第5.5話
木々に挟まれた道を春の微風とともに歩く。昼食を求めに近くのスーパーに向かっていた。
「やっぱ完封したかったなぁ」
界は手を頭の後ろに組んで呟く。
「ま、即興だったから仕方ないっちゃ仕方ないけどな」
一点取られたのは内野の送球ミスが連続してしまったことが原因である。ここで一応確認したいことを質問しておく。
「なあ、本当に経験者いないのか?」
「ん?ああ本当だよ。遊びでやったことあるって人しかいないな。俺が呼んだのは中学の時の同じ部活だったやつと元サッカー部だし」
そうとすると、本当に雑草’sの面々が未経験者の平均なのだろうか。
「何部だったんだ?」
「俺は所属していたってだけであんまり参加しなかったけどECC、English Communication Clubだ」
参加してなかったって言う割には発音いいな。
「だからあいつとはあんま話したことねぇんだ。クラスも違ったしな」
「そんなやつよく呼ぼうと思ったな」
異常なCommunication能力である。来る方も来る方であるが。
「ははは! それな!」
すでに中央公園から出ていて、公園前の大通りを北に向かっていた。
「お前も野球経験者じゃないのか?」
あの豪速球をコールドではあったが無四球完投など、初心者のそれではないはずだ。向こうは経験者なのに。
「草野球なら友達とやったことならあるな。ピッチャーは今日が初めてだけどな。誰かさんがピッチャーやりたくないって言うから」
はて、そのような我が儘を云ったのは誰だろう?
右のポケットで無機物の塊が振動する。
この番号は姉貴か。
「はい」
僕が電話で発すことのできた言葉はその2文字1語であった。
公園前のファミレスに五分以内に至急来い、とのことだった。
「お姉さんからか?」
「ああ、ファミレスに来いって。反対側にあるやつ」
携帯をパタンッと閉じる。
「じゃ俺らもそこで昼を済ますか」
僕らはもう一度公園の方に引き返した。
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