6.再会
「そうよ、シャノンよ」
アイデンと名乗る男は感激のあまり声を震わせていた。
「シャノン!その声をどれだけ聞きたいと願ったことか・・」
「今でもそんな風に思ってくれて、本当にありがとう。でも、私はあなたの知っているシャノンではないわ。今こうしてあなたと話ができるのは、ここにいいるリサの身体を借りているからなの」
「リサの身体を借りている?僕には理解はできないが、今、僕が話しているのが、紛れもないシャノンであることだけで嬉しい・・」
「信じられないことだけれど、あの事故の後、私のことを哀れに思った神様が私を妖精に転生させてくれたの」
「転生・・?」
「そう、まるで奇跡。だけど、羽の生えたキラキラの妖精は好みじゃなかったので、黒猫型妖精にしてほしいって言ったら、本当に神様がそうしてくださったの。私はとても気に入っているのだけれど、あなたに見えないのが残念だわ」
「そうだったのか・・。どんな形であれ、こうして君と話ができることに感謝するよ」
「ところで、アイデン、あなたはなぜこんな強引な方法でここに来たの?もっと普通の方法があったと思うのだけれど」
「う~ん・・。君は何でもお見通しなんだな・・」
「今日のあなたは、たった今、転移魔法で城内に入り、変身魔法でウィリアムスに変身したのね」
「そのとおりだ。最初はそんなつもりは全くなかったのだが、偶然が重なった・・・」
――――――――――――――
何が何だか分からない・・
私はここにうつぶせになって死んだふりをしている。シャノンに言われた通り、皇太子妃になるのだからこの試練に耐えなくてはならないのだ‥何があっても・・。
とはいえ、私ではない誰か・・この声は紛れもなく私の妄想?だと思われる黒猫シャノンだ!!シャノンが私の身体を使ってしゃべっている・・。これって、気持ち悪すぎる。そんな奇妙な状況にも関わらず、ここは、れっきとした殺人事件・・いや、私が毒入りハーブティーを飲まなかったから殺人は未遂に終わっているが、設定としては毒殺された私が倒れているヤバい殺人現場のはずである。なのにも関わらず、シャノンとアイデンという男が懐かしい再会のシーンを演じている。アイデンと名乗る男は、姿の見えない最愛のシャノンという女性の幻影を見ているのか、それとも目の前でうつぶせになって、多分わざとらしく横たわっている私を見ながらなのかは分からないが、感激のあまり声を詰まらせていた。この情景を第三者が見れば非常に異様な光景であることは間違いない・・。
何か分からないけれど、魔法を使った何かが起こっていて、ウィリアムスの正体はどうやらアイデンというシャノンの友だちだったような感じだ。
しかも、シャノンは転生した黒猫型妖精?
いつまでこうしているのだ?
混乱する頭を抱えながら、シャノンとアイデンの会話に耳を傾けた。
少なくとも今できるのは、それしかない・・と私の脳が判断した。
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