第12話 決意

次の日、、、、


目を覚ました俺は、体を起こそうとして気付く。


・「なんだ、、、?

手が何かに掴まれてる、、」


まだ寝ぼけている頭を振り、無理やり覚醒させて確認する。

そこにはハナが居た。

いや、、、居てくれた。

俺の約束を守って、ずっと居てくれた。


・「ハナ、、、」


俺は込み上げる感情を押し殺してハナを起こす。


・ハナ

「あ、、、、おはようございます。

気分はどうですか?裕輝さん。」


・「あぁ、落ち着いている。

ハナのお陰かな。

その、、、ありがとう、助かった」


・ハナ

「私に出来る事をしたまでです。

今、食べやすいスープか何か持ってきますね。」


ハナは部屋から出て行った。


・「自分に出来る事、、、ね。」   


俺は右手に魔力を流す。

すると手の甲に紋章が浮かび上がる。


・「現実だったんだな。

そうか、、、、」


押し潰されそうになる心を奮い立たせ、、、

俺は起き上がる。


・「体が、重いな、、、。」


するとハナが戻ってくる。


・ハナ

「裕輝さん、大丈夫ですか?

さあ、こちらに座ってください。

何か食べないと駄目ですよ。」


俺はハナに促されるまま、椅子に座る。

そして出されたスープを食べる。


・「美味いな、、、美味い。

この味、ハナが作ったのか?」


・ハナ

「よ、、良く解りましたね?」


・「あぁ、、、、何となくな。

凄く、美味いよ。」


それから俺はスープを黙って食べた。

ハナはずっと俺の側に居てくれた。

そして食べ終わると食器を片付けに行くハナ。


・「いつまでも落ち込んでいる訳にはいかない。

そろそろ向き合わなきゃな。」 


俺は屋敷を出て、町を歩く。

町では元権力者たちの処刑が行われていた。


・「革命だもんな、、、こうなるよな。

解っていた事だ。」


裕輝は処刑を眺める。

自分達で行った事を忘れない為に、、、


・「これが、、、戦争か、、、

流石にキツイな、、だが、受け止めなければ。」


暫く町の様子を見て周り、現状を把握していく。

ある場所では勝どきを上げる者。

ある場所では処刑を、、

至る所に死体がある。

そして気付く、、、


・「オルドラの軍は関与していないな。

レジスタンスしか動いていない。」


色々と周ったが、何処も同じ様な光景が広がるばかりだった。

そして、屋敷へと戻る。


・ライル

「裕輝、町を見て来たのか、、、

無理はするなよ。」


・「あぁ、ありがとう。

ひとつ聞いて良いか?

この後、オルドラの軍は関与しないのか?」


・ライル

「まあな、、、

レジスタンスはここまでの支援を願い出ただけだ。

制圧後はオルドラ王国の関与を拒んだ。

あくまでもレジスタンスが町を建て直したいんだろうな。」


・「モータル軍が攻めて来るだろう?

どうするんだ?」


・ライル

「俺たちは何も出来ない。

それも話したが、レジスタンスは協力を拒んだ。

他の勢力には頼みたくないんだろうな。

やっと掴んだ自由だ。

また制圧されるかもと考えたんだろう。」 


・「でも、モータル軍が攻めて来たら、、」


・ライル

「負けるだろうな、、、

レジスタンスもそこは理解している。

何とか話し合いをしようとするだろう、、

恐らく破談するだろうがな。」


・「そうか、、、、」


・ライル

「反論しないんだな。」


・「まあな、、、

モータル国にしてみれば、旨味がない話だ。

独立させる訳がないだろう。

レジスタンスは負ける。

俺達は介入できない。

例え救援依頼が来たとして、助ける事を先にレジスタンスが拒んだんだ。

どうしようもないだろうな。」


・ライル

「凄いな、気落ちしているから、助けるとか言うと思ってた。」


・「そこまで子供じゃないさ。

仕方ないと割り切れる程大人でも無いけどな。

俺1人の力はたかが知れている。

足掻く時は今じゃ無い。」


・ライル

「裕輝、、、、

お前は凄いな。

もう、ここで俺たちにやれる事はない。

獣人国の依頼も無事達成出来た。

後はレジスタンスの邪魔になるだけだ。

無駄な争いはしたくない。

早急にオルドラ王国に戻る。

他の隊員は今朝早くにこの町を発った。

俺達も帰ろう。

帰る準備をして、またここに来てくれ。」


・「わかった。

なぁ、ライル、、、

、、いや、、何でもない。」


俺は荷物を取りに部屋に戻る。

ライルはそんな裕輝を見詰めていた。

暫くして、、


・ハナ

「ライル団長、準備ができました。」


・ライル

「うむ、ではオルドラ王国に帰還する。

帰りは馬車でゆっくり帰ろう。

街道を通り戻るから2日日程でオルドラ領域に入るだろう。

そこから2日掛けて王国に戻る。

俺は仕事があるんでな、、悪いが先に戻るぞ。」


・「わかった、、、ライル。

気を付けてな。」


・ライル

「あぁ、、、、

お前と戦えて楽しかったぜ。」


ライルが1人走り出した。

流石に早いな、、、もう見えなくなった。


・ハナ

「では、出発しますね。

裕輝さんはゆっくりしていて下さい。」


場所はゆっくりと動き出す。

俺は周りの景色を眺めていた。


・「良い景色だな、、、、」


馬車はゆっくりと、、、ゆっくりと進んでいく。

裕輝は何も考えずに景色をただ眺めていた。

そして日が傾いて来た頃、、、


・ハナ

「裕輝さん、今日はあそこで野営しますね。

降りる準備をお願いします。」


俺は言われた通り準備をして、

馬車が止まるのを待つ。

今日一日、何もしてないな、、、

後でハナに謝っておこう。

馬車が止まり、2人で野営の準備をする。

そして、日が暮れた、、、

焚き火の前で晩飯を食べつつ、ハナと話す。


・「なあ、、、ハナは何で軍に入ったんだ?

辛くはないのか?」


・ハナ

「戦争とか人が争う事は正直辛いです。

私は戦争孤児で、物心付いた時には親は居ませんでした。

医療魔法が使えたから、小さい頃から軍の訓練所に入っていました。

医療魔法が使えると費用は要りませんので、、。

食べる為に、生きる為に軍にいるだけです。

入りたかった訳ではありません。」


無神経な質問だった、、、

だが、後悔はしていない。

知りたかったから、、、、この世界の事を。


・「すまなかった。

答えてくれてありがとう。

、、、、、あのさ、

俺の住んでいた世界ってさ、

一応、戦争が終わって平和になった時代なんだ。

もちろん、他の国では内戦や貧困、独裁国家、様々な問題はあった、、、

幸せな事に、俺の国では争いは無くなっていた。

人が死ぬ事もある、殺される事もある。

だが、この世界程、、、人が死ぬ訳じゃない。

奴隷もいない、大体の人間は争いなく、好きな時に好きな物を食べ、安全に寝る。

勉学での競争に頭を悩ませ、スポーツで汗を流し、好きな人と出会い家族を作る。

そんな時代に、、、俺は居た。

甘ちゃんだと思うだろ?

俺は、、、、昨日、初めて人を斬り殺した。

何人もだ。

、、、その人達の顔が頭から離れない。

これからも俺は、多くの人を殺すだろう、、、

その度、俺はどんな風に感じるんだろう?

そう考えてしまうと、、、怖いんだ。」


暫く、ハナは俺の話を聞いてくれた。

そして、俺の手を握って言ったんだ。


・ハナ

「裕輝さん。

私と、、、、一緒に逃げませんか?」


・「えっ?」


ハナは震えていた。


・ハナ

「ライル団長から手紙があります。

字が読めないと聞いていますので読みます。」


(お前の事だから無駄に悩んで居る事だろう。

いきなりこんな世界に飛ばされ、更に戦争をさせられる、正直言ってお前が不憫でならん。

俺は、勇者ではなく裕輝の友達だ。

戦争なんて物に参加する必要はない。

来たるべき魔族との戦いに備えて、ハナと共に様々な国を見て回るんだ。

守るべき者を見付けろ。

自分の信じた道を行け。

そして、力をつけろ。

お前なら出来る、必ずだ。

友よ、、、強くなって、

出来れば魔族との戦いで、俺を助けてくれ。

親友 ライル・グランツ)


・「ライル、、、、、。

もしも、俺がこのまま戻らないと決めたら、

ハナはどうするんだ?」


・ハナ

「私は元々、軍に居ることが苦痛でした。

ライル団長から許可は貰っています。

裕輝さんが旅立つと言うのであれば、私はお供したいと思います。

裕輝さんさえ、宜しければ、、、。」


ハナはまだ震えている。

震えながらも俺を見る。

そして、俺は考える、、、

このまま国に帰ったとして、どうなる?

次の戦争が起こればそこに派遣されるだろう。

俺の目的はなんだ?

国を助けることか?

魔族との戦いに勝つことか?


、、、神は言った。

世界を救えと。

ならば、力をつける事が先決なんじゃないか?

ひとつの国こだわる必要もない、、、

俺はまだ、この世界を知らなさすぎる。


旅立とう、、、

そして、やるべき事を見つけるんだ。


・「ハナ、、、

俺に、ついて来てくれるのか?」


・ハナ

「はい、何処までも。」 


ハナの震えが止まる。

確かな喜びと、笑顔を向けてくれた。

、、、、、綺麗だな。


俺は決意した。

まずは世界を知る事。

そして強くなる。

ライル、、、待っていろ。

必ず、お前と肩を並べて戦える様に強くなる。

必ず、お前を助けてやる。


この日、裕輝は決意する。

国を離れ、世界を周り、己が為すべき事を探す。

ハナと共に、、、

その日、2人は旅立つ事を決めた。


そして、夜が深けて行く




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