第8話 - 様々な対立 -

 ウォーン! ウォーン!


 あくる日の授業中、急に校内へサイレンが響き渡る。教員が授業を中止し、教養科の生徒の誘導を始め出した。非難室へ向かうようだ。


――そういえば、北東の森でバケモノだか魔獣だかが出やすいとか

 言ってたかしら?


流れに沿って移動をしていたが、主に編入組の生徒の不安の様相が大きい。サイレン音が戦時中と同じ音だそうだ。


「きゃあっ」


やや向こう側で階段でバランスを崩したマーヤが声を上げていた。


「みなさん! 落ち着いて! 大丈夫です、順にいきましょう。

 マーヤさん、こちらへ」


「あ、ありがとう」


 先日のローザが声を上げて積極的に誘導を買って出ていた。次いで実戦科の面々も避難室に入ってくる。教養科とはまったく雰囲気が異なり、かったるそうだ。


「正直俺らが討伐にいきてえよなあ」


「ああ、早くプロになりてえぜ」


 正体不明の魔獣相手でも自信があるようだ。不安と怯えの教養科と違い、さすが実戦科といったところか。


 じきに職員から連絡が入り解決したとの報告を受ける。国の戦士が無事に討伐したようだ。キマイラとか聞こえた。かなり上級な部類にあたるが、城の近くでは多勢に無勢だろう。教室に戻る指示が出された。


「やっぱりローザさん――ね」


「ええ。本当に狙っているのでしょう」


帰りがてら廊下で女子のひそひそ話が聞こえた。


――狙っている? もしや、私の首?


クセで悪い方へ考えておいた。常に最悪の事態を想定するのが忍びだ。



「ローザ=バーバリーさんについて、ちょっと教えて欲しいの」


寮で夕食の時間にマーヤと一緒になったので聞いてみた。


「あ、ローザさん? すごく面倒見がよくて、頼りになるんだよ」


マーヤの評価は上々のようだ。先日お菓子を食べにも誘われていた。

 

「ただ最近ちょっと、はりきっているというか、ここだけの話なんだけどね?」


――出た! ここだけの話! もうマーヤに秘密は話せない!

 ではなく、


何やら、じきに来る野外活動でのリーダーの座を狙っている噂があるそうだ。リーダー選びは立候補者が複数いた場合、クラスで投票になると聞いている。


「レミ=マーガリンさんがクラス委員だから、

 すごく対抗意識を持ってるみたいだよ」


レミ=マーガリン。初日にカズハの仕草を注意してきた、留学生ながらクラス委員に先生から指名された女子だ。本校の編入生をリーダーにしてしまうと、他が委縮し、パワーバランスが偏ることを考慮し、外来の生徒の中から指名となったという。


「難しいよね。2人とも人気だし、実力もあるもんね」


 ひとまずカズハの首を狙っているわけではなさそうだ。クナイを手入れした後、安心して寝た。


-とある休日-


 カズハは里に一度戻ろうとしていた。というより、追い出された身なので、戻るというのかどうかは分からない。ノヴァルティアとは半日で往復できる距離だ。支給のカードでいけるところまで魔導車で移動し、そこから徒歩になる。


 やがて山中に入る。次いで縄張り内となるが、特に警告も攻撃も受けない。通してくれるようだ。


 里長に面会を求めるが、不在のようだ。代わりにシズクさんが用件を聞いてくれた。端的に言えば、忍具の追加が欲しかった。手裏剣クナイの予備、毒や薬の調合表、変装用具を所望した。しかし返事は色よくない。


「カズハ? そんなもの必要なくなるように、淑女を目指すのよ?

 まさか下宿先でも忍具の手入ればかりしてないでしょうね?」


「……そ、そのようなことがあろうはずがございません」


「……」


 紙を渡される。もう身内ではないのだから、どうしても欲しければ購入せよとのことだった。おそらくこうなることを長が予見していたかのような対応だ。拒否されないだけマシだったかもしれない。寮へ帰宅した。


「自分で作るか、お金を稼ぐしかないわ」



 翌日、普段のようにマーヤと登校する。学院近くまで来て生徒が合流しだすと、前にクリスの姿があった。エロ本の一件以来特に話してはいない。


「おはようクリス君。彼女にするならローザさんとレミさん、どっち?」


急な発言にマーヤは口元を押えてしまったようだ。クリスが振り向いた。


「……どちらもないとだけ言っておく。特にレミ=マーガリンはありえない」


 すぐに前を向き、スタスタと行ってしまった。相変わらずの真面目君のようだ。たしかレミとは同郷だ。何かあるのだろうか。


「もうカズハちゃん、急にドキっとさせないでよお」


 !


教室に入る前、なにやら男子が言い合いをしていた。


「そうやってお前は何でもつっかかる。

 何度も呼び出しを受けて、まだ改める気はないのか?」


「カカッ 知るか。俺様は俺様だ。気に入らねえなら、

 決闘申し込めよ? 出来ねえくせに。お坊ちゃんよぉ」


クラスの人気男子のロイと実戦科のペドロ=クラークだ。先日カズハにわざとぶつかってきた。所かまわずふっかけてくるようだ。すでに周囲には誰もいない。見るに去年以前から本校の知り合い同士で、反りが合わないイメージだ。


「怖いね……」


「う、うん」


「片方はまったくそんなこと思ってなさそうだな」


 政勝につっこみをくらった。政勝に技術を見せたことはないが、

カズハの魔蔵値と授業の身のこなしから、力量もそれなりと認めたようだ。

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