ex01「アメたぬきさんのオープン参加型小説」
アメたぬきさん主催のオープン参加型小説、お誘いを受けましたので参加してみます。詳しくは下記へ。
https://kakuyomu.jp/works/16816452219500906547
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>滋賀県は燃えているか
美しい湖岸に、不釣り合いな爆発音が鳴り響いた。
81mm迫撃砲 L16から放たれた榴弾が敵群体──つまりゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人が使役する戦闘用マシンたちを目掛けて飛翔する。着弾と同時に爆散。周囲に破片が飛散し、敵の群れを一掃する。しかし。
「──クソッ、相手が多すぎる! 次の榴弾を!」
大津駐屯地所属の陸曹長の怒声に、部下である1等陸士が「了!」と叫んだ。L16に榴弾を装填し、すぐさま次弾を発射する。滑腔砲身から再度放たれた迫撃砲用爆散特化榴弾が、着弾と同時に再び爆散した。
敵の多数を巻き込む攻撃だったが、それでも敵たちは湖の中からわらわらと湧いてくる。さながら、水中に漂うボウフラのように。陸曹長がまたも叫んだ。
「クソが! 聞いていた以上だな!」
「陸曹長、状況開始から既に1時間が経過。隊の士気は下がっていませんが、押し込まれています。即時撤退を推奨します」
冷徹に言葉を返したのは、陸曹長の腹心たる1等陸曹。1曹は自衛隊が始まって以来の防衛出動にも関わらず、血が凍るほどの冷静さを見せていた。陸曹長も多少の落ち着きを取り戻し、1曹に問う。
「損害は」
「湖岸北東方面守備隊は壊滅的打撃を受けたとのこと。まもなく敵の増援が大津駐屯地に押し寄せる模様。全て敵が使役する戦闘用マシンです。我々は敵本隊への攻撃に未だ成功していません」
敵──つまりサ・ガ星人は戦闘用マシンを量産して攻め込んで来ている。マシン(と呼ぶにはいささか軟体ではあるが)は破壊されたそばから再生されていく。その材料は水。つまりこの琵琶湖を護る大津駐屯地隷下部隊にとって、まさに天敵とも呼べる相手だった。
思い返せば4月1日。佐賀県が日本から独立するなどという極めて異例の宣誓をしてから一週間。日本は「独立派」と「従属派」に分かれて睨み合いが続いていた。
独立派の影で暗躍するサ・ガ星人の存在が明るみになった瞬間、ヤツらはこの戦闘用マシンで日本の蹂躙を開始したのだ。
それを受け、内閣で自衛隊の防衛出動が即座に決定された。国会の承認も得ない特例措置であったのは、サ・ガ星人の手先が既に国の中枢にも侵入していたからに他ならない。
とにかく。自衛隊の防衛出動が決定された瞬間、全ての自衛官は命を賭してこの戦いに身を投じなければならなくなったのだ。
「──陸曹長、決断を。この状況の責任者は陸曹長です。尉官は全員、湖岸北東方面で決死の戦闘中。連絡もままなりません」
「だが我々が撤退すれば、琵琶湖畔で生活する国民はどうなる。我々が護らねば誰が護る。やはり撤退はできない」
「陸曹長! 私は一時撤退を推奨しているのです! ヤツらは水を糧に増殖する。つまり水源付近で戦闘するのは愚の骨頂です!」
「わかっている! それでも琵琶湖畔の国民の安全は護らねばならん! 死んでも護る。国とは領土ではない、人だ! 我々の使命はそこにあるのだ!」
陸曹長は無線を取ると、大きな声で叫んだ。それは魂の咆哮。何としても国民を護る。その覚悟の表れだ。
「──琵琶湖畔南東方面守備隊、全ての各分隊に通達。あらゆる火器を特化運用せよ。残弾がなくなっても構わん。ヤツらが陸に上がる前に何としてもこれを叩け。5.56mm機関銃MINIMI、並びに12.7mm重機関銃M2の射手は優先射撃。110mm個人携帯対戦車弾、及び01式軽対戦車誘導弾の射手は撃ち漏らした群体を狙え。120mm迫撃砲 RTの無制限砲撃も許可する。各位の戦果に期待する、以上」
演習でもやったことのない、高威力火器の無制限使用。しかし、これでヤツらを屠れるのか。いや、足止めできるのか。固唾を飲んで状況を見守ろうと、陸曹長が双眼鏡を除いた時だった。
「至急至急! 部隊左翼、被害甚大! 何かの爆破物が──」
地を揺らす轟音。ヤツらの新たな武器なのか。部隊左翼に立ち込める土煙。これでは状況の確認すらままならない。と、逆側の最右翼でも爆発音と共に土煙が上がる。
最早、これまでか。国民への避難指示はどうなったか。せめて民間人に被害が出ていなければいい。思いながら陸曹長は自ら前線に出る。射手のいなくなった12.7mm重機関銃M2の銃把を握り、引鉄に指を掛けたその時だった。
「──こちら航空自衛隊岐阜基地所属のU-125A、コールサインは〝アルバトロス1〟。琵琶湖畔守備隊、よく持ち堪えた。貴隊に戦況を変え得る届け物を投下したい」
鳴り響いた無線通信。見上げると空自の救難捜索機U-125Aが日の光を受けて飛んでいた。あれは有事の際に救助物資を投下する機構を備えた機だ。そこから、何かが投下される。
──あれは、人? 逆光を受けた小さなそれは黒いシルエットとなり、真っ逆さまに墜ちてくる。
そして。上空300メートルで、ふわりと浮いた。パラシュートもつけていないのに浮いている。明らかに人の形をしたそれ。陸曹長は双眼鏡でそれを覗き見る。
「あれは……なんだ?」
つい口を突いて出たその疑問は、もっともなものだった。明らかに常軌を逸している。いやもちろん、この状況が既に常識の埒外にあるのは間違いないが、あれはそれを加味しても明らかにおかしい。
ピンクのレオタードを着た、豊満な肉体を持つ女性。それにしか見えない。バカな、と思うのは自然なことだろう。命のやりとりをする最中で、そんな装備で単身乗り込んでくるなんてどう考えてもマトモではない。そしてその女性は、ゆっくりと漂いながら高度を落とし、湖上150メートルになったところで叫んだ。
「お──っぱい、ビィィィィ────ムッ!」
煌めく閃光は、無数の光の矢となり敵を貫いていく。
両腕を広げた、まさにジーザスポジションから放たれた光線は、無慈悲なまでに敵を貫いていった。ちなみにその光線はどう見ても胸の位置から射出されている。まさに形容し難い様であった。
どかん。ぼかぁん。づがががああん。
ホーミング性能を有しているとしか思えぬ攻撃。圧倒的な威力。いやこれは最早、攻撃ではない。全てを無に帰す、
サ・ガ星人の戦闘用マシンは、その一撃を以ってそのほとんどが蒸発した。というか、琵琶湖の水位が見た目でわかるほどに減っている。
まさかあの攻撃は、周囲一帯の水ごと消し飛ばしたのか……?
「──みなさん、お疲れ様です! 私は国立総合技術研究所所属、ゾン・ヴィラン・ド・サ・ガ星人対策特別班、専用身体機能強化スーツTOVICのオペレータ、
舞い降りたのは天使か、はたまた地獄からの使徒か。ゆれると名乗ったその女性は、赤いメガネをくいと上げながら続ける。
「このメガネで捉えた敵は、私のビームの餌食となる! まだ残存兵力がいます、自衛隊の皆さんは水から引き上げて! 次、撃ちます! おっぱいチャ──ジ!」
きゅぃぃぃん。大気中のナニカが、ゆれるの胸部に収束していく。明らかにエネルギーを持ったそれ。
呆気に取られていた陸曹長は、すぐさま全隊に無線通信を飛ばした。
「総員撤退、総員撤退! 水際にいる隊員は即座に回避行動を取れ!」
「次弾装填完了! Gカップの威力を見よ! おっぱい・グラヴィティ・プレ──スッ!」
胸部から射出されたエネルギーは、光の円盤となって収束し、そして目にも留まらぬ速さで湖に落下した。
どっがぁぁぁぁん。ばしゅーん。ぼわわわわ。
水柱と共に、大量の水煙が立ち込める。
戦場に吹いていた強風がそれを晴らす。そこには水位が半分に減った琵琶湖だけがあった。サ・ガ星人のマシンはカケラも見当たらない。全てが、霧散していた。
水飛沫が漂う只中で。ゆれるは妖艶に笑う。
「──さぁて、次の戦場はどこかしら? どこであろうと、私のおっぱいは暴れるわよ!」
ぶるるん。揺れるゆれるの胸部。その振動は、確かに。人類の反撃の狼煙となり得る、力強いものだった。
【終】
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はい、なに書いてんでしょうね私。
ゆうすけさんから「続き書いていいよ」と言われたらもう、やらざるを得ませんよね。笑
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