第167話入社―今日から社会人

入社―今日から社会人


入社―今日から社会人


卒業式も無事終わり、

純が西尾さんと長澤さんにとてもお世話になったと言って、俺もすごくお世話になったから、4人でレストランで食事。

西尾さんも長澤さんも彼氏がアメリカで働くことになり、ついに2人ともアメリカに、

送別会もかねて1時帰国した際、4人でレストランで食事、そしてプレゼントを渡し、出発は会社が始まってからなので行けないけど、日本に帰ってきたときに会おうと約束して別れた。

俺はもう純の家で一緒に生活しているから、会社へは純の家から一緒に通う。


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4月1日、武村建設が地元ではかなり大きい、工事部門もあるから人数だけで言ったら、そこらへんの上場企業よりはるかに大きい。

 とはいっても、上場していない地元の企業。

大企業によくある入社式ではなく、社長室で1人づつ配属先が書かれた採用通知書と辞令をもらう。

新入社員は全部で10人、男7人女3人なので、人事の説明もすぐに終わり、そのまま配属部署に。

武村から内線電話で社長と昼食会。

でも純と俺と武村の3人だけ。

そんな事良いの?社長との昼食会は後日、新人全員一緒にやるんだそうだ。。

非上場のオーナー会社はそんなものなんだろう。

実は、俺、武村の親父さんに会うのは、今日が初めて。

う~ん見るからに土建屋の親父、身長は武村と同じくらいで、あの年にしてはでかいと思う、横にもでかい。

「君が高谷君か」

「はい」

「一郎が色々お世話になったね」

「いえ、 いつも仲良くさせてもらってます」

「そうか、これからもよろしくな」

「はい」

「純ちゃんは久しぶりだね」

「はい、中学生以来だったと思います」

「そうか、 そんなになるか」

「はい、 恵は、 頻繁に会っていると思います」

「あ~、 恵ちゃんは、 先日も会ったな~」

「はい、どうぞ恵をよろしくお願いします」

「はい、 責任を持って恵ちゃんを大切にしますよ」

「いや~2人とも、うちに来てくれて助かるよ、今はどこも人手不足で、なかなか新卒が集まらなくてね。特に高田大学とか国立女子大レベルの新卒なんかはもう何年も来なくてね、

それが今年は2人も、よかったよ。一郎でかした」

「ああ」

社長ではあるけれど、武村の親父で、俺達はそういう関係で入社したという事もあり、

それほど緊張せずそんな雰囲気のなか昼食も終わり、各配属先で研修。

といっても、皆から聞くような大企業でやってる新人研修ではなく、 それぞれの部署に任せた育成になる。

純は総務部、俺は財務部。

純の部署は純を入れて6人、総務と人事を行う部署。

隣に俺の配属先の部署があり5人で、財務経理を行う部署。

そして業務部は6人、財務部とは総務部をはさんで向こうにあり、ここでは営業事務の補助及びシステム関係と公共事業等の土木工事に関する積算業務を行い、忙しいときは財務部と総務部も協力して、この業務を手伝うことになる。

3月の年度末が公共事業の締めなので、その時期は大変らしいけど、それ以外は、上場しているわけではないので、それほど忙しくなく、だいたい定時で帰る人がほとんど。

工事部は現場に合わせて変則シフトだけどその分1か月の労働時間は少ないらしい、営業と設計関係は結構大変みたい。

他の同期は、業務に女の子2人、設計に1人、営業に武村を含めて3人、工事部に2人

工事部の2人は最初の1-2年は設計で仕事を覚えてから工事部に行くそうだ。

さっそく金曜日に新入社員の歓迎会、大人数でもないので管理部門3部合同、地元のホテルのレストランを貸し切り開催。

なかなかこういうのは普通の上場企業にはない地元企業ならではだけど。

立食形式で、一通り挨拶も終わって、乾杯し、新卒が全部のテーブルを回って挨拶。

俺も純もそれぞれの部署の先輩たちと一緒に食べながら歓談していると、遅れて1人男が入ってきた。

「須藤主任!」業務部の女子がこっちこっちと手を振って呼んでいる。

うわっイヤな名前、あいつと同じ名前だ。

イケメン風でちょっと派手?学生時代はチャラ男だったよねきっと、第一印象はこんな感じで思いっきり苦手なタイプ。

「イヤ~遅れてごめん」そう言って皆ににこやかさわやかスマイル?

全部のテーブルに挨拶をして、自分の部署に仲間のところに。

それから・・・やっぱり純のところに、2人で楽しそうに話して、ムッ

あの時を思い出してしまった。

今日帰ったら、純に言うぞ。

まわりは気づいていないようだけど、なんだかんだ言って、さりげなくチョコチョコと純に話しかけている。

巧妙に。 

歓迎会も終わりお開きに、それから有志は2次会へ、俺も一応は誘われたけど、お酒に弱いから帰りますと言って、帰る。

ふと純を見ると、あいつに誘われている……

ふと純を見るとあいつに誘われている・・・・・。

 どうしようか、会社の先輩だから、無理やり割って入って、大人げないって思われるのなんだし、でもこのままじゃいけない。

とりあえず様子を見ながら傍に行ってみるか、そう思って純の方に歩いて行くと、あっさりと身を引いた、俺の方を見ながら

「ほら村井さん、高谷君だっけ?君の彼氏、お迎えに来たよ」

そう言って、俺に向ってニッコリ。

一見スマート? それがかえって、モデル事務所のあいつを思い出してしまう。

怪しい。

純が俺を見てにっこりして、須藤に挨拶をしてこっちに来た。

「かっちゃん、一緒に帰ろ」

「ああ」

家に帰ってシャワーを浴びて、寝るだけ。

「どうしたの?何かあった?」

「ああ、あいつ須藤だっけ?」

「うん、 なんかとてもやさしそうだったけど」

「俺、あいつを思い出した」

「えっ?」

「スカオー事務所のあいつ」

「・・・・・・・」

「俺がちょっと過敏になってるだけかもしれないけど」

「・・・うん、でも・・・」

「須藤さん?あの人と話した事あるの?」

「ううん、今日が初めて」

「そっか」

「まあ、となりの部署だし、主任だからそういうことかな」

「うん」

「そういえば、あの後誘われてなかった?」

「うん、業務に入った同期の2人と一緒に飲みに行こう、 って」

「そっか、そこに俺が来たから、なしになったんだ」

「うん」

「悪い事したね」

「ううん、行く気がなかったから断ったんだけど、なかなか引いてくれなくて、 かっちゃんが来てくれて助かったの」

「そうなんだ」

「うん」

「俺が過敏になってるのかな~」

「う~ん、 どうなのかな? でもでもかっちゃんが気になってるのからはわかったから注意する」

「ごめんね」

「ううん、 いいの、 そういう事言ってくれた方がうれしいよ、ありがとう」

「そっか」「うん」


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