第21話 憂い、そして鍵②



合宿で使うキャンプ用品をあらかた購入し、残りは今度愛子さんと一緒に買いに来ようということになった。


時間もお昼時にはちょうど良いころ合いになったので施設内のレストランに向かっている。何から何まで彼女に任せてしまっていることに僕は引け目を感じている。


「今度はちゃんとエスコートしてね」


表情に出ていたのだろうか、考えていたことを当てられてしまった。

そして次の約束も取り付けられてしまった。


隣を歩く彼女を見て、こんな子と出かけられるのであれば役得なのかもなと思いつつ、自分のコミュニケーション能力不足を呪った。


「ついたよ」


見えてきたのは少し古風なカフェのようなレストランだった。

店頭に陳列されているサンプルはどうやら卵を使った料理のようだ。


「いらっしゃいませー、何名様でしょうか?」

「二人で」


お店の奥の席に連れられる。


「ここでよかった?」

「ああ、全然」


相変わらず今日の彼女との会話は淡白だ。


彼女はメニュー表に一番大きく張り出されているオムレツを選ぶ。


「僕も同じので」

「かしこまりました」


テーブルの側で注文を待っていた店員はそれを聞き終えると厨房の方に戻っていった。


「弘樹、今日はありがとう」

「いや、こちらこそ」


そう答えると少しの間沈黙が流れる。


「弘樹は気にならないの?」


唐突な質問に僕は首を傾げた。


「その・・・毎日、私の態度が変わることに」

「ああ・・・」


こんなにも早く彼女の方から打ち明けてくるとは思わなかった。


「気にならないと言えば嘘になるけど、詮索をするつもりはないよ」

「そっか、知りたい?」

「話してくれるなら」


彼女がどういう意図で僕に真相を話すのかは分からない。

ただ一つだけ分かるのは、半端な気持ちで聞くことができないということ。


聞いてしまったからには何かしらの答えを僕の中で出さなければならない。


果たして、それだけの覚悟が僕にはあるのであろうか。


彼女と知り合ってから日は浅い。彼女は僕のことを知っていると言っていたが僕は彼女のことは今知りえることが全てだ。


ただ聞かないことには何も始まらない。

好きになり始めているあの空間を、もっと確実なものにするためにも。


馴れ合いの関係だけでは終わらせたくないと思う僕がいる。


確かに僕は変わった。変わったのはあの場所のおかげ。

なら、僕ができることならば何かしてあげたい。


そう思うのは当然の事なのではないかと、新しくこの気持ちを整理した。


「私がこうなってるのに気が付いたのは小学生の時から・・・」



彼女が話そうとした時、テーブルに料理が運ばれてきた


「あ・・・」

「ん・・・」


僕らは呆気にとられた、この若い女性店員が悪いわけではない。

彼女は仕事を全うしているだけである。



ただタイミングが恐ろしいほど悪い。


「料理冷めちゃうから食べようか」

「うん」


僕らは一言も会話することなく目の前に出されたオムレツを食べ始める。
























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