第22話 - 投票 -

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」


 実戦科の有名人と朝すれ違う。授業で高い神聖術を見せた、次期聖女候補の彼女だ。イヴ=ステルシアさんというらしい。歩いているだけで絵になる落ち着きと優雅さ、ローザやレミとはタイプの違う、まさにザ・淑女と言った感じだ。


 すでに淑女成分は有り余っているので、実戦科に入ったのだろう。

聖女ともなれば紛争地帯にも派遣される。その経験と勉強だ。


「なんじゃこりゃあ!」


 クリスの叫び声が聞こえた。

見るとすでに平然を装っていた。言えるはずもないだろう。

さてどうするつもりなのか。持ち帰るのか、捨てるのか。


二美子もすでに何食わぬ顔で着席していた。


「伝えていた通り、本日は一部授業を変更して、野外活動の

 リーダー選出を行います」


ついにきた。

しかしなぜ、リーダー選び程度に妙に緊張感があるのか。

半ば紳士淑女学級などに来たせいだ。


「それでは、立候補者を募ります。希望者は挙手を」


 スッっと上がった手は、3つ。

ローザ、レミ、そしてロイだった。


――ロイも挙手を? 噂はなかった。

 レミにように、先生からのオーダーかも?

 しかし決めかねた男子の票が流れやすくなるのではないか。


クラスは20名。欠席者なし。


「それでは、用紙を配布し、決選投票を行います。

 合図があるまで記入しないように。

 自身がリーダーの素質があると思う者を記載するように」


全員に紙が行きわたる。


「必ず3名の誰かの名を記載すること。白紙は減点します。

 記入開始、イッツ! 聖なる晩婚!」


謎の呪文とともにジャミングが発動する。透視の魔法を使い、

他人の内容をサーチするなどができないようにした。

試験などにも使われる。


――さーて政勝は……


 カツカツカカッ


聴力を集中する。筆音からローザと記載したようだ。


――食事一回でほいほい尻尾を振っちゃって。


 単純に決めれば、やりたい人間がやればいい。ローザだろう。だが、先生はあえて、リーダーの素質があると思う者と言った。意図があるのだろうか。


 例えば、今から戦場へ行き、命を懸けて戦うとする。誰をリーダーに選ぶか聞かれたらどうする? やりたい人間じゃない。最も、勝率の高いと思う人間だ。だがこれは戦場じゃない。実習だ。


――悪いわね。私こそ、やりたいようにやる。


 レミ=マーガリンと書いた。


票が回収される。先生が独自で開票するようだ。

周囲も雑談模様となる。


「どうしたことか」


「え、なに?」


「お前が速攻で誰の名前を書いたか聞いてくるケースしか想定してなかった」


「……」


政勝に行動パターンを読まれかけてきていた。


「バレバレなのよ。食事一回で腰を振っちゃって」


「振ってねえし! つかひどすぎだろ」


「結果を発表します」


カトリーヌ先生が再び教壇前へ来る。


「リーダーは、ローザ=バーバリーさんです」


パチパチパチ


 ホッと胸を撫でおろすローザ。敗れた2人も特に感慨なく、拍手を繰り出している。順当に、やる気のある人間に任せたいと思う人が多数だったようだ。


 しかし後ほど、マーヤ得意の女子の噂話で知る事になる。

ローザとレミの差が1票だったとのことだ。


 いよいよ来週はその野外活動だ。しおりが配られる。1泊2日の行程だ。

カズハが勘違いしていたトラップの解除実技ではないが、2日目にはちょっとした実技があるようだ。


「ヤバイわね」


「ん? どうした?」


ぼやくと政勝が反応する。


「初日ラストのローテーション式社交ダンスなんてできなわ」


「お前ならいけるだろ。真ん中でブレイクダンスとかやるタイプじゃね。

 ギュルンギュルンやっていいぞ」


「……」


最近かなり調子に乗ってきている。そろそろ〆るべきか。


「ご安心なさい。このミセスカトリーヌがダンス全員揃うまで、みっちり鍛えます」


主に経験者からエェーと声が漏れた。

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