第36話兄弟

「うー!おにいちゃま…シリル…」


テオドールとシリルはマリーの寝言に目を覚ました。


「ん…マリー?」


「マリー?」


テオドールがマリーを見るといつも笑っているその顔は歪み何かを我慢するように眉間にシワが寄ってギュッと自分の服を掴んでいた…


「マリー…くるしそう…」


いつの間にかシリルもマリーのそばにきて顔をのぞきこんでいる。


「怖い夢でも見ているのかな…」


力の入る眉間を優しくさすってやるとマリーの顔の表情が少し緩くなった。


「おにいちゃま…」


するとマリーは自分の名を呼び嬉しそうに笑った。


夢の中でも自分の事を見くれる事に嬉しさを覚える。


「おにいちゃま………すきな…ん…でしゅね…」


むにゃむにゃと言いながら何か言っている…聞こえる単語を組み合わせると…


「僕が…好き?」


「はい…」


マリーがタイミングよく笑って返事をした。


「マリー…」


嬉しさのあまり言葉が詰まる、するとシリルが羨ましそうにこちらをみた。


「おにいちゃま…いいなぁ…」


すると…


「シリル……ん……しゅき…」


「あっ!ぼくのなまえ…」


シリルの白い肌が赤く色づく。


「でも私の方が先だったね」


喜ぶシリルを見て微笑むと兄らしからぬ牽制をしてしまった。


シリルが来てからなんかおかしい…こう胸がムカムカする。


自分の言葉にシリルがシュンとするのがわかった…


「ま、まぁマリーはみんなに優しい子だからね…」


しょうがない…お父様にも優しくしろと言われているし…シリルの頭をポンッと撫でた。


するとシリルが驚いて顔をあげ、こちらをじっと見つめる。


「へへ…マリーににてる…」


撫でられた頭をそっと触って嬉しそうな顔をした。


グッ…


まぁまぁ可愛いじゃないか…マリーはもちろん可愛い妹だが…弟も悪くない。


しかもマリーに似てるか…


「よし、シリル…よく聞くんだ」


シリルの顔をじっと見るとシリルも真剣な顔をして自分の話をしっかり聞こうと近づいてきた。


「いいか、これから私達は兄弟になる。シリルはマリーの弟だが男だ。男は女の子を守ってあげないといけないんだ」


「おとこ…」


「そうだ、シリルにとってマリーは姉だが大切だろ?」


コクコクと勢いよく頷く、その様子にニコッと笑うと


「マリーは大切な私達のきょうだいだ私達が守るんだ。出来るか?」


「できる…マリーすきだから」


「うん、私もだ。だから強くなれ!シリルに出来ないことは私がやるシリルも大切な弟だからね」


「つよく」


「ああ、これからはお父様ももちろん私もお前を守る!だからシリルもマリーを守れるよう強くなるんだ」


「うん!」


「よし兄弟の約束だぞ…あと…マリーに手を出したらダメだからな」


「て?マリーのことたたかないよ?」


シリルは手を出すの意味が分からないようだった。顔をしかめて首を傾げている。


「うん…それならいいよ。でも今の言葉覚えておくんだよ」


「うん!」


「シリル、返事ははいだ!」


「はい!」


シリルの反応に頷く。


よし、コレでシリルがしっかりすればマリーを守る手も増えて、マリーも心配な弟にそんなに構うことが無くなるだろう。


そうだよ、私が面倒見てやればよかったんだ。


テオドールは胸のムカムカが少し収まったことで眠気がまた襲ってきた。


見ればシリルも眠そうに目をこすっている。


「さぁ寝よう…シリルもおいで…」


シリルを引き寄せて布団をかけてやると、温もりにすぐに眠りに落ちていった…

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