第10話 - 主席 -

 屋上へ向かうレミを追跡する。階段を上がっていく。いつしかのように陰で成り行きをこそこそ見守る男子が数名いた。彼らの存在はデフォなのだろうか。


 最後の階段を進み終え、レミが屋上へ出た。その後をカズハも堂々と進んで屋上へ出る。レミが2人通って、見守り組の男子はぽかんとしていた。夕焼けの元、すでに男子が一人、待っていた。


「あ、あの! 今日はわざわざ呼んじゃってごめん!」


「って、え?」


「え?」


「え?」


 声をかけだした男子が止まる。レミが2人いた。レミ同士も驚いて、2人とも同じ顔をしている。


「ちょっと、あなた、なんですの?」


「あなたこそ、なんですの?」


服だけ違ったが、背も髪も声も全く同じのレミだった。


「え、あの、双子、だったんですか?」


男子が慌てて質問する。


「いいえ、違います。彼女はニセモノですわ」


「失礼な。こちらがニセモノです。私がレミです」


「ふざけないでいただけます?」


「それはあなたでしょう?」


「???」


「それよりも、何かご用があったのではなくて?」


レミに化けているカズハが男子に振る。


「あ、いや、その、また今度で」


男子が帰ろうとする。


しかし――


「お待ちになって。交際を申し込むつもりだったのでしょう?

 私達のどちらが本物か、当てられたら、承諾致しますわ」


「え!?」


 本物のレミが突然の提案する。男子が驚きの声を上げた。カズハも思わず声を出しそうになったが、なんとかこらえる。


「私のことを慕ってくださるのですから、見分けれられ当然、ですわね?」


「な、え、そ、それは……!」


「ご、ごめんなさいーー!」


男子はダッシュで逃げてしまった。



「はぁ、結果的に、相手を傷つけずに済みましたから、

 感謝、といったところでしょうか? ニセモノさん?」


意外だった。不快感を示すならいざ知らず、感謝されるなど。不測の事態も冷静に対応し、混乱するどころか、咄嗟の判断でむしろ自分の都合のいいようにしてしまった。あの男子が答えられず、逃げるだろうとまで読んでの行動を確信して行った様子が伺える。

 

 そのまま立ち去れば正体がバレもしなかっただろうが、このレミという人物に興味を持った。


「ふふふっ、私が誰だか当てられたら、あなたに投票するわ。

 私は誰にでもなれる。私こそが、変幻自在」


「投票? ふっ、野外活動のリーダーのことですの?

 あれに興味はありませんわ。エレガントさに欠ける」


 ?


 言いつつ、レミは魔力を集中しだす。カズハをリーディングしている。本気で誰か当てるつもりだ。


「あなたは、後ろのほうの席の、銀髪のおキレイさんね。

 イマイチ存在感がなくて名前は知らないけれど」


「……正解よ」


 バキボキッ ベリベリッ


 骨格を元に戻し、顔の変装を剥がしウィッグを取る。しかしまた影が薄いと言われてしまった。というか、レミのオーラが高すぎる気がする。


「たしかにあなたは誰にでもなれるかもしれない。

 でも本当のあなたが私には見えませんでしたわね」


――!


 少し癇に障ったが、それは別して、きっちり当ててみせた。変装して要人の会議にも変わり身で出たことがあるくらい、カズハ自身でも変装は得意な部類に入る。並みの人間では意識をしてもなかなか見抜けない。


「しかしすごい技術ですわね。そこからさらに同じ服を着て、

 自分でなく他人に変装されたらまず見抜けません。

 混乱を招くので多用は避けるべきですわ」


そんなことは言われなくても分かっている。元々レミの器量を見るために軽い気分で試しただけだ。”変身の術”では見た目は同じでも、魔力の気質が本人と全く違うため即バレてしまうが、魔法で相手の魔力の気質をコピー、偽装して、姿を変装するのが、カズハの行う”変装の術”の正体だ。


「技能拝見のお礼に、先ほどの野外活動の件についてお答えしますわ」


「?」


 あなたは秘密は守れる部類の人間に入るでしょうから、

と前置きしたうえで、話し出す。


「実はカトリーヌ先生から、他の立候補者の挙手があっても、

 私も挙手をするように、と仰せつかっています」


――?


「したがって私にその気はありませんが、挙手は致します。

 投票で他の候補者が敗れれば、その程度の実力、ということでしょう」


それではと言うと、転移で一瞬で帰ってしまった。



 カズハも帰宅する。じき夕食時となったので食堂へ向かう。

すでにマーヤの姿があった。


「ねえ聞いてマーヤ、さっきレミがね――」


 言いかけてすぐに止める。いや元々言う気もなかったが、それ以前に明らかにマーヤの様子がおかしい。ふさぎ込んで、食事にまったく手をつけていない。


「……どうかしたの?」

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