第10話 回復術師

「俺の職業の回復術師ヒーラーのジョブスキルは治癒魔法だけで、水属性魔法は女神からのギフトスキルだな」

ギフトスキルの水属性魔法はあたしも使える、言語理解もあたしと同じ。

土門さんの残りのギフトスキルの錬金術と鍛治は異世界モノの定番の生産系スキルよね。



「土門さんの戦闘系のスキル、射撃はともかく、格闘術に剣術って?」

「俺は空手、柔道、剣道の有段者だからな、小学校に入学する前から習ってた」

「有段者って事は黒帯かぁ」

どうやら元の世界での経験や技能が固有スキルになってるらしい。


「じゃあ、弓術は?」

「弓道も二段だ、君の高校には弓道部とか無かったか?」

そういや、うちの高校には弓道部もアーチェリー部もあったわ、帰宅部じゃなくて真面目に部活やってたらコスプレスキル以外になんか固有スキルが身に付いたのかも。


「土門さん、槍なんてどこで習うんですか?」

「槍は宝蔵院流だ」

土門さん、答えになってないです。


「じゃあ、このナゾの陰陽術スキルは?」

「スキルじゃない、俺の元の世界での職業だ」

「土門さん、日本でいったい何やってたの?」

「魔物退治」

「えええええええ!」

土門さんの仕事はあたしの予想の斜め上だった、現代日本で魔物退治とは?


「元の世界には吸血鬼も悪魔も妖怪もいたって言ったろ」

うーん、あたしの住んでた世界は意外とファンタジーな世界だったんだなぁ、知らなかった。


「一応、国家公務員なんだけど自衛隊や警察じゃないよ」

「ピストルとかジープとか、土門さんはお巡りさんか自衛隊なのかと思ってた」

「警官も自衛官もこんな特殊な武装はしてないよ」

「元の世界の日本にも魔物とかいたんだ…」

「最新の兵器を使っても魔物には全く効かなかったりしたからな、ライフルより御神刀、ミサイルより破魔矢の方が効果あったりとか」

「それで陰陽道…」

土門さんの家は古くは平安時代から代々続いた陰陽道の大家らしい。

土門さんの称号、『最強の退魔師』と異世界転移直後なのにレベルが71もある理由がわかった。


「魔力なんかほとんど無い元の世界で無理やり陰陽術を使って魔物と戦っていたんだ、この魔力に満ちた異世界なら何倍、いや何十倍にも術が強化されそうだな」

「うわー、チートな即戦力じゃない、これなら魔王討伐でも無双出来るね」

あたしの赤いフレームの眼鏡がキラーンと光った。


「魔王討伐?」

しかし、土門さんは不思議そうに首を傾げている。

「えっ、違うの?」

あたしは思わず土門さんの顔を見つめた。

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