第231話五期生1
「もうすぐだね」
「ですねー、ドキドキです……」
「いよいよ私が先輩になる日が来たのでありますか……」
「ふふっ、どう有素ちゃん? 自分の成長感じちゃった?」
「うーん……正直実感0であります」
「だよね、僕もそうだった」
ライブオン五期生のデビューが発表されてから約一カ月、とうとうその日がやってきた。
四期生がデビューした時は1人で見ていたから、今回は趣向を変えてましろんを誘ってみることにした。その後更に有素ちゃんからもお誘いがあり、結局今のように3人で見る形になっている。
さて、いよいよ予定時刻まで後数分――
「3人ですから、ここから三ヵ月は波乱の日々の予感がするのであります」
「あー、四期生の時とはデビューの仕方が違いますからね」
「あれらをいっぺんにデビューさせた方がおかしいんだよ」
そう、実は今回の五期生のデビューは四期生とは異なり、合計3人居ることは告知されているが、今日デビューするのは1人だけだ。
そして今日から一カ月後に2人目、同じく期間を空けて3人目と、順番にデビューする形態になっている。
あまりにも濃いキャラが一同に出てきては、リスナーさんを困惑させてしまうだろうという考えからの試みのようだ。
なので、今回のデビューする五期生の配信時間も私たちのデビューと比べて、はるかに長い時間が与えられている。要は運営さんは1人1人を受け入れられやすくしたいのだと思う。
その方が新人ちゃんにとってもありがたいだろうし、私としては大賛成だ。
だが――この試みをやる時点で濃いキャラクターが勢揃いですよと事前申告されているようなものなので、私としては楽しみやら不安やら複雑な心持ちである。
コメント
:wkwk
:もうちょい
:なんか心拍数上がってきた
:本当にライブオンが増えるのか、世界は広いな……
:雑巾マンとか出てきそう
「うひゃー! 待機人数えぐすぎであります! 私の時よりずっとずっと多いのでありますよこれ!」
「ほんとだ……この人数の前でデビューすると考えると、僕でもガチガチに緊張するかも」
「私だったら逃げてますね」
「おいコラライブオンのエース」
「逃げるなエースであります!」
「私は前の時代の逃亡者じゃけぇ!」
「まぁあわちゃんの今は酒に逃げた結果だからね」
「ましろん、そんな辛辣なこと言わないで……」
「そうでありますよ。ストゼロの方から来たのであります」
「有素ちゃんはなにを言ってるの……?」
そんな戯れからの笑いも束の間、配信画面が切り替わり、私たちは息をのむ。
ライブオンは隠すのが好きなのか、ここのまで前情報は待機所に貼られていた新ライバーのシルエットのみ。その黒塗りが――今解かれた!
『ごきげんよう皆の者。私の名前は
「「「おおおお……」」」
三人揃って感嘆の声をあげてしまう。
デビュー配信とは思えない堂々とした挨拶。中音域から語尾が下がる特徴的な喋り方からは、まるで私のような庶民は触れてはいけないような気品を感じさせた。
そして世に解き放たれたその姿――
釣りあがった目力のある鋭い目元に、内に秘めた強い意志を感じさせる黒の瞳。
ふわふわとボリュームがあり、背後に大きく広がるオレンジ色のロングヘアーは、まるで燃え上がる炎のようにも見え、前髪の分け目を美しい蓮の花が彩っている。
その第一印象は――
「かっこいいのであります!」
この有素ちゃんの言葉に尽きる。
「洗練されたデザインですね……髪飾りとしての蓮の花が、鋭すぎる造形に品を足してバランスを取っているのが見事です」
「僕としては服もいいね、まだ上半身しか見えてないから詳しくは分からないけど、多分通ってるって言ってた学院の制服なんじゃないかな、すっごい華やかだ」
私と有素ちゃんもではあるが、特にましろんはイラストレーターとしてもお好みのデザインだったようで、明らかにテンションが上がっている。
コメント
:きちゃああああああ!!
:ごきげんよう!
:かっけぇ!
:お上品だ……でもかっこいい……
:なんか炎の淑女って感じ
読む暇が全くないほど盛大に新ライバーを歓迎しているコメント欄。本当なら私たちも交ざりたいところではあるが、新人を緊張させないためライバーからのコメントは運営さんからNGが出ている。今回は傍観に努めよう。
それにしても一発目からこの風格――これがライブオン五期生か――
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