第85話
未明―――またしても魔界が侵略された一報を知った者達の対応は、“想定”をしていたにも拘らず慌てふためいたものでした。
しかし、その慌てふためいた原因も、『未明にて魔界が侵略された』―――では、なく……
どうしたことだ……。
どこにもおられない―――
我が君、どこにおられるのです―――!
とある者の『執事』であったオルブライトは、魔界侵略の一報を
けれど―――見つからない……見つかるハズも、ない。
しかしながら、その慌てふためく態様を―――
「どうしたのです、執事オルブライト―――」
「ああ……これは姉上―――いえ、侍従長サリバン様。 実は、かかる旨の報告と対処法を仰ぐために我らが主君魔王様にご奏上を……と、したところ……」
どこにもいない―――
そう、どこにも―――……
玉座の間はもちろん、大食堂や資料室、果てはあの研究施設にも……
そう―――この魔界の統治者の側近である彼らが、一様にして慌てふためいていた事由……こそ
魔王カルブンクリスの所在不明―――
一体、どうして……?
それは『知らぬが華』―――
魔界を侵略する側からすれば、
ただ―――知らない……
この日、この時こそは、“彼ら”からすれば『薄幸の日』。
そして侵略されている魔界側からすれば、『
これから魔界を我が物とする為、大挙して
そんな場所に―――彼らにしてみれば“災厄”が
“獄炎”を思わせるかのような、『熾緋』の頭髪―――
その眸も“獄炎”が如きの『熾緋』……
前に組みし両の
それに、その表情も理解し難いものだった―――
ある側面から見れば、“怒”っているようにも見て取れ―――ながらも……
またある側面からみれば、“悦”んでもいるようだった……
そう……“この日”“この時”―――
「少し、お邪魔をさせて頂くとしよう。 なに、悪いようにはしない―――君……いや、お前達には私の永年の研究成果の証明となって貰うのだからね。」
一見……すれば、貴婦人の様な―――武を誇れるような者には見えない……
いや寧ろ、今回従軍した者達にしてみれば『隙だらけ』―――だった……
だから―――気配を覚られず殺せる者は、“そうした”……
「ヌ・ナッ―――?!」
「いい……|傷み《いたみだ―――実に……だが、それでは満足できない。 それに―――……」
「弓、放てっ―――!」
「この程度……フ・フ・フ―――たったこれだけでは、試験運用するには“足”が出る。 寄越セ……オ前達ノ責任ヲ取ル者ヲ―――」
確かに……
その細頸には刃が通り、そこから噴き出す大量の血潮。
しかし間もなくして傷口は塞がり切り、
その次なる一手は、矢の一斉掃射―――
? ?? ???
いつしか―――1000本以上もの矢も、無くなっていた……
そして女は、言葉を紡ぎ出す……
その女、本来の目的を。
そう―――その女、『魔王』と称する者は、永年の研究成果を試す為、本来いるべき場所から魔界を侵略している者達の陣地に……
そして……“本性”が
そうした絆を深めた者達の前でも、
「
=
女の種属は、『蝕神族』と言いました。
そう……『神』をも『魔』をも、『善』も『悪』も、“総てを喰らい尽す者”―――
総てを喰らい尽し、己が紡ぐ
その陣地に集められた5万もの兵は、指揮官もろともその腹の中に収められた……。
収められ―――は、したものの、その女の体型は、以前と変わらぬまま……
そして、畏るべき言葉が、紡ぎ出される―――……
嗚呼……充たされないなあ―――
また、お腹が空いてきてしまった……
今回の規模は
だからこそ……『完成』を急いだと言うのに―――
“試運転”もしないままで終わらせたのでは、黙って城を抜け出してきた意味がない。
“期待”―――までもしていなかったのだが、“期待”はしていたのだよ、お前達……
この私と同等か、それ以上の
まあ……こんな
その―――女……
魔王カルブンクリスは、
* * * * * * * * *
#85;防衛の開始
その一方、マナカクリムでは……
魔界を侵略しようとしている者達―――『ラプラス軍』と、魔界の軍―――『魔界軍』とが激しい攻防を繰り広げていました。
“攻撃側”と“防衛側”の戦戟が交わる
「つい―――この前までは、やられっぱなしだったからなあ……色々と、返してもらうぜ―――」
「まあ……この前は、私達2人だけでしたから、色々と不足していたのは否めません。」
「フッ、まあよいではないか―――私の仲間を
極悪なる者の、極悪なるスキルの解放で、辺り一面灼けた大地となる最前線。
そしてこれを機にと、以前嬲られた屈辱を
そして、
或いは、支援・回復魔法を飛ばし―――
或いは、魔法攻撃に徹し―――
或いは、直接魔力干渉支援攻撃し―――
或いは、遠隔殲滅射撃を行う―――
そして……また―――防衛側の最後方より……
≪一閃:伐採≫
「(なあ……ニルさんや―――)」
「(なんだ……リリアさんや―――)」
「(来ちゃっ……た―――)」(アハハハハ……)
「(よいか……決して後ろを振り向いてはならんぞ―――)」
しかしてその現象は、とある“怒れる者”の到来を、知らしめるモノでもあったのです。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます