第14話 - 依頼 -
しばらくすると足音が聞こえ、奥の方から出てきた中年の男性が現われた。短髪で茶色のちょびヒゲで堀が深い顔、気難しそうだ。背はさほどないが、がっしり筋肉もついていた。
「なんでえ?」
ボソっと声がかかる。
「あの、すみません、ゴンタさんの紹介できました。
マーヤといいます。用心棒を探しているのだとか……」
すぐに眉をひそめられる。女学生が2人だ。用心棒とは程遠い。
「ま、紹介なら見た目で判断はしねえ。ちと待ってろ」
説明するものを持ちに行ったようだ。じきに地図を持って戻ってきた。
「依頼は討伐だ。地上げ屋のシュウ。コイツを殺して欲しい。
報酬は聞いての通り、青の龍の角の結晶。本物だ」
!
同時に持参したケースの蓋を開ける。先程見たものと同じ、結晶の現物を見せられる。しかしまさかの殺しの依頼だった。カズハはまったく気に留めないが、マーヤは少したじろぐ。
「このシュウ自体は大したことは無い。だが腕のいい用心棒を2人雇ってる。
こっちがやっかいだ」
「討伐しないと、ダメなんでしょうか?」
「ああ。なにせ仲間を2人殺されてる。命1つじゃ足らないくらいだ」
一見寡黙な人物だが棟梁ゼブの目には多少の怒りも見える。
「後ろをみてくれ」
材木の山があった。このうち、ヒネキの木だけが、圧倒的に不足しているという。理由は、材木を搬入する業者をこの地上げ屋のシュウが狩っているらしい。
「シュウの目的は木材の相場の価格操作だ。ヒネキを意図的に高騰させ、
莫大な利益を得ている」
すでに1か月ほど、この状態が続いているという。ヒネキの木が7割も不足しており、棟梁達が作る建造物の予定が4割ほどしか達成されていないようだ。
国に報告したが、護衛の騎士を派遣してくれるだけ。費用はきっちり請求される上に、相手は狡猾で、騎士が居る日は襲ってこない。怒った棟梁2名が襲撃を掛けたが、返り討ちにあって死亡したようだ。
ヒネキを中に隠し、周囲を偽装して運んだこともあったが、魔力で識別され、やはり狙われるという。
「どちみちこのままじゃ食い倒れなんだ。いずれ俺もそうなる」
「……」
「引き受けましょう。シュウを暗殺して、終わりよ。簡単だわ」
――!
マーヤが簡単というカズハに驚きの反応をする。
「ほう。べっぴんさんよ、腕は立つとみたが、
用心棒2人の存在を忘れちゃいないか?」
「別に。スキを見てシュウそのものを殺ればいい」
「ところがだ」
シュウは非常に用心深く、毎日居場所もねぐらも変えるようだ。まず捕まりはしない。これ以外にも黒い商売に手を染め、多く恨みを買っているためだ。
搬入の魔導貨物車を囮にして、おびき出して接触しないと、
遭遇はまず無理だという。
「用心棒自体からなんとかしないとダメなわけね。どうするのマーヤ?
私は構わないわ。龍を直接狩りにいくより、余程条件はいい」
「……カズハちゃん、お願い、手伝ってくれる?」
「ええ」
ニコっと笑い合った。久々にマーヤの笑顔が見れたとき、つっかえが取れた。カズハの取った道が間違いでないと、確信した。
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