第50話
とある機会をして、互いの生命の奪い合いを中断した者達―――ニルヴァーナとリリア。
その内の『傭兵団頭領』だったリリアは、その日の闘争を終えると自分が組織していた傭兵団を解散し、自分はニルヴァーナを伴って『とある者』がいる場所へと足を向かわせていました。
#50;
「―――なあリリア、その者はそんなに強いのか?」
「ああ―――“お墨付き”ってやつさ、この私でさえ油断してたらこの首を持っていかれかねない―――そんなヤツでね。」
「ふむ……ふふふ―――嬉しさ余って武者震いか……益々愉しみになってきたと言うものだ。」
自分と同等か、それ以上の武を見せる強敵が“称賛”するその存在、まだ見ぬ強敵にどこか嬉しさを覚えたものか、身震いをするニルヴァーナ……
そんな
「ああ、忘れない内に言っておくことがあった……これから会う“そいつ”は見かけの上では『人形』のように見えるが、その心の内に秘めているのは“夜叉”か“修羅”だ、せいぜい―――頭の片隅にでも、覚えておくことだな。」
外見が『人形』の様には見えても、心の内に秘めしその“闇”は得体の知れない魔物を飼っていると言う……そして、その者が棲み家としている『お堂』に一歩足を踏み入れた途端に―――
何者だ……?
何者か……だが、いるな―――
この……薄仄暗い空間の向こう側に————
自分の領域を侵されたか―――とでも言う様に、張り詰めた気がニルヴァーナを包み込む、
そして薄仄暗い室内に、次第に目が慣れてきたか―――
この『お堂』の奥に居座る……
なッ……!
この者―――!!
その者は、見かけは『人形』のようだ―――と……
確かに、その場に収まっていたのは、ニルヴァーナも息を呑むくらいの“美しさ”……
いや―――この
『烏の濡れ羽』をした長髪
『
面持ちには未だ幼さ、あどけなさを残し―――つつも……
「リリア―――よ……そなた、私を
「
「お前は……この者の事を、『その心の内に秘めているのは“夜叉”か“修羅”だ』と、言っていたが……こやつの内に潜んでいるのはそんな生易しいモノではないぞ!」
「ほほぉ~う? それじゃ、何に見える―――」
「この私が……
その途端、『羅刹』と称された
むおっ?!
いつの間に……!!
気が付けば、いつの間にか懐に入られていた……
『人形』の様な、可憐な面持ちを崩さないままに
一切の闘気――― 一切の殺気―――
も、漂わせぬままに……
それに、ニルヴァーナにしてもここまで無防備に相手の接近を許したことはなかった……しかも、既にその手は、刀の柄にかかっている―――……
「待ちな―――ご挨拶はそこまでだ……『ホホヅキ』。」
「リリア―――この無礼者は?」
「こっちへ来る前に“文”を寄越してやったろ?」
「なるほど……それよりあなた、私の事をなんと触れ回ったの。」
「ハッ―――ハハハ!気に障ったかい……?」
すると、見えぬ剣閃が奔る―――と、共に、リリアの直前で飛び散る火花……
けれどやはり、リリアはその手に何も持ってはいない―――
なのに……
しかしそれこそが保有者の気を練り上げることで創り出される“万能の盾”……『晄楯』
すると、これ以上無駄なことだと判っているからか、ホホヅキはその人形の様な
「それで、私に何用です。」
「以前言っていたように、迎えに来たんだよ。」
「む??こ……この者を仲間に加えようと言うのか?」
「話が纏まっておらぬようですが。」
「だぁ~いじょうぶだってえ~こいつも嬉しさ余ってて、照れてんだよ。」
「お―――おい……大丈夫なのだろうな?本当に……」
「あんたも心配性だなあ?ホホヅキの実力は出会ってからものの数分で判っただろう?」
「む……う―――まあ、言うべくもないが……」
「煮え切らぬ態度ですね、判りました、斬りましょう。」
「まあ~~抑えろって、祝いの門出を流血沙汰にしてどうしようってんだい。」
「……まあよいでしょう、あなたが実力を買うほどのようですからね。」
意外に、自分がこれまで知ってきた常識など所詮は『
この当時では
それはそれとして―――
「ふむ……これで都合3人目となるか―――」
「そうだな……それに、これから色々やるには最低あと一人は欲しい。 なあホホヅキなにか当てはあるか?」
「ここより南へと下った辺りに『盗賊』がよく出没するとの話しです。」
「ほぉう……『盗賊』―――」
「なんでも、その『盗賊の首魁』は“忍”なる
「猫人か―――……」
「どうしましたか?よもや怖気づいたとでも―――」
「いや……“もしかしたら”―――と、思ったまでだ。 その者、私も知っている者と同じであれば用心に越したことはない。」
「なぁるほど―――だが、多分そのままズバリ―――“ドンピシャ”だと思うぜ。」
「なに?本当か?ふむ……よし、ならば―――この私が“囮”となろう。」
「囮……」
「私には“
「フッ―――ウッフフフ……中々に愉快な発想をする方のようですね。」
「気に入ってもらえて何よりだよ―――」
「私としては、どの部分を気に入られたのか気になる処だが……まあいいだろう。」
こうして、新たなる仲間を得―――また新たなる仲間を求めての旅路が始まるのでしたが……あの『
ただ、その最初は最悪だったとしても同じ時を紡ぎ合っていくに従いその関係性は濃密になって行ったのは歴史が証明していたのです。
そしてやはり……この後、邂逅した存在と言うのも―――
「ふむ……なるほどな、なぜそなたがこの地で名を馳せたのか、得心が行った。」
「チ……この私の正体を暴くためにあんたが囮になるとはね。」
なぜ……『猫人』の獣人がこの街道でその名を馳せさせたのか……
実は、その者は『猫』ではなく、正しくは『黒豹』だった―――
『漆黒』の長髪に―――
『瑠璃色』の眸―――
『黒豹』の耳と尾を持つ―――
「だが―――!今宵は新月……星の明かりも届かぬこの深き森の中で、“影”に―――“闇”に同化する私を捉え切ることは不可能!!」
そう言うなり、黒豹人の『盗賊の首魁』は闇の
黒の忍装束に身を包み、一切の気配を断った存在が突如として頭上から舞い降りる……
≪影殺;修羅道≫
非情なる刃は、鬼人の戦士の身に、突き立てられる事となる……
だが―――…………
つづく
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