第18話悪役令嬢マリー

私は夢の中でテオドールが王子と主人公(男)に挟まれて…どちらを選ぼうか悩んでいるシーンに出くわす。


ハラハラしてる振りをして口元を隠す…その下はニヤニヤ笑ってその様子を見守っていた。


「マリー!そんなところで何を睨んでいる!自分の兄が王子の私に選ばれる事がそんなに悔しいのか!」


よく顔の見えない王子から罵倒が飛ぶ…


えっ?


私はなんの事だと固まるが…体が勝手に動いて行く…兄の側までカツカツと歩くと…


バシンッ!


兄のテオドールの綺麗な頬に平手打ちをかました!


えっー!!


心の中では慌てているがマリーの体はその様子を蔑んだ目で兄を見下ろしている。


「あなたみたいなのが兄とは恥ずかしい限りです!この事は父と母に直ぐに報告致します!いいですか…王子は私の婚約者、男のあなたには世継ぎなど作れない!しかもあんな女の息子など…王子は私と結婚する運命なのです」


マリーの口はそう吐き捨てると兄のテオドールを置いてその場を去った…


なんだこの最悪な女!って私だけど…


マリー……あれ?マリー!?テオドールの妹のマリー!


あー!王子の婚約者で当て馬のマリー!王子の事を愛してもいないが兄に渡すのが癪で邪魔する可愛くない妹のマリーか…


猫神様…悪役令嬢はいらないって言ったのに…


私はため息をつくと…ハッ!と気がつく。


いや待てよ!これはチャンスだ!だってマリーなら王子とお兄様とまだいない弟と主人公の恋をすぐ近くで見ることが出来る!


しかも私がみんなとイチャつけば…ふふふ…主人公が焦って好感度イベントがドンドン起きるんじゃ…


私はそれを考えるとニヤニヤが止まらず安心して幸せな気持ちで深く眠りについた。



起きるといつの間に寝ていたのか朝になっていた…


夢のことは何となく覚えている…改めて周りを見ると…


そうだ…この屋敷、王子とテオドールお兄様が初めて会うシーンのバックに描かれてた壁紙に似てる!


じっと壁を見つめると…


確か、お兄様と王子が初めて会うのは学園に上がる10歳の年。ってお兄様今いくつだろ?


見た感じ10歳のくらいかな…でもしっかりしてるしもっと上かも…もしかしてもう王子と会ってる?


私は知りたくてソワソワしていると…


「あらマリー様おはようございます。そんなにソワソワして…あっわかったおしっこですね!確認しましょうね~」


リアズが起きていた私に気がついて声をかけてきた。


あー!あー!まだおしっこしてないから大丈夫!!


「あー!あー!」


やめて~と声を出すがリアズは構わずにオムツを外そうとする…すると…


トントン…


扉がノックされた。


「あっ、はーい!マリー様ちょっと待ってて下さいね」


リアズはオムツを直すと扉へと向かった。


ほっと息を吐くと…


「マリー…おはよう」


テオドールお兄様が微笑んで顔を覗かせた。


あっさっきのノックはテオドールお兄様だったんだ、助かったよ~さすがお兄ちゃん!


私は感謝とばかりにテオドールに手を伸ばすと


「抱っこしてもいいかな?フローラお母様と父にマリーを連れてくるように言われたんです」


テオドールがそうリアズにいうと


「テオドール様マリー様は私がお運び致しましょうか?」


一緒にいていたトーマスが声をかけると、テオドールは首を振る。


「大丈夫、マリーは私が運びます」


テオドールがしっかりと答えるとリアズは私をベッドから抱きかかえてテオドールお兄様に渡した。


なんだか昨日より顔が凛々しくなった?


私はお兄様の顔を見上げるとお兄様は嬉しそうに微笑んだ、最近は本当によく笑顔を見せてくれる。


そうして強く離すまいとしっかりと抱きかかえてくれた。

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