第95話

最後の関門を突破し、一気に敵本陣内に傾れなだれ込む魔界軍。

それを知り、自らの天幕から出てきたのは“9人”もの将―――

      “頭” “腕” “掌” “胸” “肋” “肚” “腰” “腿” “脚”

しかしこの“9人”こそが……


「気を付けて、あの者達全員が今回の侵略の総責任者『ルキフグス』です。」

「うへえ~~一人じゃないの?うっわ―――面倒臭ッ。」

「とは言え、私達も一人じゃない。 ここは一つ総力を挙げて撃退すべきだ。」


クシナダは、ニュクスと同化していた経緯もあり、他の誰よりもラプラス側に精通していました。 だからこそ正しい……適切な助力が出来ていた―――の、でしたが、残すのは敵の総大将“ただ一人”だと思っていたシェラザードは、最終決戦ともなろうとしている今回の闘争がこの“9人”全員を倒さない限りは終わらないと判ってしまったため、少々不満を漏らしてしまったのです。

しかし―――これを好機だと判断したミカエルからの指示により各戦端は拓かれ……



#95;ルキフグスとの死闘



「フフフ……“ヘッズ”であるこの私に目をつけるとは、中々お目が高いようだな?」


「フン―――もう少し気の利いた……マシな事は言えなかったのか。 だが、反面感謝せねばなるまい……これまでには愚にもつかぬ様な者ばかり相手にしてこなかったからな!」


「フッ―――中々に吠えおるわ!このメス犬めが!!」


         * * * * * * * * * * *


「この“アムズ”たる私に、たったの3人……?よくよく舐められたものだ―――」


「まあ、正直に言えば私達には各自1人につき獲物は1つずつ……が、妥当だとは思ったんだけどな。」

「ええ―――先達せんだつたる者、後続たる者達にさきを譲らねば育ちませんからね、だからこれで丁度良いのです。」

「御託はいいです―――斬り捨てます……」


             ≪无衒むげん;清流無明剣≫

             ≪影殺;修羅道≫

             ≪一閃;櫻花乱舞≫


「フッ―――フフフ……この程度とは!中々にわらわせてくれる!!」


         * * * * * * * * * * *


「それにしても……この“ハンズ”様のお相手が婦女子一人とは……随分と虚仮こけにされたものだ。」


うぬ如き、一人で充分よ。 それにもうが気遣うような者は眷属の子達のなかにはおらぬ。}

「なにぃ?どう言う意味だ、それは。」

{皆……よくぞここまで育ってくれた、それにうぬらは彼の者の“虚報”によりまんまと釣り出されてきたのも気付かぬ凡愚よ―――}


{故に……我らにはもう護ってやる気遣いは無用。 判らぬか、護ってやらねば満足に立てなかったひよっこ達が、今やもうその両足でしっかと大地を捉え踏みしめている様を!}


「お……おのれえ~~ニュクスめ!よくもこのワレを―――“レグス”を謀り果せたばかりおおせてくれるとは!」


{同情はしてやろう……だがお前達がこうなったのは寧ろお前達の方こそにある。  お前達が彼の者―――ニュクスをもう少し手懐てなずけていれば、形勢はこうはならなかったのだろうにな……}


{特別に見せてしんぜよう―――が持ちし権限は、何も水だけではない事を……。}


                 ≪火竜鏢かりゅうひょう


{残念だが、お別れだ―――永遠に、な。}


             ≪大地葬列アース・レクイエム金色龍脈覇霊剛衝アルド・ノヴァ



戦場で亘り合っていた者達―――“ヘッズ”を相手としているニルヴァーナ、“アムズ”を相手としているリリア・ノエル・ホホヅキの三人、“ハンズ”を相手としている竜吉公主に、“レグス”を相手としているウリエル……『ルキフグス』を構成しているこの4様は、実はニュクスよりも格段上の実力を有していましたが今や憂いが無くなった者達にとっては物の数ではありませんでした。

アムズ”はリリア達3人の奥義を喰らい―――“ハンズ”に“レグス”も竜吉公主とウリエルの前にそれぞれ沈んだ……


それはそれで良かったのですが、ならば他の戦場に来ていた者達は?


シルフィやミカエルは“回復”や“支援”の立ち回り上後衛に収まり、またササラもその特性上やはり後衛に、ではクシナダとシェラザードは?

シェラザードもまた、弓での遠距離攻撃を得意としていた為やはり後衛に―――

けれど、それはともかくとしてつい先頃ニュクスからの強い影響にてられて弱ってしまっている“悪友”の為に……


「ごめんなさいね―――シェラ……」

「何言ってんだよ、水臭い……それに、後衛こっちにいた方がいい―――って、私が判断したまでだよ。」


いつもは惚れた異性を奪り合うとりあう為にと火花を散らし合っていた頃の面影はなく、まるで弱弱しく―――まるで産まれたての子犬の様にすがる様に見つめてくるその瞳。


私はあんたの―――そんな姿は見たくはなかった……

けれど、見てしまった―――

“見てしまった”……からとて、見棄てたくはなかった……


だからこそ、ほんの少し嘘を吐いてしまった―――

しかし『嘘を吐いてしまった』とはいえ、シェラザードのその判断は間違っていませんでした。

そう、『ルキフグス』は計9人―――その内の3人は既に滅することが出来ました。

けれどまだ、“ヘッズ” “チェスタ” “リブス” “ストマク” “ウエスト” “サイ”は健在―――だからこそ、残った5人を同時に処理すべく……


「シェラさん―――“直接火砲支援ダイレクト・カノン・サポート”お願いします!」


「OK―――!」

〖闇を斬り裂く光明よ、我がやじりに宿りて掃いはらい撃て〗―――〖オメガ・レイ・ストーム〗


(ムヒュヒュ♪)「さすがはシェラさん、コレは私も負けてはいられませんねッ?☆」(ムヒヒ)

〖我が名の下に這い寄り奉られしは、残酷なる者の調律しらべにして遊興なり、其が求めしは逆賊の徒にして、その大いなる絶叫〗――〖ブルータル・マーベリック・サクリファイス・スフィア〗



一つの高度なる古の言葉、古代語での魔法の詠唱を邪魔させない為にと遠隔からの魔法を付与された攻撃が飛んでくる―――しかも一つ気を抜けば自分達をも射抜かんとしているその攻撃を……しかして、その者達の攻撃をどうにか防ぎ切り幸いにしてダメージは負わなかった……ものの―――


「フフフ―――気の毒なもんだ、最早同情の念しかないな!あのまま防がずにたおされていれば幾分か楽になれたものを。」

「……珍しいですね、あなたが敵に向かって気遣いの言葉を使うなど。」

「それこそ慈悲というものよ……けれど、私はこちらの方が好いわ?だって……まだ(血が)吸い足らないと言っているもの―――私の布都御魂が……」


「【神威】―――あなたそろそろその性格直した方がいいわよ。」

「それはそうと―――公主、あなたが“火”の術を行使するとは、また珍しい。」

「私は、何だって出来るわよ?ただ―――行使しなかったのは苦手だっただけ、何も『出来ない』とは一言だって言ってはいないからね?」


「いやあ~~ホント、憎いぜぇりゅうきちぃ、苦手としている術でも軽々撃破―――て、どんだけ『デキマス女』アピールぶっこみやがるんだか。」


「(……)あのねえ―――シェラ……あなたもいい加減にしておきなさいよ?私の事を『りゅうきち』ってそう呼ぶの……」


「全く―――あやつらにも困ったものよ、まだこちらには“ヘッズ”を含める5人を相手とせねばならぬのになあ?お前も……そう思うだろう?“ヘッズ”よ―――」


「ぬぐっ―――く・く・く……小癪なあ~~!!」


「だが―――これが“現実”と言うモノだ、そろそろ私もお前達の面は見飽きた、故に見せてくれよう!我が焔の真の力を!!」



      ≪ファイナル・ストライク;オンスロート・カプリッツィオ≫      

               ≪无塵;天絶空断≫

               ≪影殺;六道≫

               ≪一閃;破邪顕正≫

                 ≪六魂幡≫

        ≪大地最終審判ガイアーズ・ジャッジメント罪禍折伏突閃撃洗礼衝バプテスマ・クリミナル・マニューバ





つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る