第43話変な子

みんながを出ていってしまうと部屋がシーンと静かになった…


セドリック先生は人が居なくなりほっとするとベッドの近くに椅子を持ってくる。


私が見える位置に座るとセドリック先生がこちらを向いて様子を伺っている。


「調子はどうだい?問題ないなら少し話せるかな?」


「あい、だいじょうぶです」


優しい声に私はコクっと頷くと…


「さっきの〝なるほど〟と言ったのはどういう意味なのかな?ちょっと気になってね…」


セドリック先生の言葉に先程のお兄様とシリルの事を思い出してニヤリと笑う。


「ふふ、せぇんせーおにいちゃまとシリルをみてどうおもいましたか?」


一周驚いた顔を見せたが考えながら言葉を発した。


「二人共あまり似てないけど…(マリーと)仲が良さそうだね」


先生の答えに思わず笑顔がこぼれる。


「でしゅよね!おにいしゃまとシリルはなかよしなの~」


「テオドール様とシリル様が?」


セドリックは首を傾げた…あの二人が…というよりマリー様に対しての愛情が深いように感じていたからだ。


「わたしはわかるの!あのふたりはしゅきあってるって!」


「そう…かな?まぁ兄弟として家族愛はあるだろうけど…それよりも君を心配してる気持ちの方が強く見えたけど…」


「せぇんせーはわかってないね!しゃっきおにいしゃまがおでこにチュッってしたでしょ?」


うんうん、とセドリック先生が思い出し頷く。


あれは自分の物と言うようなマーキングに見えた。


「そのあとシリルがおなじとこにチュッってしたの!」


「ああ…」


牽制するようにね…


セドリック先生が苦笑すると


「あれはふたりがわたしをちゅかってかんせつキスしたのよー」


マリーは自信満々に答えた。


そんなマリーのキラキラした顔にセドリック先生は呆気に取られて言葉が出てこない。


間接キス…ってテオドール様とシリル様が?


いやどう見てもあれはマリー様が好きとしか思えなかったが…


そう思いマリー様を見るが当の本人は自分の考えが正しいと疑わない表情をしている。


「そ、そうなのかな?僕は…マリー様が好きでしてるように見えたけどね…」


セドリックが伺いながらそう言うと


「ちっ!ちっ!せんせーはやっぱりわかっちぇない」


指を動かして生意気な顔でふっと笑った。


「わかってないかな?」


「わかっちぇないねーうちはみんなラブラブなのよ」


「ラブラブ…」


どう見てもマリーにみんな愛情深い気がするが…本人がこの調子ならきっとみんなの気持ちには気がついてないのだろう


セドリックはあえてその事には触れずに笑った。


少し興奮気味のマリーを落ち着かせると


「さぁもう少しおやすみ…まぁ明日には元気になってその笑顔をみんなに見せてあげるんだよ」


「はぁい…」


トントンと布団を叩いてやると目がトロンとなってくる。


そのまま目を閉じて数分も経たずに寝てしまった…


布団をかけ直すと気持ちよさそうな寝息が規則正しく聞こえる。


「変わった子だ…」


セドリックはふっとつぶやくとベッドから離れた。

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