第99話
かの防衛戦から
シェラザードの
その
その
けれど―――……
* * * * * * * * * * *
「マスター・ノエル、シェラザード様が面会をお求めになられています。」
「そうですか、判りました。」
その日シェラザードは、マナカクリムにあるギルド会館を訪れ当マスター職であるノエルに面会を求めていました。
ノエルにしてみれば、娘であるササラと同じクランに所属し、また時たまにギルドの業務を手伝ってくれた事もあるから彼女が面会を求めて来るなどそう珍しい事ではなかった―――だから今回も、そうだと思ってしまっていた―――
しかし―――
「(!)その
いざ面会をしてみると、只ならぬ決意の下
そう―――ノエルが目にしていたのは一介の冒険者としての“
「王女シェラザード様、当ギルドに何用でお越しになられたのでしょうか。」
「この度私は、国に帰ることに致しました。 ノエル様に於かれましては一番にお世話になった事への感謝の表れと、一番に報告を致したいと思った所存にございます。」
その場にいたのは、一介の冒険者であるシェラザードではなく……『エヴァグリムの誇り』をつけた、『エヴァグリム王女』であるシェラザードでしかなかった。
そう―――例の
それにシェラザードは今なお『王女』であった為、いつかはこの日が訪れるとは思っていた……
そして、その決意が鈍らないよう―――
「(……)それで、あなた様のお仲間にはこの事は話されたのですか。」
その―――ノエルからの
また―――またしても彼女は、『サヨナラ』も言わないまま、
そしてやにわに席を立ち、この街から去ろう――――と、していた……
* * * * * * * * * * *
「―――シェラ!どこへ行くと言うの!?」
「……クシナダ―――」
その足が、丁度街の正門へと差し掛かろうとしていた時呼び止める声がしました。
しかしその声の主や、
「そんな恰好をして―――
「(……)ああ―――そうだよ……だって、言ってしまえば必ず決心が
「『決心が
「本当は……さ、私が起こした“粛清”の名の下、
けれどそれじゃ―――そんな事じゃ『けじめはつけられない』と言われたんだよ!
そして昨日、その為の“
「待って! シェラ―――!!」
「来ないで! それ以上……来ちゃったら……折角の決心が……」
そして次第に遠くなり―――
#99;
「ようやく……
「ササラ……あなたは、知っていたというの?」
「ええ、いつかはこんな日が来るであろう事は判っていました。 ですが、その日が今日だとは、私とて判りませんでした。」
「だったら―――!」
「所詮……」
「……えっ?」
「所詮、
王女は、自国の民達の為に決心をしたのです……それを、私たち如きが止めてはいけません―――止める事など出来はしません……。
だからこそ、またもあの方は『サヨナラ』を使わなかったのです、使えば……もう二度と、再開は叶わないものだと思ったから……。」
シェラザードが完全にマナカクリムから立ち去った頃合に、そしてまた見計るかのようにクシナダの前に姿を見せるササラ。
実は彼女は、こんな日が来る事を予見していました。 そう―――シェラザードが起こした変革が、功を成し得た時点から。
だからこそ―――こうなるであろうと判っていたからこそ、クシナダの前に現れた……何よりクシナダは、不意にいなくなってしまった“
それに……直近に於いても、嘘を吐いていたのだから―――……
クシナダの嘘―――それこそは……
好いてしまった相手に、一切悪態が吐けなくなってしまった……と、言う事。
だから以前、指摘されてしまった事に、つい乗っかってしまった―――
『さっきだって絶っっッッ対に、『何言っているのかしら―――』の後、『このお駄肉エルフ様は』て言ってたでしょうに!!』
以前の関係性だったなら、その禁忌の言葉はやにわに口から吐いて出たに、違いはない……けれど好いてしまった今となっては、言えようはずがない……でも、嘘を吐く事で彼女との関係性が保てるならば―――と、だからこそ見破られてしまった“嘘”……けれど【黒キ魔女】も言っていた、今回敢えて使っていた言葉がそうした意味合いを持つと言うのならば……
その淡い期待に、胸を寄せるのでした。
つづく
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