第13話.波乱の入学式(後)
そして、俺の疑問は解消されないまま時は少々経過した。
教員免許持ってるのか、とかゾディアックの隊長がこんな教師なんてやってていいのか、とか色々な疑問があるが、とにかくこれらは考えたところで結論が出る話でもないので、後で聞いてみるしかないだろう。
今は入学式中。
だが、やはりこういうのは非常に退屈だ。
長々と話しを聞いていなければならないし、最低限の姿勢を長時間保っていなければならないしでしんどくて仕方ない。
さっきまではゾディアックで俺が大活躍する妄想をして暇を凌いでいたのだが、それもここまで長時間となると持たない。
はぁ、マジで早く終わってくれ。
しかし残念ながら、俺がいくら祈っても終わってくれないもんは終わってくれない。
「生徒会長祝辞」
司会を務める教頭の言葉に俺は小さくため息をついてがっくりと項垂れる。
仕方なく、俺は別の妄想のネタでも考えるかと思い、目をつぶってそれに集中する。
しかし、生徒会長の一言目で俺はガバリと頭を起こした。
「暖かい春の日差しに……」
別に話した内容が特別だったわけではない。
最初の出だしは去年の使いまわしじゃないのかと思いたくなるようなテンプレ具合。
そうではなく、俺がここまで驚愕しているのは声の方。
なぜならその声は俺の聞き覚えがあるものだったからだ。
そして顔をあげてみると……。
やっぱりか。
壇上に立って堂々とした声音で祝辞の文章を読み上げていたのは、やはり俺の知った人物。
同じゾディアック第6部隊の副隊長の新田さんだ。
一ノ瀬隊長に次ぎ、またまた学校でゾディアックの人間と出会ってしまったいうのも驚きなのだが、それよりも驚いたのが年齢だ。
あの人まだ高校3年生だったのかよ。
正直初めて出会った時に、凄く大人っぽい人だから完全に大学生ぐらいだと思ってしまっていた。
しかも副隊長だぞ……。
「……生徒会長、新田進登」
俺が衝撃を受けている間にいつの間にか話は終わっていた。
ん、待てよ?
確か新田さんは鶴城さんのことも敬称を使わずに呼んでいたよな?
しかも下の名前で呼んでいたから親しい間柄であると予想できる。
となるとあの人も新田さんと同学年かそれより下ということになるのでは……?
鶴城さんは新田さんとは正反対のような非常に優しい人だったが、やはり大人びた雰囲気は持っていた。
しかし、逆に考えれば俺もあと2年後ぐらいには第一線で活躍できるくらいの実力を手に入れることが十分に可能という事だ。
衝撃的なことではあるが、逆にこれは俺のやる気を出させてくれる情報でもあった。
よし、この入学式が終わったらすぐにアジトに向かって訓練を始めますかね。
俺は思わぬところで訓練のモチベーションを高め……。
「学校長、祝辞」
司会である教頭の言葉に、高ぶった気分を削がれるのであった。
はぁ……。
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そして、何とか長い長い地獄の入学式が終わり、俺は寮を経由してゾディアックのアジトにやってきた。
そのまま通路を歩き、しばらくすると見えてくる下の階層へつながるエレベーターを使って地下3階にある戦闘訓練室にやってきた。
そのまま早速毎日の日課になりつつある瞬間移動をしながら計算をこなす訓練をやろうとすると、中に人影があることに気が付く。
「来たか」
待っていたのは新田さん。
3年生ながら生徒会長の仕事のために学校に行っていたにも関わらずもう帰ってきてるのか。
早いな。
いや、俺たちは入学式が終わった後も色々な書類を配られた。
その時間がなかった分早かっただけか。
「どうしたんですか?」
にしても一週間以上前にこの練習を行うように俺と星川に行ったきり、顔も見せてくれなかった新田さんが俺の前に現れたことが気になってので少し身構えてしまう。
「いや、どうやらお前もこの練習法の意味が分かり、瞬間移動のレベルもかなりよくなってきたようだし、一つ戦闘で最も重要となる技術を教えてやろうと思ってな」
……!
「見てくれてたんですか」
正直全く気が付かなかった。
部屋に入ってきたことなんてあっただろうか。
いや、集中し過ぎて気が付かなかったのかもしれない。
「あぁ、この部屋には監視カメラがあるからな。……というか私室を除くすべての部屋にあるんだが……。まあそういうわけだから基本的に監視室で確認できる」
なるほど。
確かに秘密結社のアジトっていうならそんなシステムぐらいあっても何ら不思議じゃないわな。
しかし戦闘で最も重要となる技術か。
一体どんな技術なんだ……?
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