第64話誤解

「え?ラクター先生のお父様ですか?」


そうだとビルド伯爵が頷いた。


何故か怯えるビルド伯爵を見上げる…ふっと目をそらされた。


全然ラクター先生に似てない…


先生はもっと自分に自信満々って感じだったがビルドさんは自信なさげな感じがする。


「ビルド様、ラクター先生にお世話になりましたとお伝え下さい」


私は伝えられなかった言葉をビルドさんに託した。


「え?ラクターに?」


ビルドさんが驚いて顔をあげた。


「はい、挨拶も出来なくて辞めちゃったと聞いたので…」


「マリー様は娘に…怒ってはいないのですか?」


「怒る?」


え?何かされたっけ?


私は先生との会話を思い出す…


んー…シリルの顔とかお父様とトーマスさん見てたからなぁ…なんかよく覚えてないや


「怒るような事は言われてませんよ」


たぶん!


少し考えてそう答えると


「マリー…お前の気持ちはわかった…もう部屋に戻りなさい」


「は、はい」


お父様が何故か誇らしそうに目を細めてこちらを見つめると部屋を出るように言われてしまった。


「マリー様…本当にお優しい…」


トーマスさんまで目頭を押さえながら何か呟く…どうしたんだ?この二人?


ビルドさんは何か考えているのか難しい顔をして黙ってしまった。


なんか大人の難しい話なのかも…ここは早めに退散しよう!


「では、失礼します」


私はペコッと頭を下げてそそくさと部屋を出ていった。



マリーが部屋を出ていくとトーマスは足音でマリー様が離れるたのを確認する。


「お部屋の方に戻られたようです」


トーマスが笑ってジェラートを見ると…


「マリー様はあんな仕打ちを受けてなお、あの娘を罰しないで欲しいと言いに来たのですね…しかも気にかけまいと遠回しに…」


トーマスがそう呟くと…


「あんな幼い子が…なんと聡明で慈悲深い…本当に娘のした事が恥ずかしいです」


ビルドはガクッと膝を床につけた。


「マリーにあんな事を言われてしまったら、君を罰したりしたら嫌われてしまいますね」


ジェラートがはぁとため息を着くのをビルドはハッ!として見つめた。


「今回の件は…厳重注意としておく。その代わり君から十分に娘を叱っておきなさい。私も偉そうな事は言えないが…それが親としての務めだ!それに気づかせてくれたのもマリーだったなぁ…」


ジェラートは昔を思い出し懐かしそうな顔をしていると


「ありがとう…ございます!ジェラート様に…そしてマリー様に感謝致します!」


ビルドは親子の寛大な処置に心から感謝して深々と頭を下げ続けた。




お客様が帰るとお父様とトーマスさんが笑いながら部屋にきた。


なんだかとても機嫌がいい、いい事でもあったのかな?


部屋にいた時はなんだか怒ってるようだったのに…


不思議そうにその顔を見上げると


「本当にマリーは私の天使だ…」


お父様はそういうと私を抱き上げ強く抱きしめた…


私はお父様の態度に首を傾げるしかなかった…

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