夏野菜のカレー

 スーパーで食材を買い終えた僕達は、部屋に戻り、早速晩ご飯の準備に取り掛かる。


「さて、じゃあ今日はこよみさんのリクエスト、夏野菜のカレーを作りましょう」

「うん!」


 早速皮をむいた玉ねぎ一個をみじん切りにして……。


「こよみさん、じゃあこのみじん切りをチャツネにしてもらっていいですか?」

「あ! チャツネ言うたらハンバーグの時に作ったヤツやね! まかして!」


 一度作っただけあって、こよみさんはフライパンを用意すると、手際よく玉ねぎを炒め始めた。


 じゃあ僕は、他の野菜を切っておこう。


 まずはトッピング用の野菜。

 ズッキーニを輪切りに、カボチャは五ミリほどの厚みではす切りに、パプリカは幅二センチの短冊切りにする。


 次に一緒に煮込む用の野菜を。

 あらかじめ塩茹でしておいたオクラは半分に、玉ねぎはくし切りに、ジャガイモは一口サイズの乱切り、カボチャはトッピング用に切ったものの半分程度の大きさに切る。

 あ、オクラ二本はトッピング用に切らずに残しておかないと。


「こよみさん、隣、失礼しますね」

「あ、うん。耕太くんも炒めるんか?」

「はい」


 大きい鍋を火にかけ、サラダ油を引いたら最初に牛肉の細切れを投入する。

 なお、牛肉なのはこよみさんからのオーダーだ。


 焦がさないように炒め、色が変わったら玉ねぎ、ジャガイモ、カボチャを入れてさらに炒める。


 野菜に油がなじんだら、水とオクラを加え、具材が柔らかくなるまで煮込む。


「耕太くん! チャツネできたで!」

「ありがとうございます。これもハンバーグと同様、カレーにコクを出してくれるんです」

「へえー、すごいんやなあ」

「はい。西洋料理では基本になりますね」


 さて、しばらく煮込んだけど、野菜は柔らかくなったかな。

 僕は菜箸でジャガイモに突き刺すと、するりと簡単に刺さった。

 うん、これでオッケー。


 一旦火を止め、カレールウを投入する。

 僕は固形タイプよりフレークタイプのほうが溶けやすいから、こっちを愛用している。

 ということで、ルウを投入してよく混ぜたら、もう一度火にかける。


 そして。


 そこへさらにカレー粉小さじ一、インスタントコーヒー、砂糖をそれぞれ大さじ一、ヨーグルト大さじ二、鷹の爪一本、コンソメ一欠けら、オイスターソース少々、そしてこよみさんに作ってもらったチャツネを加え、よくかき混ぜる。


「はわああ……インスタントコーヒーなんか入れるんや! それに砂糖も!」

「はい、そうすることでコクが出るんです」


 しばらく弱火で煮込んで味がなじんだら……。


「こよみさん、どうぞ」


 僕は小皿にルウを入れ、こよみさんへと渡す。


「うん……はわ! メッチャ美味しい!」

「あは、良かった。じゃあ僕も……」


 こよみさんから小皿を受け取り、僕も味を確認する。

 うん、バッチリだ。


「これでルウは完成。じゃあ、次にトッピング用の野菜を炒めましょう。こよみさん、お願いできますか?」

「もちろん! せやけどその……耕太くんと一緒にしたいなあ……?」

「当然、一緒にしましょうね?」

「うん!」


 お皿にトッピング用の野菜を乗せ、ラップをしてレンジで加熱する。


 次にこよみさんがフライパンに火をかけ、手際よく油を引いたら、そこに僕が加熱した野菜を並べて、と。


「既に加熱してありますから、油をなじませる感じで」

「うん! せやったらもうひっくり返してもええかな?」

「ええ、大丈夫です」


 こよみさんは菜箸で野菜を返し、もう片面を同じように焼く。


「うん、バッチリですね。じゃあ後はお皿に盛り付けましょう」


 あらかじめ炊いてあるごはんをお皿に盛り、カレールウをかけたら……。


「はい、こよみさん。野菜の盛り付けをお願いします

「うん!」


 こよみさんが綺麗に野菜を盛り付け、夏野菜のカレーの完成!


「さあ、テーブルに運んでご飯にしましょう」

「うんうん! あ、あと……」


 こよみさんは冷蔵庫からお約束の缶ビールを取り出し、僕達はテーブルへ運んで席に……。


「今日はどう座りましょうか?」

「ええと……今日も隣同士がええなあ……」


 こよみさんはおねだりするように上目遣いで僕を見る。

 はい、最高です。ありがとうございます。


「じゃあ隣に失礼しますね」

「うん……それと、また手つないでも、ええかな……?」

「もちろんです」


 僕は右手でこよみさんの左手を握る。


「あ……えへへ……」

「じゃあ食べましょうか。せーの」

「「いただきま……」」


 ――ピンポーン。


 ……イヤな予感しかしない。


「……耕太くん、居留守使おか」

「……そうですね」


 僕達は玄関のチャイムの呼び出しをあえて無視することにした……んだけど。


 ――ピンポンピンポンピンポン。


 うわあ……チャイムを連打してくる。


 さらに。


 ――ドンドン!


「上代くん! ピンク! いるんでしょ!」


 よりによって先輩ですか……。


「あああああ! もおおおお! 何やねんアイツ! 近所迷惑なことしおってからに!」

「……埒が明かないので、出てきます……」


 渋々僕は玄関へ行き、ドアを開けた。


「先輩、近所迷惑……」

「上代くん……ピンクもいるわよね? ちょっと上がるわよ」

「わ!? ちょ!?」


 先輩は有無を言わさず部屋へと上がりこんだ。


「な、何や何や!?」

「大事な話があるの」


 いつになく先輩の真剣な表情を見て、僕達は押し黙った。


「大事な話、ですか……?」

「ええ」


 先輩の言う大事な話って一体……。


「……怪人イタチソードについてよ」

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