第11話 スローライフ

「俺はスローライフをする為に異世界に来たんだが…」

「え゛?」

土門さんの言葉にあたしはピキッと固まる。


「す、スローライフ?」

思わず聞き返した。


「そう、だから、女神から貰ったスキルも『錬金術』とか『鍛治』とかの生産系だし」

あたしは土門さんのステータスを上から下まで見直した。


「本当に『水属性魔法』以外、戦闘用のスキルは全部自前だ・・・(汗)」

「俺は回復魔法と生産系チートで無双して、異世界スローライフを満喫するんだ」

「えー、魔王討伐を手伝ってよー」

スローライフ宣言をする土門さんにあたしは思わずすがり着いた。


「日本で散々魔物と殺り合って、漸く【魔王】を倒したってのに、何が悲しくて異世界くんだりまでやって来て、また魔物と戦わなきゃならないんだ」

「いや逆だから、異世界に来たから剣と魔法で魔物と戦うんでしょ、普通は~(泣)」

身近に居る頼りになるチートな異世界転移者が戦う気が全然無いだなんて、あたしは泣きたい気持ちになった。


~・~・~・~


「うわー、なんか戦争に行けそう…」

ストレージに移すために目の前に並べられた銃火器の量にあたしは驚いた。

土門さんの車には魔物退治の為に結構な数の武器が積んであった。


M-4カービン:5.56mmNATO弾


イサカ・コンバットショットガン:12番ゲージ散弾


AK-47突撃銃:7.62×39mm弾


バレット対物ライフル:12.7mmNATO弾


M-79グレネードランチャー:40mm擲弾


M-72 LAW:66mmロケットランチャー


デザートイーグル:.357マグナム弾


「土門さん、こんなの異世界に持ち込んでスローライフなんてどの口で言ってるんですか?」

あたしは呆れた、これで魔王倒せそうじゃない。


「護身用だよ、護身用」

「護身用にミサイル持ち歩く人が居ますか!」

あたしは緑色のFRP製の筒を指差して言った。


「それは只のロケットランチャーだよ、ミサイルならこっちのコンテナに…」

「ミサイルまであるんですか!!」


~・~・~・~


パタパタパタ

土門さんが陰陽術で召喚した式神の小鳥が一羽帰って来た。

「北の方に森があるようだ」

「人里じゃないの?」

「森に行けば少なくとも水は確保出来るんじゃないか?」

「うーん、何も無い荒野よりはマシかぁ」


土門と光がいる無人の荒野の北には深い原生林が広がっていた、この世界の住人から『死霊の森』と呼ばれている森なのはまだ二人は知らない。


~・~・~


ここまでがこの物語のプロローグです。


これから強くてニューゲームな最強の退魔師なのに回復術師ヒーラーを職業に選んだ土門さんと弱いのに女神の勇者に選ばれちゃった光ちゃんの冒険またはスローライフが異世界で始まります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る