第24話.日暮れ

 テレポートで近くを探索する。


 新田さんとばらばらに探索した方が効率はいいが、連絡手段がないため一緒だ。


「おい、いたぞ!」


 探索を初めて、すぐに新田さんの声が。


 一瞬で見つかったな……。


 まぁ戦闘しながらの移動じゃあそこまで遠くに行くこともないだろうし当然か。


 深呼吸をして気を引き締め、すぐに新田さんの指差した方向に目を向ける。


 戦闘はまだ続いてる。


「ふぅ……」


 良かった……。


 劣勢ではあるが、捕らえられたろ殺されたりはしていない。


「おい、安心するな。さっさと連れ帰るぞ。俺たちがヒーローの前に出れば、やつは必ず引く。逃げるヒーローを追おうとした星川を2人で捕まえてそのままテレポートで逃げる。ここまでくればあとはそんなに難しくはない。いいな?」


 俺が星川が無事だったことに安堵のため息を漏らすと、新田さんが注意してきて、さらに作戦を簡潔に教えてくれる。


 確かにあのヒーローはさっきの戦闘でも新田さんがカバーに来たのを見て、しっかり退却したからな。


 あれほど周りが見えているなら、3対1なんて無謀な戦闘は絶対に避けるだろう。


 うん、それなら今回は特に難しいことでもないな。


「はい」


 そして俺が返事をするのと同時に、新田さんが動き出す。


 俺はヘマして戦闘に巻き込まれたりしたら嫌だから、敵のヒーローが新田さんの姿を見て逃げ出してから動き出そう。


 とはいえ動き出しが遅すぎて星川に逃げられたら元も子もないので、限界まで近づく。


 まぁ正直俺がいなくても新田さんだけでなんとかなりそうな気がするが。


 俺が密かに微妙なポジション取りをしている間に、新田さんが戦場にテレポートして、牽制程度の攻撃をしかける。


「……!?」


 まさかの乱入。


 流石のあの凄腕ヒーローでも新田さんの参戦には気が付かなかったか。


 慌てたような反応。


 しかしだからと言って安易にテレポートなどは使わない。


 やはり余力をある程度は残していたか。


 星川と戦闘しつつ、他のイレギュラーにも対応できるようにしている。


 だから、しっかりパイロキネシスを挟んでからテレポートで姿を消した。


 流石だな。


 多分俺があの敵のヒーローと同じ状況に陥ったら、間違いなくびっくりしてテレポートを使ってしまう。


 そして逃げたことに気が付いた星川がまた追おうとする。


 だがそうはさせない!


 俺は準備していたこともあり、狙っていた場所に完璧にテレポート。


 そのまま星川の視界を手で塞いで、逃げたヒーローの反対側に星川と一緒にテレポートを発動。


「!?」


 他人による強制的なテレポートに、驚いたようにもがく星川。


 パイロキネシスを使おうとしてきたので、慌てて腕も拘束する。


 危ねぇ……。


 俺だと気づいていないのか、もしくは気づいた上でも邪魔をするなら例え俺でも容赦はしないということなのか。


 しかし、ともかく星川はこれでもうあのヒーローを追うことができない。


 それどころか超能力者にとっての足と言っていい視界を塞いだ状態ではまともに動くこともできまい。


「よくやった!」


 一息つくと、いつの間にか俺の後ろに来ていた新田さん。


「ありがとうございます」


 自分でも見事に動けたので、少しドヤ顔をしそうになるが、冷静に礼を言う。


「さて星川。お前の話はアジトに戻ってからじっくり聞かせてもらう」


 新田さんのその言葉に、今の状況を理解したのか、星川は涙を流しながら抵抗をやめた。


 そして俺たちはテレポートで現場から離れ、そのままアジトへと帰った。


 長い長い、俺の2度目の任務は終わった。

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