第6話 - 主神 -

 本日は信仰と祈りの授業だ。教会関連施設へ移動する。この時間は教養科実践科と共通で、合同で授業を受ける。と言っても、信仰が決まっていれば、それぞれのやり方で祈るだけ、無ければ教員と相談する形となる。


 熱心であるかないかは全く問われないが、無神論者は芯の無い者と見なされやすく、あまり好まれない。実際に儀式では神が降臨するからだ。神など存在しない、は通りにくい。


 地域の体育館ほどの大きさの施設内は、各信仰に対応できるように区分けされており、自分の信仰の場所に集まれば良い。


 ノヴァルティアの国風と聖教会の存在もあってか、光の神ルイ・ナージャの信仰が過半数を超える。マーヤはそちらだ。先日戦いになったクリスは水の神の元に居た。


 カズハは忍びをやっていたため闇の神サー・ナイアの信仰だ。ルイ・ナージャとの関係は『対立』にあたり、肩身が狭い。施設内でも非常に隅っこのほう、そして実戦科の女子と2人しかいなかった。


 普通はその国の主神と『中立』以上でなければ、入れてももらえないが、授業を行う施設ということで特例だろう。

 

 ざわっ おおおっ……!


 対角側の多く人が集まる、光のルイ・ナージャの祭壇ほうで歓声があがる。学生の法力がかなり強くなっている。なにやら実戦科に次期聖女候補と言われる女子がいるのだとか。


 カズハも熱心ではないので1分ほど祈りを捧げる。フリをしていたが、じきに飽きてしまう。周囲を見渡すと、同じく小さ目の祭壇へ祈りを行う普段から袈裟の政勝が居た。異国信徒のためか、やはり隅の方だ。


「南莫三滿多嚩囉赧憾」


熱心にやっているので隣に並んで形だけマネしてみた。


「破ッ!」


 ペシ


急に振り向き、肩に札(ふだ)を貼られる。


「……なぜだ。なぜ厄除けを唱えているのに厄そのものが来るんだ。

 神様仏様神来社様、この者をお滅しください」


ひどい言われ様だった。政勝の好感度は低いらしい。少し離れてその様子を見ていた、担任のカトリーヌが寄ってくる。


「シラユキさん、そちらに興味があるのかしら?」


肩の札がペリっと剥がされ、消失させられる。


「ミス・カトリーヌ」


興味はないが、変装が楽そうなので頭を丸めてみたいとは思っていた。


「ミセス・カトリーヌと呼びなさいと言っているでしょう?」


 未婚なのに言い間違えると強要される噂は本当だった。あくまで未婚でなく晩婚だそうだ。意地でもミセスと呼ばせる。めんどくさいのでもう皆、単に先生としか呼ばなくっていた。


「信仰は繊細ですから、これは授業ですと先に断っておきます。

 その上でシラユキさん、あなたは光の神の素養のほうが強いと

 思います。少し体験してみませんか?」


「……信仰以外へお祈りしても良いのですか?」


「構いません。実習です。私ほどのキャリアとなれば、

 指導員の免許も持っています。あなたの才能を伸ばすべきです。

 そしてあなたもキャリアの道へ。さあ、レッツ晩婚」


手を引かれ連れていかれた。光の神、ルイ・ナージャの祭壇の前だ。


「あなたの知っているままで構いません。

 心を光のイメージにしてください。魔力も同じ形へ」


適当に腕を組み。祈りを捧げる。すると徐々に――


 ブワッ!


 カズハが光に包まれる。周囲の学生も注目しだした。先ほどの聖女候補の女子も少し驚いてこちらを見たようだ。


「素ぅ晴らしい! やはりこのミセス!カトリィンヌの目に狂いはありませえん!」


――普段より魔力の集約がスムーズだ。しかし里長からは

 素質は闇の神サー・ナイアと聞いている。

 これまで困ったり、不運に見舞われたこともない。


祈りを終了し、先生のほうへ行く。


「たしかに、とても体とシンクロしている気がします。

 でもサー・ナイアで特に不都合もないので……」


「シラユキさん? 私は才能を教えたにすぎません。信仰はあなたのものです」


言うとクールに立ち去って行った。やけにかっこよかった。

故に高キャリア系未婚族なのだろう。


 パンパン


カトリーヌ先生が注目を集める。


「伝えた通り、本日午後は授業でなく、魔蔵値の測定です。お間違えなく」

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