第17話
人、知れずの処で交わされた『
それとは知れず、今日も今日とて―――
「シェラっ―――あなたったらまたっ……ヒヒイロ様が迷惑がってるでしょう!?」
「そぉ~んなことないよね~~(ムギュ) ヒヒイロもぉ―――こぉ~んな“たわわ”なものに挟まれて、気分は極楽でしょ~う?(ムギュ・ムギュ)」
「たっ―――頼むから……流血沙汰にはしないでくれよ?」(←けど、ちょっと嬉しい)
「しえぇ~~る゛あ゛ぁ゛~~! 表ぇ出なさいっ―――!そこで決着つけたりますっ!!」
“いつも”繰り広げられる喧噪―――
その日も、シェラザードが自慢としている豊満なモノをヒヒイロカネに押しつけクシナダからの怒りを買っていた―――の、でした……が?
「(―――えっ……どうしたの?どうして―――そんな瞳を……)」
“それ”は、常日頃……
けれど、しばらくすると―――?
「いやぁ~ん☆コワいぃ~ん☆(ムギュムギュ) ねえ~え、ヒヒイロぉ―――(ブリッ☆) あぁ~んな暴力女と、こぉ~んな清楚なワ・タ・シ……どっちがイイ~い?(上目遣いでブリブリ☆)」
この後―――説明不要……の、第○次大戦が勃発することになるのでしたが……
「(は・あ……危なかった―――なってないなあ……私も、これから“こんなこと”が出来なくなる……そう思っちゃうと―――)」
“そう”―――思ってしまったからこそ、ついぞ寂しくなってしまった……
それを
(ムヒョッ?)「(あれ?彼女……どうしたんでしょうね?“いつも”は無理していないのに―――“今は”無理しているような―――??一体、なにがあったんでしょう……)」
―――とは言え、それでも『計画』は進められていき、“ある時点”をして……
そして――――――…………
#17;“サヨナラ”も云わないで
「すみませ―――ん!アウラ様いますか―――!!?」
「どうしたのだ、一体……」
“彼女”が所属するクランの『男性剣士』―――ヒヒイロカネが、ダーク・エルフの『姫君』であるアウラの処へ息せき切って駈け込んで来た……
しかも血相を変えて―――の、状況にアウラは……
「なにをそんなに慌てている、ヒヒイロカネ―――」
「じっ……実は――――――」
その一報を聞くなりアウラさえ色をなした……
だから彼女はヒヒイロカネに誘われるがまま一路クラン部屋―――にではなく、“彼女”が寝泊りをしている『宿泊先』へ―――
するとそこには……
その『宿泊先』こそシェラザードのものでした……つまり、本来の部屋主のいない部屋に―――すでに何があったかを想像させる状況……
そして―――『あるモノ』を
「ササラ殿!ここで一体なにが……?!」
しかし【黒キ魔女】は、返事を返さない……
そこですぐに、察するべきを察した―――けれども……
* * * * * * * * * *
事の発端はその日の始まりにありました。
今日も自分達の成長のために―――と、PTを組んで
「どうしたんだあ~?シェラのヤツ……遅ぇなあ。」
「(はあぁ~)全く……また、どうせどこかで不要な買い物をしてるんでしょう。」
(ムムウ~)「折角稼いでも全てシェラさんの胃袋に収まってしまうのですからねえ~?それにシェラさんとクシナダさんとの抗争で待合い喫茶や酒場、ギルド等の修繕費の請求……総て私の方へと回ってくるのですよねえ~?」(ムヒ!ムヒ!)
「えっ……そうなの?」
「(うっぐ……)そのことについては……申し訳次第もございません―――でっ……ですがっ!元を
「さすがの私も、“この事”は計算外だったのですぅ。(ムヒ…) そもそもが―――です……私があなた達のクランに加わった理由……」
「ああ~~確か……50億リブル―――だったっけか?それだけの額を共に稼いでくれる……って話し―――」
「それがよもやッ!私の貯金まで浸蝕しようとはあぁっ!」(ムヒヒヒィ~)
しかしながら―――いつまで経っても現れない……そこで思う処となった仲間達は“彼女”の宿泊先に詰めかけたのです。
ところが……もう既にその部屋は
ただ―――この部屋に、たった一つだけ遺された“痕跡”。
“それ”こそがこの部屋が“無人”、“無使用”ではなかったことを、如実に物語っていたのです。
それが書机の上にあった2通もの『書置き』と―――その2通を風に
その『あるモノ』を、クシナダは以前にも目にしていたことがありました……
そう―――自分がエルフの上級貴族の一人と
「これ……あの時シェラがしていたものだわ。」
「(うん?)あの時―――?」
「ええ―――ほら、ほんの少し前、私とエルフの上級貴族との間で
「(……)けれどその時、この装飾具のことまでは話してくれませんでしたよね?」
「ええ―――あの時丁度、アウラ様が来てくださって……それにシェラは、上級貴族を
「はは―――あいつのしそうなことだ。」
「(あ、れ……?)そう言えば―――その裏路地から出てきた時には、耳を飾っていた装飾具は付けていなかったような……?」
10カラットはあろうかと言うような“
しかし、その装飾具の正体を、知っている者が一人だけいました。
「―――そうでしょうね、“それ”は滅多と人目に触れさせていいようなものではありませんから……。」
「(えっ……?)ササラ―――?」
「知っているのか?“それ”が何か……!?」
「少なくとも、あなた達二人よりは知っていますよ。 なぜならば、“それ”と同じものが私の家にもあるのですから。」
「(―――ッ?!)どういうこと……?」
「なぜ……ササラの家に?」
「それでは少し、昔のお話しをすると致しましょう……あなた達二人も『緋鮮の記憶』のお話しは知っていますよね?」
「ああ―――うん……」
「それとこれと―――何の関係が……?」
「その内の登場人物で【美麗の森の民】と言う方の事を、ご存知ですよね?」
「ああ―――確か……その登場人物、作中で仲間の一人を
「そう……その、命を救われた仲間の名は【韋駄天】―――私の母上になります。」
「(!!!)“実話”―――?!」
「そして、【美麗の森の民】と呼ばれた方の名は『ローリエ』……その当時の、エヴァグリムの王家関係者だと、聞いています。 そしてローリエなる方の生前に、私の母上であるノエルに譲渡されたモノこそ『エヴァグリムの誇り』―――母上は、ローリエ様から譲られた時こう言われたそうです……。
『この装飾具は我が王家の誇り―――エルフの誇りと同じこと、それを
―――と。」
「そん……な―――では?では……シェラは??!」
「ここに遺されている2通もの書置きは、あなた達には決して読めないでしょう……だってこれはエルフ語なのですから。」
「一体……なんて書かれてあるんだ?」
「よろしいのですか?お読みをしても……知ればきっと、後悔することになりますよ―――」
今現在をして、220余年を生きる【黒キ魔女】―――だからこそ、難解と言われているエルフ語で綴られた“文”の内容が判っていました。
そしてそれは、紛れもなく『不都合な真実』がその中に散りばめられている事を知るのです。
つづく
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