第3話 - シラバス -

 初年度は共通となる。次年度に向けて男子は司祭や、貴族、公職などを目指し、

女子は聖職者や、貴族、公職、メイドなどを目指すことになり、この一年で進路を決めて提出せよとのことだ。


 貴族コースを修了すると、卒業と同時に、準子爵の爵位が与えられる。その後は貴族としての扱いを受ける。


――どれも適正外だけど、貴族かメイドが無難そうね。

 ひとまずこの1年で見極めましょう。


仮にも貴族となり立場や固定収入も得られれば、里長もカズハの帰参を認めてくれるかもしれない。口減らしとされた里に復帰できる可能性がある。


 チラっと袈裟を着た政勝を見る。見た目からして進路に悩む必要はなさそうだ。

司祭、もとい本国の法曹者を目指すのだろう。


「まず迎えるイベントは一か月半後の野外活動です。

 出身地域によっては林間学校というのかしら?

 学びながら存分に親睦も深めてください。晩婚のために」


――野外活動? トラップでも解除する訓練かしら。

 点が稼げそうね。


前向きに解釈した。次いで席順に自己紹介が進んでいく。


「建二美子(たちふみこ)です。よろしく」


――あの女、私と同じ匂いがする。警戒だわ。


 他にも気になる人間が数名いたので頭の片隅に置いた。適当に授業を受け、その日は終了となる。食堂でマーヤと共にする。


「さっきもすでに女子で話題になってたけど、あのロイ君て人がかっこかったよね」


「え、そう?」


 マーヤは人柄もよく、すぐにクラスの女子と馴染んだようだ。話しに出てきた男子は、地元ノヴァルティア出身で編入生、領主で騎士の家柄だが政治家を目指しているのだとか。


「進路って決まってる? 私は貴族コースなんだ、不安だよ。

 ほんとはメイドがいいのになあ」


何やらマーヤの家は裕福ではなく、これを期に準子爵の位を獲得し、生活を向上したい。両親の願いのようだ。


 正直話を聞く限りでは、この貴族コースが単位さえ取れれば最も無難で楽そうだ。

メイドは仕える家しだいで待遇が運となりそうだし、聖職者はどこの地域に派遣されるか、よくわからない。しかし貴族は居場所も卒業後の生活も保障されている。


カズハはまだ決めていないと答えておいた。


 登校で会ったことから、マーヤとは寮も同じのようだ。

帰りも共にすることにした。


「朝の事故の書類を取りに行くから、ちょっと中庭で待っててね」


言うと職員室へまた向かっていった。


「ん? あれは」


 校庭の隅の方に生える薬草を見つける。配合で毒にも薬にもできる優秀な種だ。あまり手に入るものでもない。周囲に花も咲いていたが、目もくれず適当にみ取りに行く。


「土も肥沃ひよくでいい薬草ね」


プチプチプチプチと抜きまくる。


「やあ、美人さんがそうして花畑にいると、絵になるねえ」


 !


――この男は、さっきマーヤが言っていた、

 スケこまし(嘘)のロイ、だったかしら。


ナンパ目当てのチャラ男、ではなさそうだ。制服を着ていた。180cm弱程度、赤の入った金髪で整った優男だったが、騎士というだけあって筋力もしっかりついている。


「ああ、すまない。僕はロイ=ラッセル。ノヴァルティアからの編入生だ。

 慣れないうちはなるべくクラスメイトに声をかけていって欲しいと、

 先生から言われててね。困ったことがあったら遠慮せず言って欲しい」


警戒が表情に出てしまったのか、先に謝られる。薬草をさっと隠す。花など無視して草しか抜いていなかった。


「声は間に合ってるわ。現金が間に合わないの」


「はは、なかなか面白い御仁だ」


政勝と違ってつっこみはこなかった。


「中庭の手入れをもう少し、しっかりやるように、用務科に伝えるよ。

 さすがに清掃時間でもなく草取りは申し訳ない」


「ありがとう。ゴミ捨て場を教えていただける?」


 聞くとそのまま立ち去っていった。

入れ違いでマーヤがやって来たので共に帰宅した。


「もうロイ君と話してたの? うらやましいなあ」


――あの男、最初から草しか抜かないのを見てたのね。

 素性を疑われてる? 油断ならないわね。


当然捨てずにきっちり持ち帰った。

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