第24話 - 野外活動2 -

 夜、キャンプファイヤーの周囲にクラスメンバーが集まる。

ダンスの授業が決行されていた。


 気になるあの人と手をつなげるかも……!

などという空気は一瞬で消え失せ、カトリーヌ先生による

スパルタの授業でしごかれることとなる。

ローテーション式ダンスですでに同じ人と当たるのは2.3回目だ。

本当に全員揃うまでやる気らしい。


 パンッ パンッ パンッ


「1.2.3! はいそこ、はやすぎ、そこ、腕が低い!」


「バン! コン! 晩! 婚!」


ゼーハーゼーハー……


 休憩をはさみつつもかれこれ1時間、

体力の少ない者はすでに足取りがあやしい。


 カズハは二美子と当たった際に足を踏んでやろうとしたが、

さらりと交わされる。

当然不振な動きにカトリーヌ先生から激を食らう。


 不意に第三者から声がした。


「あーあ。暇でこっち来てみりゃ、こっちもこっちで

 くだらねーことしてんなあ」


ベンチに座り膝に頬杖をついて、退屈そうにこちらを見る男、

素行不良の実戦科、クラークだ。

先生が手拍子を止めたため、周囲は気まずそうに止まる。


「クラーク君。実戦科もこの時間は実習のはずです。

 こんなところにいていいのですか?」


カトリーヌ先生が注意を促す。


「実習? あのオークを5匹倒すのがか? ケッ

 あんなの5秒で終わったんだが。頭限定で全部潰しておいた」


5対1の訓練実習をハンデを付けた上で5秒で終えたという。

その力量にカトリーヌ先生も一瞬考え込む。


「では見学するのなら、お静かに」


言って再開しようとする。


「先生、クラスには彼の素行の悪さに怯えてしまっている人もいます。

 部外者のクラークは退場させるべきではないでしょうか」


ロイが再開を前に先生に伺った。


「おいおい。ダンスってのは気に入らねえ奴が居る前じゃ、

 やる機会が一切ないのか? 社交ってのはそんな甘いのか?」


「黙れ!」


「お静かに、と言っています。ラッセル君、クラーク君、

 分かりましたか?」


「……」


 二度目のお静かに、は、かなりの言圧があり、2人とも黙る。

その後も数十分授業が続いた。

クラークは何かを見定めるかのようなギラついた目つきで見て行った。


 就寝時間となる。

女子はコテージへ、男子は作成したテントでの就寝となる。

まだ恋バナの展開、になるには、やや付き合いも短いようだ。

翌日の実習もあるため、夜更かしする者はいなかった。


-翌朝-


 起床準備を済ませると、外にはすでにバイキング式の朝食がスタッフにより準備されていた。逐次食事を採っていく。ローザから挨拶があり、本日の流れの説明が行われる。


 前半は、教養科が実戦科を客として招き入れ、模擬対応する実習、

後半は、実戦科の訓練に、教養科が保護される実習だ。


 まずは前半の教養科の実習だ。

貴族、聖職者、メイドから希望の役回りを選らぶ。

カズハは希望無しと言ったところ、聖職者役を回されることとなる。


「闇の神サー・ナイアの信仰なのに聖職者をやるの?」


 ローザの中ではそういうイメージだったようだ。カトリーヌ先生との信仰の授業で、光の神ルイ・ナージャの祭壇前で力を発揮したのを見ていたのだろう。指定された座席へ移動する。


 カズハの実習は、悩める戦士の相談を伺い、気持ちが改善するように導くというカウンセリングミッションだ。待っていると実戦科の生徒が来る。


「こんにちは! 失礼します!」


 やたらと元気のいい女子が来た。薄い金髪に、

やや耳が尖りぎみだ。


「私は、実戦科のシェラ=ローレンツっていいます!

 ハーフエルフだよ、よろしくね」


「ようこそおこしくださいました。私はカズハ=シラユキ。

 主神はサー・ナイア。あなたのお悩みを解決します」


「えと、闇の神様なのにシスターなんだ?」


歪職者わいしょくしゃなんです」


「どんなのだろ、えーと、私今スランプで、うまく戦えないんです」


 悩みの話題を振ってきた。用意されたものだろう。

そもそもこの元気娘ハーフエルフに悩みなどなさそうだ。


「スランプとは実績ある者が使う言葉です。

 あなたの場合は悩みでなくただの実力不足でしょう。精進するべきです」


「……」


「え、えっとこのままじゃ、パーティの足を引っ張ちゃうかもって思ってて!」


「他人など足場にすぎません。引っ張るのではなく踏み上げるべきです」


「……」


「で、でもこの前、心配した仲間が回復薬を差し入れてくれて!」


「前向きな態度というのは必ず裏があります。打算的な行動でしょう。

 人の為と書いて、偽りと読むのです。世の中はほとんどが騙し合いです。

 栄養剤1本の元価を知っていますか?」


「……」


「ど、どうすれば以前のように立ちまわれますか?」


「弱い者を食い物にするのです。生まれた日は死ぬ日に優る。

 アンデットにクラスチェンジなどいかがでしょう」


「……歪職者さん、歪みすぎな気がするよ」

 

 シェラはもうこの人は手遅れではないかといった顔をしている。

スッっとバインダーボードを取り出して、

紙にカリカリと記入して去っていった。

もしかして評価の対象だったのだろうか。先に言って欲しい。



-2人目-


「よろしいでしょうか?」


「どうぞ。私はカズハ=シラユキ、歪職者です」


 150cmもないだろう。カズハのような色白だったが、

華奢で、か細く実戦科というには頼りない。


「エイル=ワーヘッドです。私は今延長線上にいます」


「この上の雲のように、

 二つの雲、いつしかなぜ多様性が失われてしまったのか」


「雲からは海が必ず見えます。誰にでも。

 そう、皆が深層的にはずっと見たいと思っています。

 ただそれだけで満足できるのです」


「足元の蟻を見てください。彼らも私達も同じ雲の下の存在。

 しかし私達と違い彼らの視野はとても広い。その世界を見たことがありますか?」


「そう。だから適応できるのです。想像できる。その大きさを。

 そして安心してその命を全うできます。

 倫理観など不要なのです。誰もが克服できる」


「……」


――ヤバイ。


「あなたに必要なのは否認ですか? 受容ですか?」


「私は変幻自在です」


「ありがとう」


スッっとボードを出してカリカリ書いたあと、去っていった。


――気になる。今のでどう評価されたのか激しく気になる。


(カズハは歪職者レベル1を習得した)

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