第27話
“未明”によるダーク・エルフの襲来により、一時的にエヴァグリムの城下街は混乱の
けれど……そこにはすでに―――
「(!)何者だ!お前は―――」
「この私が、何者であるか―――そんな事は
『緋鮮のドレス』に『黄金の甲冑一式』、そして『黄金の剣』……その“有り様”に、アウラは思う処となっていました。
「(なんだ……この者は―――まるで……まるで、“あの存在”と同じ―――この私も……幼い頃に
かの……創作話の序盤に
『その者、鬼人であると言えどその心に大志を抱き、さある“智慧ある者”の助言を賜りながら世界を“
ただ……その者、鬼人であると言えどその角を持たず、その代わりとして目鼻立ちよく秀麗であり匂い立つ色香を放てり。
そして鍛えられたる“武”もさながらにして、
流れるような
『緋鮮のドレス』、『黄金の肩当』『黄金の胸当て』『黄金の籠手』『黄金の腰当』『黄金の軍靴』の甲冑一式に、『デュランダル』と銘打たれし『黄金の剣』を
その者の名は『ニルヴァーナ』……しかして、この日この時を
#27;【
―――と、自ら名乗りたる。』
* * * * * * * * * *
状況がこうなるその僅か以前―――
「(宙空に飛竜が舞っているな……)それじゃ、オレはこれから【
「無理はしないでね―――」
「ご武運を―――」
「(……フッ)〖大いなる
教えられた通りに“式句”を唱えると、その場に焔が巻き上がり……そして顕現したるは伝承通りの容姿をした、“女性”でありました。
「(……)ふむ―――状況は好ましくはない……が、面白くはなってきているようだな。」
「―――あなたが……」
「そなた―――ノエルの娘だな。」
「はい!けれど……私の事をどうして……」
「そなたの出生の折、私も現場に立ち合っていたのでな……」
「(あ……)では―――」
「うむ……予定より早い陣痛に破水―――それを知ってしまった時、流石の私も肝を冷やしたものだ……だが、“ある方”の取り成しもあってな、母子共に大事なくて良かった……と、言う処だ。」
直接お会いした事もなかったのに、自分の出生時の事を知っていた……かつての仲間の慶事ではあったものの、同時に危険性を伴った出来事に、例え【
が、そこはやはりノエルの母が語ったように『とある方』の取り成しもあり、母・娘共に生き永らえる事が出来た―――と、言う事だったのです。
それは、それとして―――
「では、【
「いや……それは出来ぬ―――」
「(!)どうして……」
「私は……そなたからの、そなた達からのその願い、聞き届けてやることは、出来ぬ……“同じ様な願い”を、重ねて受ける―――と、言うのは、な。」
「(!)私と……同様のお願いを―――既に?!それは一体……誰なのですか?!」
「違う種属……同じ性別……この私に叶わぬ“想い”を
『ローリエ』……私は、お前の想いに答えてはやれなかった―――
「それであるにも
「そんな……では、かの王国の異変は、その方の代より既に……」
「彼女の時代では、小さな萌芽でしかなかったのだろう……が、ローリエはその危険性を予見していたのだ。 そう言う事なのだ……『こうなる事』は、目に見えていたのだ。」
そして……私は蘇えった―――“緋鮮の記憶”と共に……
その初仕事が、ローリエ……お前から託された事とは、皮肉と言うものだな。
「ゆえに私は、そなたからの頼みは聞けぬのだ。 そこは理解をしてくれ―――ノエルの娘よ……」
過去の存在であり、現在に於いては生きてすらいない―――言わば“霊体”……しかし、怨みがましく
そしてオーガの術である『鬼道』を基に、依り代を媒介にして降霊する……こうして古代の英雄は、現代のこの世に蘇えったのです。
* * * * * * * * * *
そして―――……
「そなた―――【
「ほう―――そなたとは初見のハズであるのに、この私の事を古代の英雄と間違えてくれるとは……少々、
「(……)“違う”―――と言うのであれば、なぜ私の前にはだかる。」
「逆に問おう―――闘争を起こす気もないのに、なぜにあのような啖呵を切った―――私には、その事が不思議でならぬ。」
「なに―――?!だがしかし……あの場には、そなたの様な者はいなかったはず……」
「その場にはいなくとも、私には見れていたのだよ……肉体は失ってはいるものの、その魂は不滅―――そうした術をこの私自身の『盟友』の手でしてもらったのだからな……。 だから―――“視えて”いた、霊体となったこの私には全ての“導き”が手に取る様に判るのだ―――!」
“存在”の否定―――まではするものの……
その証言することで、判ってしまった……
間違いない……【
ならば―――託した方が良いのか……?
シェラザードの国を護る為に、一肌脱ぐつもりであった私の代わりを……
つづく
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