第11話 僕らの活動は今日も遅めにスタートする①

 月が空に浮かび、星々もきらめき始めている。


 僕の歓迎会ということで先生に連れられて、僕たちは駅の近くの焼き肉屋にやってきた。


 駅前の大通りから一本外れたところにあるこの焼き肉屋は、ひっそりとしていて知る人ぞ知る店という雰囲気が外観からも漂っていた。


 森センは僕たちを店の前で待たせて暖簾をくぐると店員に挨拶をし、ひょこっと顔を出すとこちらに手招きをした。


「4名様ご来店ですー!」

 いらっしゃいませー


 狭い店の中で店員たちの声がやまびこのように返ってくる。


 僕たちは少し広めの個室に案内された。

 話を聞くに予約制らしいが森センはコネでいつでも入ることができるようだ。


 先生は席に着くのと同時に食べ放題・飲み放題コースを注文した。

「安心しろお前ら、今日は俺の奢りだ。あ、僕はビールで 」


 最初から飲む気満々の先生に促され三人でメニュー表を見る。


 僕はレモンサワーを頼んだ。

 小林さんも渡辺さんはまだ誕生日は来てないらしく、ウーロン茶を頼んだ。


「ここ、うまいんだよ。いつもこの店に来るんだ」


 飲み物はすぐにテーブルに届き、森センは小林さんに乾杯の音頭を促した。


「それじゃあ斎藤君の入部に、乾杯」

「かんぱーい!」


 先生は一気に飲み干して、すでに店員さんを呼んでいる。


「先生ペースが速いです!」

「いいんだ、私は酔うことはない」


 正面に座った先生を、隣に座る渡辺さんが注意する。

 僕の隣に座った小林さんはそれを見て笑っていた。


 外で人とお酒を飲むという初めての経験に少し戸惑う。


「どう?楽しい?」

 小林さんが僕の顔を覗き込んだ。


「こういうの初めてで」

「そっか、これからもきっとあるよ」


 目の前では森センと渡辺さんの攻防が繰り広げられている。

 目の前の二人に話しかけるのは気が引けたので、僕は小林さんに話を振った。


「小林さんはどうして天文サークルに?」

「うーん、なんでだろ。昔から星が好きだったからかなあ」

「そうなんだ………… でも天文サークルってなんだかんだ人がいるイメージだったよ」


 そういうと彼女は表情を暗くする。


「本当は昔、大学公認の天文サークルはあったの。私も愛子も元々はそこに所属してたんだけど、入ってすぐの頃にサークル内で問題が起きて解散させられて」

「でも私も愛子も星が本当に好きだったから天文サークル続けたくて、いろんな先生に頼み込んで、そしたら森センに出会ったの」

「そうだったんだ………」


 気づけば目の前で騒いでいた二人も静かに彼女の話を聞いていた。


「私はね斎藤君。このサークルを昔みたいに大学公認にして、後輩たちもたくさん入ってくれればいいと思ってるんだ。別に大きくなくてもいい。それでもここが誰かの居場所になればいいと思うんだ」


 どこか遠くを見つめるように目を細めた彼女の横顔を見て

 はじめて教室で彼女を見た時とは違う印象を僕は覚えた。





















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