Episode Ⅱ

第12話.波乱の入学式(前)

 そして俺がゾディアックに入ってから一週間以上が経過した。


 今日は4月11日。


 そう、俺の入学式の日である。


 朝起きて、トイレやら朝食やらを済ませた俺は、真新しい制服に身を包んで部屋を出ようとしていた。


 ちなみに、当然のことではあるが、ここはゾディアックのアジトの部屋ではなく学校の寮の部屋である。


 昨日しっかりこちらに移っておいた。


 そしてスマホの電源をつけて現在時刻を確認する。


 8:45。


 教室には9:00までに着けばいいと言われているのでまだ十分に余裕はあるが、初日から遅刻ギリギリの時間に来るというのもどうなんだという感じだし、そろそろ行くとするか。


 リュックを背負い、部屋の扉を開ける。


 長い階段を下りて寮の建物の入り口を出ると、すぐとなりに校舎が見える。


 寮の部屋から昇降口までは2分とかからない。


 昇降口では入り口付近に新入生のクラスが書かれている紙が置いてあるらしく、生徒たちでごった返していた。


 俺は顔をしかめながらも人の波をかき分けて紙を1枚引っ掴むとすぐさま人の少ないところまで逃げて手にした紙に目を落とす。


 左から順にざーっと見ていこうとすると、案外すぐに俺の名前は見つかった。


 能美蓮……A組か。


 出席番号は、26。


 俺は自分のクラスを把握した後、出席番号を確認する。


 そして下駄箱まで向かい、自分の番号の場所に靴をしまってリュックから上履きを取りだした。


 そのまま廊下に行くと、ご丁寧に新入生のための矢印があったのでそれに従い歩いていく。


 廊下を歩き、階段を上り、だいぶ疲れてきたところで『↑1年A組』という看板が見えたので、それに従うとようやく教室にたどり着いた。


 5階か。


 中学校の頃は1つの学年に2つのクラスしかなかったため、校舎も小さくて3階建てだったが、高校にもなるとこんなに規模が変わるのか……。


 俺は登校して早々にうんざりした気持ちになりながら、教室内に足を踏み入れる。


 えーっと、俺の机は……あった。


 生徒たちの机の上には、その席に座る人の出席番号が記された小さな紙が乗せてあったのでそう時間もかからず発見できた。


 俺は疲れたようにドンと机に手をのせるとリュックを背から降ろして机の横のフックに引っ掛けた。


 そして椅子を引いてぐったりと座り込むとポケットっからスマホを取り出して電源をつける。


 直後。


「おはよ。一緒のクラスってだけじゃなくてまさか隣の席とはねー」


 左の声から突如女子の声がする。


 声が聞こえてきた方向を見ると、そこには星川の姿が。


 声を聴いてまさかとは思ったが……。


「同じクラスだったのか……。しかも隣の席」


 しかし偶然というよりは学校側に仕組まれてるような気もする。


 関係者は一か所にまとめておこう的な。


 この学園は1学年にAからHまでの8クラスがある。


 星川と同じクラスになる確率は1/8だ。


 幻のような低い確率ではないが、現実でそれを引き当てようと思ったらかなり難しい確率だ。


 しかし、星川も女子だから学校内ではあまり話しかけにくいとはいえ、知った顔がいるのは安全だ。


 俺は中学の時から学校ではずっと孤高ぼっちを貫いてきたとはいえ、聞き逃したことがあったり、何かプリントを見せてもらいたいときとかには1人ぐらい話せる人がいないと不便だとは思っていた。


 この問題を最初に解消できたのはありがたい。


 その後は結局特に星川とも話したりすることなく、9時になり……。


 そして俺は驚愕で目を見開いた。


 1人のスーツに身を包んだ教師と思われる大人が、教室の前の扉をガラガラと開けて入ってくる。


「では出席番号順に並んでください。体育館へ向かいます」


 まだはっきりと言われたわけではないが、多分この人が俺たちのクラスの担任になるのだろう。


 だがこの聞いたことのある声。


 何より、隠そうとしているが隠しきれていないこの醸し出される倦怠感はどう見ても……ゾディアックの俺たち6番隊隊長、一ノ瀬龍雅。


 あの人が担任教師だと……!?

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