③ 新人達




***




 一ヶ月後、ハカモリ第六課のオフィスにて京香はメンバー全員を集合させていた。


 本日、新人が入るのだ。


 京香は朝オフィスに来る途中のスーパーで何となく買ってきた特大クラッカーを全員に渡した。三人の人間と二体のキョンシーが各々自分勝手な表情を浮かべて、この特大クラッカーを構えている。


 タンタンタン。トン、トトン。トン、トン、トン。


 部屋の外から足音が聞こえる。数は三つ。それぞれ違った足音がした。


 そして、コンコンコンと第六課のドアがノックされた。


「木下恭介です」


「どうぞ、入って」


 音も無く、扉は開かれ、一歩部屋に入った所で木下がギョッとした。


「ファイア!」


 京香の号令と共に全員がクラッカーの紐を引いた。


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 京香の想像以上の爆音が第六課の部屋へと響き、飛び出た飾りが木下の腹を直撃する。


「あ」


「ガハァ!」


 木下はお手本の様に引っくり返り、身体中に飾りが絡みつく。


 その木下の背後では、ホムラがヒカリに抱き付いてパチクリと京香達へ眼を向けていた。


 姉妹達の姿は鏡合わせの様に対照的だ。ホムラは左眼を、ココミは右眼を隠す様に蘇生符を貼っており、お揃いの首輪をしていて、左右非対称の柄をしたワンピースを左右対称に着ている。


 京香はスタスタと転げている木下へ近付き、右手を差し出した。


「ごめんごめん。思ったより威力が高過ぎたわ」


「死ぬかと思いましたよ!?」


 木下は京香の右手を握り、よっと立ち上がる。


――まあ、程よく緊張は取れたでしょ。


「それじゃあ、とりあえず自己紹介しましょ。アタシと霊幻は最後にするから、マイケルからお願い」


 京香は後ろを振り向いてマイケルへ穴の開いたクラッカーを向けた。


 マイケルは狸腹をタプンと揺らし、何故か不適な笑みを浮かべる。


「マイケル・クロムウェルだ。第六課専属のキョンシー技師。普段は研究棟に篭ってる。面白いキョンシーを見かけたらすぐに俺の所に持って来いよ」


 次に続いたのはヤマダ達だった。


「ヤマダでス。第六課でハ、主に情報収集を担当してマス。ワタシの手をあまり煩わせないでくだサイ」


「私はお嬢様のキョンシー、セバスチャンです。以後、お見知りおきを」


 恭しく頭を下げたメイドと老執事の眼が木下達に向けられた。


 え? 次自分達? という木下の顔に京香は、そうね、と頷く。


「……木下 恭介です。第二課から第六課に転属になりました。第二課の主任、アリシア・ヒルベスタから、あなた達の監視も仰せ付かっています。以後、よろしくお願いします」


――意外と度胸有るわね。


 自身がスパイであることを何も隠さない新態度に京香は少しだけ感心した。


 木下が後方に居るホムラとココミへ眼を向ける。


「ホムラ。ココミのオネエチャン。あなた達を覚える気も、あなた達に尽くす気も無い。ココミを傷付けたら燃やすわ。以上」


「ココミ。オネエチャンの妹」


 木下が「ええー」と口を開いたのを横目に、京香は一度咳払いをした。


「第六課主任、清金 京香よ。趣味はゲーム。第六課での戦闘は主にアタシ達が行っているわ。で、こっちの大きいのが」


「霊幻だ! 吾輩は撲滅の為に存在している! 共に撲滅をして行こう!」


 ハハハハハハハハハハハハハハ!


 霊幻の笑い声が一頻り響く。


 新人の眼がドンドン死んでいっている気がするが、京香は気のせいに違いないとポジティブに考えることにした。


 グルリ。第六課全員へと眼を向けた後、京香は大きな声を出し、本日の予定を告げた。


「さあ、歓迎会をするわよ!」

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