第70話

また一つ“灯火”が……

無意識、無自覚、無自我のなかであっても、“その影響”はもたらされる……

しかしそれも、“鳥籠”から解き放たれたからこそ出来た事―――

鳥籠”より出奔でようとした、君の“その気持ち”―――

ボクが示唆しなかったら埋蔵うもれたままだったろう、“その気持ち”―――


けれど君は、鳥籠の外から出る事世界に羽ばたいていく事を選択した―――


さあ祝おう―――その“降誕”を……


この“闇”に閉ざされた世界―――『魔界』に“躍動する光”の降誕を。



その存在は、新たな“何か”が誕生うまれ、躍動しつつあることに寿ことほぎを述べました。

そして、手にした楽器を奏で、歌い上げる……


ようやく、この魔界せかいに誕生をした、“ある存在”を祝うかのように。


そしてその者だけに備わる、固有の権限―――〘神聖なる天使の歌声ダイレクト・ヴォイス


“それ”は―――ながの間、誰しもが待ち望んでいた……

“それ”は―――ながの間、この暗く闇に閉ざされた魔界せかいに救いをもたらす者……


“闇”と“光”は対を為す―――そしてそれらは、“均衡”し合わなければならない……


いずれか一方が色濃く強まれば、そのまた一方は薄まり弱くなる……


“それ”は『影響』であり―――“それ”は『存在』自体そのものにも……


だからこそ、その慶事をよろこぶのは当然―――


だからこそ、その“歌声”は一層に張り上がる……


やがて“それ”は感極まり、その者が施していた“擬態”が剥がれ落ちる……


その者の本性は『火』―――

その者の別称べつのなは、『暁の明星』と、そうたたえられたる―――


その身に、“炎”の様なオーラを纏い、燦然さんぜんと輝きたる背の3対6枚の翼―――


〖神人〗の派閥を纏める天使族の“長”にして、【大天使長】と呼ばれたる『ミカエル』……


「さて―――ではそろそろボク達も、動くとするか、本格的に……」



#70;『常夜の闇魔界』に“躍動せし光”



その一方―――〖神人〗の天使が動いたとなれば、当然“三柱みつはしら”の一つでもある……


{“公主”よ―――いづこにおはすか……}

{こちらに控えてございます、“長”よ……。}

{かの“光”が息吹きし始めたそうな、またそれに伴い“天使”も動きを活発させた―――とも。}

{そこはすでに、ご報告した通りの事でございます、“長”よ。}


これまでにも幾度となく彼らに絡み、その結びつきを……“絆”を深めさせてきた者―――〖聖霊〗の派閥を纏める神仙族のNo,2『竜吉公主』。

その竜吉公主が適度な緊張をもっ相対峙あいたいじしていたのは、同じ神仙族の“長”である……

{それで『女媧』……いかがいたしましょう。}

{今のは、さきの大戦に於いて著しく損ないし同胞はらからを復活させる事に専念しておる。 故に公主よ―――全権はそちに委ねておる。}

{よく理解できております。}

{かの“光”―――幸いにしてれらが〖聖霊〗の“眷属”であるとか。}

{それも視認―――確認まで至りてございます。}

{よろしい―――なれど油断するでないぞ。 くまでれらが〖聖霊〗の“眷属”である事実は、彼の存在にしてみれば実に些末な事……その取扱いは繊細に―――な。}

{畏まりましてございます。}


ここにきて、ようやく顔を覗かせ始めた“三柱みつはしら”の真実……


〖神人〗―――天使族は【大天使長】『ミカエル』


『聖霊』―――神仙族は【始祖】『女媧』


しかも、この二つもの派閥は共に“ある存在”に狙いを定めていた……


それこそが“光”―――


【閉ざされた世界に躍動せし“光”】―――


いや―――しかし……そうは言っても、この魔界せかいが『閉ざされている』とは?


それもまた、不思議な話しなのですが―――……


            * * * * * * * *


閑話休題それはさておいて―――以前保留した答えを聞く為に、再び王女を訪ねた侯爵は…


「おやこれは、一体どうした事なのでしょう?」

「ホ~ントは、死ぬほどヤなんだけど、あんたの言ってること聞いてあげる―――そう言ってんのよ。」

「そこは判りました。 ですが―――……」

「ホッホォ~ン、ヨケーなコブ主にクシナダとか(笑)くっついてくんのは想定外だったあ~?てェ~か、なんダヨ―――他人が入り込んできて見られたらヤヴァい物件ブツがあるとでもお?全く変わっちゃいないわよねえ?王国の体質とやらも。」

「ヤレヤレ―――これは“お相子”と言う事ですか。 確かに、あなた様の言う通り他人に視られても狼狽うろたえる程のものなどございません。 ですから、『どうぞご自由に』―――」


「(なんだか……ギスギスしているように見えるのは、ひょっとしてオレだけか?)」

「(いえ……“だけ”じゃないと思いますよ?)」

「(まあ~~このお二人、若い頃はよくつるんで悪戯わるさばかりしていたようですしねえ?)」(ムヒw)

「(あ゛~~つまる処の、“腐れ縁”てやつね)」

「(~~と言うより、クシナダがちょっと―――)」

「(ま、あのお二人の事は、放っておきましょ☆)」(ムヒヒヒ)

「(放っとくのかあ?)」

「(いつもの事でしゅから)」(ムヒヒw)


互いが互いをよく知っているから、相手がどう出るか―――

もう少し言ってしまえば、相手が何をされたら一番イヤかを判っているためなされてしまう“手立て”……{*まあ、シェラザードからの“一言”は、少々辛口スパイスが利いていた様ですが}

それを評してヒヒイロカネ達は、王国の城中での“権力闘争”“政争”未満の闘いが繰り広げられている事を知るのです。


が―――……


「(ねえ、シェラ……あなた今『ヨケーなコブ』のくだりで私の悪口言ったでしょ?)」

「(あの~~クシナダさんや?私の背中に、あんたの乳当たってんですけど―――)」

「(当ててんのよ゛っ!それより言いなさいよ!あなた『ヨケーなコブ』の“ルビ”『主にクシナダとか(笑)』ってしましたよね??)」

「(記憶にござあません―――)」

「(そんな“国会答弁”聞いてないの゛っ―――!はっきり言いなさいよ!言いましたよねえ?!)」


至極至近距離での、“愛の囁き”―――いやモト~~イ!

不適切言動の追及を行っている“悪友よきとも”同士……


その“結果”―――


「これは、王女シェラザード様。 此度の接見受けて下さり、まこと恐悦至極きょうえつしごくに御座います。」

「いえ……それよりこれからは我が王国への“協賛”の件、よろしく頼みますわよ。」


これは、シェラザード達がエヴァグリムへ帰(入)国をした“3日後”の、王女の公務の一場面……

実はこの時、王女との接見を望んでいた者が接見をしていたのは、王女シェラザード“ご本人”ではありませんでした。


そう……紛れもなく、この『王女』こそは―――


「(また、“身代わり”をする羽目になるなんて―――)」


そう、ご多聞にも漏れない様に、この時の王女様こそ以前“身代わり”役をこなしていたシルフィだったのです。

しかし―――おや?確かシェラザードと、そのお仲間御一行様はエヴァグリム入りしたはず―――なのに?

そうなってはいない接見をしているのが本物の王女ではない―――と言うのは、それなりの“事情”があった……と、言う事なのです。





つづく

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