第136話平穏でない学生生活-3


「かっちゃん! 怒るよ!」 そう言っていつにもまして真剣に俺を見つめる。

「かっちゃんだけ、私はかっちゃんだけだよ、だからそんな事言わないで悲しくなるよ、ねえ、かっちゃん、大好きなんだよ、愛してるんだよ」

「うん」

「ねえ、かっちゃん、何か言って?」今度は泣きそうな顔で俺の目を見つめる。

「・・・ゴメン、違うんだよ、そういうつもりじゃないんだ、純のことをあきらめるとか、他の男の方が、とかそういうことじゃないんだ。

俺がしっかりしてないから、あんな奴が純にいい寄ってくるんだって思うと、自分が情けなくて、申し訳なくて・・・ゴメン」

「ううん、そんな事ない、違うよ、かっちゃんってかっこいいんだよ、すごくモテるの。

あの時、ちょっとでも遅かったら、竹下さんや柴田先輩がかっちゃんに近づいてたんだからら。

私じゃあ太刀打ちできないくらいの2人がだよ、あんなすごい人がかっちゃんの事思ってたんだから、それだけ魅力的なんだよ、あんな奴なんて全然なんだよ、ただの自意識過剰の中二病ナルだよ。」

「・・・うん」

「かっちゃん、自分の事そんなに卑下しないで、もっと自信を持って、かっちゃんはすごいんだよ、覚えてる?

高校の時、前の彼氏から守ってくれたでしょ、それに工藤君の時も、その前のプールの時だって、他にもいっぱい変な人達が近寄ってきた時も、いっつもかっちゃんが私を守ってくれたんだよ。

だから、私、かっちゃんの言う事、やる事ぜーんぶ信じてるから、何があってもかっちゃんについて行くから、ねっ」

「ありがと、純が大変なのに、俺が慰められちゃってるね」

「ううん、ぜーんぶあいつが悪い、あいつのせいでこんな事になってるんだから」

 俺が慰められてどうするんだ、って、武村が聞いたらきっつい口調で言われるんだろうな……頑張ってみるか。

 2人で塾のバイトの日、俺の講義が終わると、純が部室で皆と話をしながら待っている。その後も皆とちょっと話をしたりして、家に帰ってバイクで塾に。

皆でカフェに行ったりして、間に合いそうもないときはそのまま地下鉄で那賀埜駅まで、というのがいつもの流れ、が、今回はちょっと違う。

俺は、講義が終わる頃、純からRINEが立花対策で待ち合わせ場所を変更しそこに行くことに、

『もうすぐ駅に着くころ』 

『もうすぐ終わるから、急いで改札に行くね』

『うん、待ってる』 走って改札に行ってみたけど、純がいない、どこ?

5分くらいあたりを探して見つからない、スマホがブルブル

『かっちゃん、ごめんなさい』って、なんだ意味深な内容は。

電話をしてみても一向に出ない、何があったんだ・・・

同じところをぐるぐる20分くらい探したけど、いない。

さっき送ったRINEに既読が付いていない・・・もう1度電話をしてみると

ようやく純が

「純?」

「かっちゃん、ごめんなさい、今、立花先輩とカフェにいるの、今から行くね」

どういう事だ?なんで立花と2人でカフェに?

まずい、あの時を思い出す、2人でカフェに・・・体温がどんどんさがっていく

いや~な汗が額から・・・改札で純を待っていると、2人でやってきた

「かっちゃん、待たせてごめんね」

「ああ」 

「高谷君、いや~申し訳ない。本当は高谷君の講義の終わる時間までに戻るつもりだったんだけど、話がはずんじゃってね。いや~本当に申し訳ない 」

そう言っていつものイケメンスマイルで謝って

「じゃあ、僕はこれで」そう言って駅の方に帰って行った。

・・・ダメだ あの時のあの2人を思い出す・・・

俺のトラウマ? でも・・・純何があったんだ? 気を付けるって言ってたのに・・・

この日はずーっと俺は、頭の中がぐちゃぐちゃで、純は「かっちゃん大丈夫?」

しきりに心配してくれるけど、純に言おうとすると、あの時のように体が冷たくなっていく・・・

そしていや~な汗が・・・いつのまにか背中がびっしょり・・・

くそっ、頑張ろうと決意したのに・・・

自分の気持ちが、あの気持ち悪さが体を締め付けて、どんな事を言ってよいのか・・

何も言えず1日中このまま、

結局「純、ゴメン 今日は隣の部屋で1人で寝たい」

「・・・うん・・・大丈夫?」



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