第53話
「気前がいいなあ―――あんた……」
「あの者の身の上を知ってしまったからな。」
「しかし、彼の者が
「疑う余地は……ない、そなたらはあの者からの惑わしの術にかかっていた。」
「(チ)そうと判ってりゃ、かからない手立てなんていくらでもある。」
「だろうな。 だとしたらば―――だ、私が“それ”以前に手立てを打っていたとは思わなかったか。」
「そのような手立てが……」
「そなた達にはまだ話してはいなかったが、いいだろう……これもまた機会だ。
この私の故郷スオウから旅立つまでの間『知恵ある者』と交流を深めたことがあってな。」
「『知恵ある者』―――」
「その者……私の
「〖神人〗と〖聖霊〗に比肩する―――」
「その身に多くの知識を修め、且つそれらを活用する為に
それは―――“風”の噂を便りに紡がれた、また一つの運命でありました。
ニルヴァーナも『
なのだとしても―――
? ?? ???
現在の彼女の
それが、このオーガが『盟友』とまでする存在……
「ある日、私の郷スオウを訪れた『吟遊詩人』の
“食”の材となるもの―――
“建”の材となるもの―――
しかも種類は限られたモノばかりではない、ありとあらゆる種類……そこはさながらにして『試験場』―――『実験場』のような処だった、そしてその『庵の主』こそ、この私が畏敬の念を払うべき存在……我が『学の師』にして『盟約の友』たる存在だ。」
そこでニルヴァーナは、現在に至るまでの経緯を話したのでした。
その中で、
「“眸”を―――?しかし、それでは……」
「だが、眸を見ていれば次にその者が何を為そうとしているかが判る……確かに“ただ”眸を見つめていれば相手の術に陥りやすいようだが……その者と一体となることで次に何を為すべきかを見つめ直す、私の
「(ふんむ……)あんたのその盟友とやらの話し―――私にも少しだけ判るよ、何しろ同じようなことが私の“流派”の奥義書にも書かれてあったからね。」
そう……ニルヴァーナがノエルの忍術を
得てして“幻術”の
答えは簡単―――その相手も、術者本人に成ってしまうのがいい……
術者の気持ちと一体となり、次にどうすればこの術が効果的に発揮できるか―――その事さえ判れば
だから、そう……ニルヴァーナにはどんなにノエルが惑わそうとも、どんなにノエルが
だからこそ気遣ってやれていたのだ―――と。
#53;
それからしばらくして後―――自分達が活動の拠点と定めた
「ごめん下さい―――こちらにニルヴァーナと仰られる方はいらっしゃいますか。」
「ああ―――はい……お~~い!ニル~~! あんたにお客さんだよ―――」
その客人とは一見して判るようにエルフの女性でした。
種属特有の長耳に、どこか可憐な華のように
しかし―――?
「私がそのニルヴァーナだが……? そなた―――」
「お会いしとうございました―――!」
オーガはその粗野にして野蛮な性格から他の種属とはそんなに友好的ではありませんでした。
それは、
なのに―――
? ?? ???
「あ……会いたかったと、な?いや―――それは何かの間違いではないのか?わ、私は……」
「はいっ!存知ています―――オーガなのですよね?」
「おい、ニル……あんた―――
「おじ上殿の『うっすい本』にもありましたが……」(ドン引きッ)
「ちょおっ―――ちょっと待て??わ……私は知らんぞ? こんな―――」
「はいっっ♪ 知らなくて当然だと思います、だって私達初見ですもの。」
「(は?)な―――― な?! ホラ……」
「え゛~~~~」(じー)
「アヤシイ……どうして今になってその様なことを……」(じーー)
“険悪”同士の種属なのに抱き付いたまま離れようとはしない……それにオーガであるニルヴァーナもこのエルフの女性よりかは力があるはずなのだから、強引にでも振り払えば良かろうものなのにそうはしなかった……しかも、
普段、武では豪勇で鳴らしてはいるものの、よもや―――
「なるほど……アレが弱点でしたか―――」
「(げ)いつぞやの―――」
「“チビすけ”ではありませんよ、失礼な。」
「それにしてもあなた、いつの間に……」
「(……)この辺では見かけないエルフが
「は、はぁ~ン?そのモノを鑑る目は確かなようだな―――伊達に『盗賊の首魁』を張ってた……―――うぴょおっ?!」
「み゛ゃ゛っ゛??」
一体いつからそこへと潜んでいたのか、黒豹人の『盗賊の首魁』―――ノエルがいたのです。 とは言え、ノエルからしてみれば自分の惑わしの術を
ん・が―――
“まさか”の事態に、二人とも普段は出ないような声が出てきてしまった……
? ?? ???
どうしてそうなったのか―――は、次回の
つづく
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