 俺は危険を感じたのでバックしてそっとドアを閉める。

「え、ま、おい佑くん逃げないでよ!え、佑くん?佑くん!!」

「いや、さすがに逃げないよ」

 もう一回部室に入って周りを見る。

 壁には可愛いキャラクターのポスターやタペストリーが飾られていたり、本棚があっていろいろな本が入っていた。

 真ん中にある机の上には可愛い女の子のフィギュアやゲームが置かれていた。

 ここって…俺らは漫研の部室に入ったのか?

 いや、しっかり確認した。ここは青春を謳歌する部の部室だ。

「あの、入部届を…」

 隣で不安そうに凛が言う。

「あ、入部届ね………こんな部活に入部希望がいるなんて……あ、今顧問居ないからてきとーに座っててー」

 こんな部活って今絶対言ったよなこいつ。

「わ、わかりました…」

 と、凛。

「了解でーす」

 と、俺が言って、近くにあった席に座る。

 特に何もすることがなかったので机に置いてあった本を手に取る。

 ………これが、らいとのべるってやつか?

 そういう本とか読まないからあんまりわからないんだよな。

 表紙にはこれ、胸デカすぎない?って思うほど大きい胸のキャラがいてしかも可愛い。

 男子高校生は胸が大きくて(←ここ重要)可愛い人(←ここも重要)だったら誰でも好きになるからねえ。

 最初のページをめくるとキャラクター紹介のところだった。

 そして俺は驚くべき事実をしる。

 え、表紙のキャラって…主人公のお母さんなの!?

 まさかのメインヒロインがお母さん……そんなのもあるんだ…。

 ………世界って、広いな。

 あ、これ俺が世界は思っていたより広かったってことを知って旅に出るお話じゃないですからね?

 そのまま本を読み進めていた時、バァンと勢いよくドアがスライドされる。

 そして入ってきたのは30代後半でいまだ彼氏すらできたことないくせにすげー美人なうちのクラス担任、鎌倉先生。

 そうそう、昨日俺を拉致った先生。

 うちの学校で一番の美人さんだ。

「おー二人とも!可愛い顧問の先生が来てやったぞー!」

「あ、先生……こんにちは」

 凛が起きた。

「先生」

「なんだ、川崎言ってみろ」

 思ったことを正直に言う。

「先生は可愛いじゃなくて綺麗、美しいの部類だと思います」

「…………………はぁ…どうせ私は美人ですよ……どうせ男たちは、どうせかわいい子にしか興味ないんでしょ……はぁ…なんで、私って可愛い子になれないんだろ……はぁ、だる…人生だるい…どこかに綺麗で何でもできるこの私を拾ってくれる男はいないのかしら」

 そう言いながら先生は部室にもかかわらずタバコを取り出した。

 綺麗な人が私って可愛い子になれないんだろ、って言うとちょっとイラつくな。

「いや、先生いつも言ってるでしょ!ここでタバコ吸わないでくださいって」

「いちいちいちいちうるせえな!三浦!今度の数Ⅱのテストお前だけ0点にしてやろうか、あ?」

 黒マントのやべー奴は三浦というらしい。

「おーぼーだ!おーぼーだ!……これだから先生は彼氏できないんですよ」

「なっ!…う、うるせえ、じゃあ私に彼氏ができたらどうするんだよ!」

「この部活廃部にします。まぁ廃部になることはないでしょうけど」

「言ったなこのクソ野r」

「先生!」

「何だよ。お前まで私のこと誹謗中傷するのか?」

 いや、誹謗中傷はしてないような気が…。

 だがこれはチャンス!

 先生は彼氏欲しい、俺も彼女が欲しい。

 口は悪いけど胸が大きくて美人の鎌倉先生。

 これはもう告白するしかないでしょう!

「先生、好きです。付き合ってください!」

「いや、お前タイプじゃないから、ごめん」

 即フラれた。

「じゃ、じゃあ…俺と体のかんkぐはっっ!、痛ってえええええ!!!」

 先生の右ストレートが俺の右頬に。

 川崎佑は1000のダメージを受けた。

「先生に体の関係を求めるとかお前、退学にしてやろうか?へんたいっ!」

 そう言いながら先生は自分の体を抱きしめる。

「いや、そのくらいじゃ退学にならないだろ!ってか生徒を殴ったあんたのほうが退職だろ!」

「……ふんっ!」

 こいつ、無視しやがった!

 腰まである黒髪を揺らしながらえらそーに歩く。それで、テキトーな席に足を組んで座る。

「横浜、川崎早く入部届を出せ。さっさと部活始めるぞ」

「…ういっす」

「わ、かりました…」

 俺らは席を立って今日書いた入部届を提出する。

「よし、おっけ。おい三浦自己紹介だ」

「はーい」

 黒マントを外して(なんで、付けてたの?)教壇に立つ。

「2年1組、三浦っす。この頭がおかしい部の副部長してます。よろしくね二人とも(キラリーン)」

 うわ、イケメン。

 ってか部長じゃなかったのかよ。

 キラキラオーラ纏いまくってますわこの人。

「先生部長は?」

 凛が聞く。

 確かに、今教室にいるのは俺と凛と三浦先輩と暴力女(鎌倉先生)だけだし…遅刻か?

「いや、この部室にいるだろちゃんと」

「いや、いないでしょ?」

 俺は周りを見てから言う。

 机が何台か在って、窓があって黒板があって掃除用具入れ教卓、本棚…。

 いないじゃん。

「いるだろ、おーい出てこーい葉山ぁー!」

「マスターのお望みとあれば」

 どこからかそんな声が聞こえた。

 そして、後ろにあるロッカーがききっと変な音を立てて開いた。

「ふっ!悪かったな…この掃除用具入れの狭さが好きで、出ようにも出られなかった」

 ……。

 こういうのって変態って言うのか?

 いや、まだそう決まったわけじゃない。

「2年1組、葉山だ。この頭のおかしい部活を作り、そしてその部長になった男。趣味は狭いところに入ること。よろしく」

 さっきの三浦先輩は背が高くてイケメンって感じだったけど葉山先輩は俺の身長(166)よりも5、6cmくらい低くてあと、絶対女装似合う。

 まぁ隣の凛のほうが似合うと思うけど。

 せっかく可愛いのにこの人変人だからねぇ…もったいない。

「二人とも、自己紹介」

 先生が言う。

「了解しやしたー、自分は川崎って言います。面倒くさいことが嫌いです。…これ言わなくてもよかったな…。趣味は…ないです。まぁよろしく」

 席を立ってその場で言う。

 ぱちぱちぱちーっと三浦先輩や葉山先輩が拍手してくれた。

 案外いい人かもしれない。

「えっと…横浜凛、です。1年2組であ、こいつ、川崎も同じです。趣味は…ボーってすること?…まぁよろしくお願いします」

 ふぅ、と息を吐いて席に座る。

 可愛い。

 頭、なでてあげたい。

「で、部長」

 はーいっと俺は手を上げる。

 これは絶対に聞かなきゃいけないことだ。

「何だい、えっと…川野くん!」

「川崎です。この部活って何やるんすか」

「よくぞ、よくぞ聞いてくださった川井くん!」

「川崎です」

 こいつ、わざとか?

「この部活は名前の通り青春を謳歌する部だ。ラブコメしてもよし、遊んでもよし、勉強してもよし、狭いとこに入ってもよし!」

「狭いところに入るのはお前だけだろー」

 三浦先輩がつっこむ。

 それを軽くスルーして部長はつづけた。

「さぁ、みんな一緒に、青春を楽しもう!ってぇ先生タバコ吸わないでください!!」

「だってお前の話長いんだもん」

「外で吸いなさいよ外で!!」

「はいはいはいはいわかりましたー」

 職員会議行ってくるわーと言い廊下に出る。

 大丈夫か、この先生。

「あの、三浦先輩」

「どうかした?横浜」

 こっちの先輩はちゃんと覚えてるんだな。

 さすがイケメン。

「ラブコメをしてよしって言ってましたけど…ここ、男子校ですよね…」

「…あーそれね…あいつ、葉山が部員集めるとき…こんなこと言っとけば入ってくれるだろってテキトーに言っただけだから。……あ、でも向かいに女子高あるしラブコメ出来るんじゃないかな、わからないけど……うん…まぁ健闘を祈るよ」

「あ、はい。あざす」

 さすがイケメン。しっかりと質問に答え、最後に応援もする。

 もう尊敬するわ。

「ねーねー三浦ー」

「何だよ変態」

 部長へのあたりが強いなぁ。

「俺のスイ〇チ知らね?」

「教室じゃない?」

「さんきゅー」

 と言って部室を出て行った。

 われ思う。

 自由だなー、と。


 

 窓越しに外を見たら空がオレンジ色に染まっていた。

 壁に掛けてある時計を見る。

 時刻は午後5時ちょうど。

 5時30分までが部活の時間だからあともう少しで終わる。

 静かな部室で三浦先輩はスマホをいじっていて、凛は机に突っ伏して寝てて……よく寝るなあ。

 ………ってかこれ、青春謳歌してるの?

 部活動名詐欺じゃない?

「あ、そういえば」

 思った。

「この部活ってなんで、二年生二人しかいないんですか?……えっと確か」

 胸ポケットから生徒手帳を取り出し、部活動設立の規定のところを開く。

「部活を作るには4名以上の入部希望者と顧問が必要ですけど…」

 顧問は鎌倉先生がいるけど…。

「えっとねぇ……」

 言っていいのかなこれって言いたそうな目をしている。

「最初は5人いたけど…ひとりが病院に入院中で、2人目は引きこもり、3人目は海外留学で、学校に来てないんだよねぇ」

「マジっすか…ってか鎌倉先生がよくこんな部活の顧問になってくれましたよね」

「本人曰く楽そうだからここの顧問になったんだって」

 あははっと軽く笑う。

 あぁ、俺もイケメンに生まれたかった。


「おおおおおい!三浦ぁぁ!!」

 静かな部室に部長の叫び声が響く。

 すごい勢いで先輩が入って来た。

「俺のス〇ッチ教室にないじゃないか!」

「よし、二人とも。部活終わりにするぞ!」

「おいっ!無視すんな!」


 入部初日、俺は思ったことがある。

 青春を謳歌する部はよく部活として許可されたな、と。

 

 




 


 

 

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